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しんねんど
新しい粘土を力いっぱいに捏ねる。
今年はどんな形にしようかと、まとまらない思案は指先に伝わり、土の塊を不恰好なものにする。慌てて形を整え、それからどうしようかと悩み、気付けば手の中にはわけのわからないものができている。
この時期は、大事な時期だ。この時期だけが、新たな自分をつくり直せる。気に入らなかった自分をリセットし、まっさらな自分ではじめられる。
今年こそは一番の自分を。そう思って粘土を捏ねるが、いつだってそれは、思い通りにはならない。思い通りにつくれたとして、それすらあとから気に食わなくなることもある。
普段どおりでいいじゃないかと思う。だけど心のままにつくったものは、いつだって恥ずかしいほど不恰好だ。
だから少しでもよくなるように。少しはましに見えるように。
必死で必死で、指を動かす。
乾いた粘土はそのうちひび割れ、その場にぼろぼろ崩れ始める。
新たな粘土が用意される。指は休むことなく、土を捏ねている。
(完)




