12.24
自分の世界が欲しかったので、今年のプレゼントはそれにしてもらおうと思い、せっせと靴下を編んだ。
争い事が何もなくて、互いが互いを思いやれるのはもちろんのこと。すべての人が私を褒めてくれて、賞賛してくれて、私が右といえば右、左といえば左を向いてくれるような。すべてを私が選択できて、しかも正しい選択肢がいつだって示されているような。そんな世界が欲しかった。
世界一つが丸ごと入る靴下を編むのは大変な作業だ。だが私は来るべき新世界を夢見て、何日も何日も、動かす手を止めずに編みあげ続ける。
そうしてできあがった靴下は、星のすべてを包み込める大きさだ。
それからはっと気がついた。靴下ができたのはいいが、今度はそれを吊るしておけるベッドがない。私は慌てて木材を切り出しはじめる。
そんな私のところへ、ひとりの男性がやってきた。私の行いを見て、かぶりを振っている。
男は懐から金貨を一枚取り出すと、指で撥ねあげた。まずい、と思った時にはもう遅い。
金貨は天に昇り、幾つもの流星となって、世界を覆う私の靴下をずたずたに引き裂きはじめた。
やめてくれ。何でこんなことをするんだ。
私は怒鳴り、取りすがる。だが流れ落ちる星々はその数を増し、留まることを知らない。
私の靴下は燃え落ち、灰になる。
靴下と共に崩れ落ちる私に、男は傍から小さくなった星の欠片を拾い上げ、私に握らせると、溶けるように消え去っていった。
(完)




