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にかいめ  こくる?

注意

・バッドエンド気味です

・相変わらず酷い文章です

ごっすんごっすん















―塔瀬市内・バー『ネペンテス』―

10月も末になり、外には雪がちらつく、そんな夜だった。その日も樹と満はカウンターに座っていた。

「そういえば樹よ、『般若』というものを知っているか?」

唐突に満がそんなことを言い出す。

「所長、いくら僕が妖怪に疎くてもそれくらいは知ってますよ」

樹がすこしムッとしたように答える。樹の専門はいわゆる『都市伝説』と呼ばれる類いのものだが、逆に古来からいる妖怪に少々疎い。

「ならば話は早い、つい先日それになりそうな者を見かけたよ」

「それ、本当ですか?」

このご時世に丑の刻参りをする女性がいるとは信じられない、おそらく誰でもそう思うだろう。

「街ですれ違っただけの女性だが…あの全身から漂う呪いの念は間違いないさ」

流石に現場を見たわけではないし、そもそも現場を見て気分のいいものではないしな、と付け加えると、満は自分のグラスの中身を一気に飲み干す。

2人でそんなことを話していると、客が入ってきた。


入ってきたのは如何にも「遊んでます」といった見かけの若い男だ。そういう人間が嫌いな満は横目でそれを見てあからさまに不快そうな顔をする。

男は樹の隣に座ると、男は親しげに話しかけてきた。

「ねぇねぇオニーサンたち、ここに『よろずや』って人たち来てんの知らない?」

馴れ馴れしい態度に腹を立てたのか満の額に血管が浮かんだが、それを無視して男はまくしたてる。

「俺さぁ、その人探してんだよね、何つーの?依頼ってやつ?」

「僕らがそうですが、どんな御用ですか?」

樹が事務的に対応すると、男はまた長々と話し始めた。




要約するとこうだ。

男―ソウヤと名乗った―は最近夜中になると体に激痛が走る。病院で検査を受けてみたが、何の異常も見つからなかったので、今度は占い師に聞いてみると「呪いをうけている」といった旨のことを告げられ、『ヨロヅヤという便利屋がネペンテスというバーにいる』という噂を頼りにここまで来たそうだ。




「カネならあるしさ、何とかしてくれね?」

本人としては相当参っているようだが、緊張感と礼儀のない口調からはそれが感じられない。

「お断r…「わかりました、何とかしましょう」

即断りそうだった満の言葉を遮り、樹が二つ返事で承諾してしまう。満から凄まじい視線を感じるが、無視だ。

「お、マジ?んじゃたのむわ!」

ソウヤは自分の電話番号を書いた紙を置くと、早々に店から出て行く。この間何も注文しなかったせいか、無言でカウンターの向こう側に立つマスターの顔に「二度と来るな」と書いてあるように見える。




「おいィ、どういうつもりだ?」

非常に機嫌の悪そうな満が樹を睨み付ける。

「僕は自分が助けられる人はみんな助けたいんで」

何食わぬ顔で樹がそう答えると、満は小さく舌打ちすると煙草に火をつける。長い付き合いで、樹がこう言い出すと絶対に考えを曲げない事がわかっているだけに、満も何も言えないのだ。

「んで、お前さん何が見えた?」

一瞬で6割ほど灰になった煙草を灰皿に押し付けると、満が唐突に聞く。

「釘、でしょうか?朧気でしたが」

樹に見えていたのはソウヤの腹や胸に突き刺さる巨大な釘の幻影だ。呪いが視覚化したものか何かだろう。

「俺もだ、おそらく丑の刻参りだろうよ…そうとう長期に渡る呪いだろうな、けっこうはっきりと見えたし」

「でしたら尚更放っておけませんよ」

―俺としては放置しておきたいんだがなぁ―そんな言葉を満は飲み込んで、いつもの言葉を言う。

「んじゃ、行くか?明日あたり」

「行きましょう」





―翌日深夜・とある神社の敷地内―

敷地内の寺社林に樹と満、そして電話で呼び出されたソウヤがいた。

「なぁ、こんな時間にこんな場所で何するんだよ」

不満そうなソウヤだが、2人は無視して注連縄(しめなわ)を周辺の木に結び付けている。ここに隠れて様子を見て、最低限呪いの無効化、必要なら呪い返しをする算段だ。


「これで良し…おい依頼人、あんたはその注連縄で作った領域から絶対出るなよ?死にたいなら話は別だがね」

機嫌の悪そうな満がそう言いながら吸殻を携帯灰皿に押し込んでいると、樹が補足説明を入れる。

「それから、声や音も出さないでください、携帯の電源も切ってくださいね」

よくわからない、といった顔でソウヤはそれに従い、二人も領域に入る。



「来たぞ、ここからは一言も話すなよ…」

そう言った後、満が何事かつぶやきだす。隣に居る樹にすら聞き取れないほどの小声で、なおかつ内容もさっぱりわからないものだ。

森の奥から何者かが歩いてくる。右手に木槌、左手には五寸釘の束、頭には火の点いた蝋燭を結びつけた女性だ。

女性は何かをつぶやきながら樹たちの近くにある大木まで歩いてくる。

「…ラれタ、スてらレタ、あんナニあイしテイタのニ、あノヒトハホかノ…」

抑揚のおかしい言葉と共に、女性は淡々と持っていた五寸釘を既に打ち付けてあったわら人形に打ち付けていく。


かつん…かつん…かつん…


木槌が釘を叩く音だけが深夜の森に木霊していく。

「ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ…」

地獄から響くような声と血の涙を流しながら女性は左手に持っていた五寸釘を全て打ち込み終えた。その時だった。






「っざけんなよ!?」

ソウヤだった。恐怖と怒りに顔を歪ませながら一気にまくしたてる。

「オマエ何?何なの?オマエとは遊びだって俺言ったじゃん!?なのに何でいつまでも引きずってオマケに俺のこと呪ってくれちゃってんの?アッタマおかしいんじゃねーの!?」

