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侵略! タコ息子

 中学入学のお祝いに、僕はタコ型の貯金箱を買ってもらった。

 厳密には、タコとはちょっと違う。タコよりも頭がやけに大きくて、足がもっと細長い。多少デフォルメはされているのだろうが、それにしたってとてもじゃないがタコには見えない。入学祝いに貯金箱、しかもこんな不気味なモノをプレゼントするパパとママのセンスを疑う。

 しかもこのタコもどき、ただ気持ちが悪いだけじゃない。喋るのだ。

「おい、金をくれ」

 タコにいきなりそう話しかけられたときは、驚いた。

 タコが言うには、今はこうして貯金箱になっているが、本当は遠い星からやって来た宇宙人なのだそうだ。どうせ嘘をつくならもっと上手い嘘をつけばいいと思うのだが、タコにはこれくらいが限度なのだろう。

 せっかくなので、なぜ貯金箱になっているのか聞いてみた。

「金がいるからだ」

 返答は、何の面白みもないものだった。何でもこの星へ来るのに乗ってきた宇宙船が故障して、その宇宙船を修理するのにお金が必要なのだそうだ。それで貯金箱に化けて、僕たち「愚かな人間ども」からお金を騙し取る計画なのだという。

 そこまで聞いたところでタコの真っ赤な顔が青黒く変色してきたので、僕はタコの喉元から手を離した。

 そもそもなぜ宇宙人が地球までやって来たのか。

「……貴様らの偵察隊が我が星に来たからだ」

 タコはそう吐き捨てた。タコが言うには、僕たち人間がそのうち、彼らの星へ大挙して押し寄せることは間違いないのだそうだ。だからその前に攻め込んで、人間を滅ぼす。それが彼らの構想だった。

 そこまで聞いた僕はようやく、彼らの言ってることが何だか本当であるような気がしてきた。

 僕はまだ小学校を卒業したばかりだ。それでもこの世界に嘘が多いってことには何となく気付いている。中学生になれば、今まで以上にまわりには嘘が増えることだろう。タコの言うことを信じちゃいけない。そう思った。


 入学式が終わった今日、僕の住んでいる地球はまだ平和だ。タコたちが攻め込んできたという話も聞かない。

 やっぱりあれは嘘だったんだ。僕はそう確信していた。

 え? あのタコはどうしたのかって?

 使い終わった貯金箱は金槌で叩き割られる。それがお約束だ。

 僕のは一度も使われなかったけれども。僕の性格は、貯金箱にお金を貯めていくということには向いていなかった。きっとそういうことだ。

 もちろん、このことはパパとママには内緒だ。


(完)


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