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外れた町

 諸般の事情から工場の誘致先が抽選となり、我が町が当たりくじを引き当てたのが始まりだった。

 我が町と、隣接する三つの町は長らく赤字財政に悩んでおり、このたびの工場誘致は現状から脱却するための起死回生の一手であった。当然、どの町も総力を挙げて獲得を目指し、その結果、いくつもの不正が明るみに出た。最終的に抽選となったのは、そういう経緯があってのことだった。

 当初より抽選に反対していた、まだしも資金繰りに余裕のあった隣町は、この結果に納得せず。他の町どもと結託し、我が町を攻撃し始めた。特産品の葱と大根を手に我が町の町人を襲撃し、それらの農産物を尻の穴に突き刺すという蛮行を繰り広げた。人の自尊心と守りたかった何かをズタズタに傷つける、悪魔の所業である。また個人的な見解だが、葱はともかく大根はいくらなんでもあかんやろ、と話を耳にしたときは思ったものだ。特に隣町の大根は、「太くておっきい!」が売り文句なのである。察していただきたい。

 そういうわけで、抽選日から三日と経たずに気分はもう戦争、我が町とその周辺は紛争地帯もかくやという有様だった。

 迷彩服を着込んだ男たちと、旧ナース服、チャイナドレス、アオザイを身に纏った女たちが、反撃を開始した。我が町は化繊の町である。これらはただ在庫が過剰に余っていたもので、他意はない。もちろん我々職員の趣味などが反映されているわけでは、決してなかった。

 戦線は膠着した。我が町には工場の親会社から救援物資が届いたが、何せ敵方は三つの町であり、しかもそれらは、我が町をぐるりと取り囲んでいる。我が町としては、不利な三面作戦を展開せざるを得なかったのである。

 だがついに、我々の精鋭部隊が一番勢力の弱い町を制圧し、巨乳美女だけを選りすぐって捕虜とすることに成功した。その夜は、町を挙げての祝いの宴が開かれた。

 戦力バランスが、大きく崩れた。間もなく争いは終わる、誰もがそう思い、そしてそれは、現実となった。


 翌日。誘致されるはずだった工場の親会社が倒産し、更生法の適応を申請した。


(完)

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