21話「寄り添ってもらえるありがたさ」
結婚式当日の朝に婚約破棄されてしまって。
私と彼の結婚式は中止に。
参加予定だった人たちに迷惑をかけることになってしまって辛かった。
「マリーさま……」
「ごめん、今、喋りたくない」
「承知いたしました」
「……ほんと、ごめん」
「いえ。良いのです。マリーさまがお辛い心でいらっしゃることは理解しておりますので」
ニーナは気を遣ってそっとしてくれていた。
「ですが、もし話したくなった場合は遠慮なさらず話してくださいね」
「……ありがとう、ニーナ」
結婚式に参加してくれる予定だった同性の友人たちも心配してくれていて。
「マリー、大丈夫? 酷いよね……当日にいきなり婚約破棄するだなんて」
「平気よ」
「それはさすがに嘘だよね」
「……ごめん」
「ううん、謝らなくていいよ。マリーは優しいからさ、いつだってそうやって周りに思いやりを持って接してくれているんだよね。分かってるよ」
悲しみに染まってはいたけれど。
寄り添ってくれる存在がいることは嬉しかった。
「聞いたよぉ! マリー! だいじょぶ!? いや、だいじょぶじゃないよね。男酷すぎるよぉぉぉ! こんないい子を切り捨てるとか、信じられないっ。サイテーすぎるよぉぉぉぉ!」
「心配させてごめん」
「ごめんじゃないよぉ! 悪いのはマリーじゃないもんっ。マリーは被害者だもんっ。生きてて偉いよ! マリー、とーっても偉い! 生きてるだけでとってもすごいよ!」
「泣きそう」
「えええっ!?」
「優しくされると泣きそうになる……」
「えええー!? で、でも、でもでもでも、辛い時は泣いた方がいいんじゃ!? 誰かが言ってたよ。傷を癒すには時には泣くことも大切だ、って!」
独りぼっちだったらきっとこの苦しみに立ち向かえなかった。
でも今は支えてくれる人がいる。
だからこうやって何とか生きることができている。
今回の生では世界を救うのだから、こんなことで折れるわけにはいかない。
「辛いんではないでごわすか?」
「気を遣わせてしまってごめん」
「いや、いいんでごわす。あたいはマリーたんのことが心配なだけ。自主的に心配しているだけでごわす」
「自主的に心配、って」
「そうでごわすよ。マリーたんに非は一切ないのでごわす。マリーたんは偉大、マリーたんは神、そして何より王女でごわするよ。ゆえに、マリーたんは本当の意味では落ち込む必要なしなのでごわす」
「味方でいてくれてありがとう……」
それから少ししてローガンはフィレアンに殺められた。
というのもフィレアンには真の姿があったのだ。
女性の姿に化けていた彼女だが、実際には単なる普通の女性ではなく、悪の魔族の女王だったのだ。
フィレアンはローガンの亡骸を操り、世界を破滅へ向かわせるべく動き出す。
「マリーさま、報告です」
「なに?」
「操られているローガンさまの亡骸が悪の魔族の将軍となっているそうです」
「ええっ……」
「フィレアンでしたか、あの女性には、自身が殺めた者を操り人形とする能力があるようです」
「そう……残酷ね」
「本当に。恐ろしいことです」
「……ニーナは操られないで」
「気を付けますね」
「本当に、本当に……頼むわよ」
「もちろんです」
ニーナは柔らかな笑みを向けてくれた。
……このままでは精霊族は滅亡の時を迎えてしまうかもしれない。
これが女神が言っていたことなのか。
悪の魔族との戦いこそが私の使命なのか。
怖い、けれど。
でも迷っている時間はない。
この日常を護るためには向き合うしかない。




