三つ巴の戦い
カエルの姿をした巨大な戦艦が宇宙空間を突き進んでいた。今日もまた何事もなく安全に航海が続けられたと思っていた矢先、レーダーが異常を捉えた。
「スクリーンに投影します」
レーダー担当のカエルが操作すると、艦橋上部のスクリーンにヘビの形をした巨大な戦艦が映し出された。
「スネイク星人の戦艦と思われます」
分析担当のカエルが報告した。艦内ではカエルたちがざわついていた。
「どうしますか? 進路を変更しますか?」
航海担当のカエルが言った。
「いや、だめだ。フロッグ星の人々は私たちの帰還を首を長くして待っている。ここで迂回したところで奴らは追いかけてくるだろう。ならば正々堂々と戦うしかない」
意を決した様子で艦長のカエルが言った。
「ですが敵の姿を見て凍り付いたように動けなくなった者が多数います。ヘビに睨まれたのだから仕方ないですよね」
「それはわかっている。ここは例の手を使うしかなさそうだな」
「といいますと?」
「スラグ星で捕らえた奴らに戦ってもらうしかない」
(スラグ?)
(ナメクジのことを英語でスラグというんだよ。)
「それではナメクジ型小型艇で皆さん、出撃してください」
「私たちが戦えば、家族は解放してもらえるのですね」
「約束しよう」
「ナメクジたちが飛び立って行きましたね。大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だよ。ナメクジはヘビの毒を溶かしてしまうそうだから楽勝だろう。これでスネイク星人を蹴散らして、母星に帰還だ」
「でもなんか様子が変ですね。ナメクジさんたちやられてませんか?」
「そうみたいだな。どうしてだろう? 三すくみだとヘビはナメクジに弱いことになっているのに。ナルトにもあったよね?」
「ちょっとしらべてみたんですけど元々は中国の古典に『螂蛆食蛇、蛇食蛙、蛙食螂蛆、互相食也』と書いてあったそうです。ここで蛇はヘビ、蛙はカエルに間違いないでしょう。で、螂蛆はナメクジかというとどうやらそうとは限らないようです。螂蛆をなんて読むか調べたら、「うじ」か「むかで」らしいです」
「全然、ナメクジと違うやん! どうすんねん!」
「いや、そう言われましても」
「わかったよ。ただちに進路をムカデ星に変更せよ!」
「英語で言わないんですか?」
「いまそれどころじゃない!」
そしてカエル型巨大戦艦はヘビ型巨大戦艦の攻撃を凌ぎながら、一路ムカデ星に向かったのであった。
無限に広がる大宇宙。空気もなく、音もなく、生き物をまるで寄せ付けないその世界は普段は深い静寂に包まれている。だが時として三つ巴の熾烈な戦いが繰り広げられているのであった。




