表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/81

12.24

 自分の世界が欲しかったので、今年のプレゼントはそれにしてもらおうと思い、せっせと靴下を編んだ。

 争い事が何もなくて、互いが互いを思いやれるのはもちろんのこと。すべての人が私を褒めてくれて、賞賛してくれて、私が右といえば右、左といえば左を向いてくれるような。すべてを私が選択できて、しかも正しい選択肢がいつだって示されているような。そんな世界が欲しかった。

 世界一つが丸ごと入る靴下を編むのは大変な作業だ。だが私は来るべき新世界を夢見て、何日も何日も、動かす手を止めずに編みあげ続ける。

 そうしてできあがった靴下は、星のすべてを包み込める大きさだ。

 それからはっと気がついた。靴下ができたのはいいが、今度はそれを吊るしておけるベッドがない。私は慌てて木材を切り出しはじめる。

 そんな私のところへ、ひとりの男性がやってきた。私の行いを見て、かぶりを振っている。

 男は懐から金貨を一枚取り出すと、指で撥ねあげた。まずい、と思った時にはもう遅い。

 金貨は天に昇り、幾つもの流星となって、世界を覆う私の靴下をずたずたに引き裂きはじめた。

 やめてくれ。何でこんなことをするんだ。

 私は怒鳴り、取りすがる。だが流れ落ちる星々はその数を増し、留まることを知らない。

 私の靴下は燃え落ち、灰になる。

 靴下と共に崩れ落ちる私に、男は傍から小さくなった星の欠片を拾い上げ、私に握らせると、溶けるように消え去っていった。


(完)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