シンクロ
ピートと名付けられたすべての猫が夏への扉を探しているわけではないだろうけれども、僕のピートは確かに向こう側の世界を覗き込むのが好きであるようだった。
例えばある扉を開くと、その先には緑色をした砂で一面を覆われた丘が広がっており、その中心にダイヤル式の四脚テレビが鎮座していたりする。映っているのがルイツだったり、ジョセフソン姉妹だったり、タチバナだったりとそのたび変わってはいるが、テレビ自体はいつだってその景色の中にあるのだった。そしてひとたび砂嵐が来れば、画面もまたそれに同調するのだった。
彼は隙間を潜り抜け、砂嵐が止むのを待って、向こう側の季節が巡り、新しい世界が眼前に開かれるのを座り込んで待つ。時折長い鳴き声を上げる。そしてもう一度隙間を潜り、まだ次の季節が訪れていないのを確認するのだ。
彼だけではない。実を言うと僕も待っている。次の季節が、新しい季節が来ることを、心のどこかで期待している。
僕たちはいつだって、次の季節を探している。夏でなくてもいい。見知らぬ季節を求めて、彷徨っている。
いつの時代でも。どんな場所でも。
きっと、誰だって。
(完)