ソウヤの声に女性が反応し、虚ろな目でソウヤを見つめる。

「ミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタ…」

次第に女性の姿に変化が起きはじめる。長い黒髪がざわざわと動き、犬歯が伸び始め、額に2つの隆起ができはじめる。

「いかん…!」

「あれは…般若ですか!?」

2人の焦った声をよそに、女性は変化を続け、ソウヤはその場にへたり込む。

「生成り《なまなり》だ…彼女は般若になりかけている…手遅れだったか」

「そんな…なりかけなら何とかならないんですか!?」

樹の叫びに対し、満は力なく首を横に振る。一度こうなってしまってはもう戻れないのが鬼なのだ。

生成りとなった女性はじりじりとソウヤを追い詰める。間も無く先ほどまでわら人形が打ち付けられていた木を背に、ソウヤは動けなくなった。

「アソビダナンテ…ウワキナンテ…がぁああぁぁぁぁっ!!!!!」

生成りは血涙を溢れさせ、天に向かって咆哮する。獣のようなその声は深い悲しみと激しい怒りが篭ったものだった。

その怒りは鋭い爪をもった手を動かし、目の前で震えているソウヤを引き裂こうと迫る。






ソウヤが死を覚悟したその時、何者かが割り込んだ。

「待ってください!」

樹がその間に無理やり割り込み、生成りの腕を掴んで止めたのだ。

しかし半ば人外である生成りの膂力は成人男性のそれを遥かに凌駕するものだ。徐々に力負けし、樹の額に脂汗がにじむ。

「貴女がまだこの人のことを少しでも愛しているのなら、待ってください!」

説得しようとする樹だが、人の心を失った生成りは聞く耳をもたない。獣のような唸り声とともにさらに力を込める。樹がかなり押され、いよいよその後ろで放心しているソウヤに達しようとした瞬間、生成りにまた邪魔が入った。



「そぉい」

やる気を感じない満の声とともに飛んできたのは桃の種だった。桃の種は生成りに直撃し、怯ませる。

「なりかけと言っても鬼は鬼か…桃が効いてよかった」

桃というのは古来より聖なる実であり、鬼も嫌うものであった。もしもの時のため、と満が持ってきたものが功を奏したようで、生成りは種の落ちたあたりには近づけないようだ。



「ソウヤさん、彼女に何か言わなきゃいけないんじゃないですか?」

樹がソウヤを助け起こしながら諭すと、ソウヤはその場ではいつくばって叫ぶ。

「ほっ…本当に…すみませんでした!」

それを見ていた生成りはしばらくソウヤを凝視すると、くるりと背を向けて森の奥へと消えていった。















―後日・バー『ネペンテス』―

「これで良かったんでしょうか…」

ひどく沈んだ様子の樹と、いつもどおりの様子の満の間に週刊誌がある。





男子大学生、何者かに惨殺される。頭部は未だに行方不明。





そんな記事が書かれたページが開いている。

「あいつ、結局反省してないどころかまだ何人も女に手ぇ出してたんだな」

呆れた、といった表情の満は週刊誌を丸めて、近くのゴミ箱に放りこむ。

「あの時彼が本気で反省していれば…こんなことにはならなかったのに」



樹が悔やみ、満が呆れているのはソウヤのことだ。生成りに殺されずに済んだまでは良かったのだが、記事を見るにその後も複数の女性と同時に交際し、それが露見した結果交際していた女性に殺害された、らしい。どこまでが事実でどこからが憶測かはわからないが、そういう話だ。



「まぁifの話しをしても仕方ないさ…確かに後味は悪いが」

それよりも、と満は続ける。

「あの生成りについてなんだが、どうやら無事鬼の棲む里に行けたようだよ」

どこからそんな話を聞いてきたのやら、そう聞きたい樹だったが、それは言わないでおくことにした。

「彼女は、幸せになれるんでしょうか?」

「大丈夫だろう、根拠は無いが俺はそう思うよ」

そう答えると、満はジンの入ったグラスを傾ける。

「そうだといいですね」

樹もそれに合わせてオレンジ色のカクテルが入ったグラスを傾ける。生成りとなった女性の幸せと今夜の酒が明日に残らないことを祈りながら。

こんにちは、金武です。

このような駄文にお付き合いいただき、ありがとうございます。


「こくる」といっても(丑の)刻(参りをす)るでこくるです。甘酸っぱいアレとかソレは発生しません。すみません。

ただただ生成りが書きたかった、それだけで打った結果がこれです。



「浮気」について全否定するような内容となっていましたが、これに不快感を持たれる方がいらっしゃいましたら申し訳ございません。作者の個人的思想に基づいた結果です。







今回もヤマなしオチなしの短文で誠に申し訳ありません。

これからも努力していこうと思います…

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