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三丁目の女

「三丁目の浮気くらい、大目に見ろよ」

「開き直るその態度が、許せないのよ」

 二挺拳銃を華麗に操りながら彼女が俺を追ってくる。二丁目なら商売女だからまだ我慢できるが、三丁目ならそうではないから許せない、というのが彼女の理屈らしい。

「ここが地獄の三丁目よ」

 銃弾から身をかわしながら、角の豆腐屋、その隅に貼ってある緑のプレートを見る。八丁目。違う。だがこの通りを進めば、丁番は一つずつ減っていくことになる。追い込まれている。そう思った。

 反転する。彼女は驚きの表情を浮かべたが、それも一瞬。丁度よいとばかりに突撃してくる。

 俺は物陰を利用しながら、距離を詰める。丁々発止のやり取り。だが、俺の方が一枚上手だった。

 躍り出たと見せかけた俺の服に、何発もの銃弾が埋め込まれる。その隙に、パンツ一丁の俺は彼女の脇をすり抜け、逆の丁目へと走り抜けた。

 やれやれ、何とか切り抜けた。あとは彼女の怒りが収まるまで、どこかに隠れているしかない。長丁場になりそうだが、まあ、どうにかなるだろう。

 そう考えていた矢先に、一発の銃声。

 俺の眉間を撃ち抜いたのは、通りの先にいた、浮気相手の女だった。

「両手をついて謝ったって、許してあげない」


(完)

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