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3秒ルール 〜悪役令嬢に転生したら、3秒だけ無敵でした〜  作者: 南蛇井


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崩れゆく王子 ― 信仰と孤独

――王都ルミエール。

 黄金の尖塔が立ち並ぶ都は、かつて「光の都」と呼ばれた。

 だが今、その光は冷たく、眩しさの裏に陰を落としていた。

 王太子レオンは、玉座の間に一人立っていた。

 かつて“断罪の広場”で彼が下した裁き――それが、セレナという少女の命を奪った日から、

 彼の中で時が止まっていた。

レオン(内心):「……私は、間違っていない。

あの断罪は、神の御心だった。

セレナの犠牲は、民に光を示すための――試練だったはずだ。」

 それが、彼の唯一の拠り所だった。

 “あれが正しかった”と信じなければ、彼の心は崩れてしまう。

 彼は民の前に立ち、笑顔で語る。

 「神の導きに従い、この国を正しき道へ導く」と。

 だがその背後では――聖教会の老枢機卿たちが、密やかに糸を操っていた。

枢機卿A:「王太子殿下は純粋なお方だ。利用しやすい。」

枢機卿B:「信仰の旗を掲げさせよ。王家の威光を“神”の証に変えるのだ。」

 王政と教会の境界は、もはや形だけのものだった。

 貴族たちは囁く。

 「王太子は聖職者の傀儡だ」と。

 「神の名を借りた操り人形」と。

 それでも、レオンは耳を塞いだ。

 ――“信じる”以外に、彼には何も残されていなかった。

 ◆

 一方、王都大聖堂。

 純白の祭壇の前で、聖女リディアが祈りを捧げていた。

 銀糸の髪が光を受け、まるで神像のように揺れる。

リディア:「……神よ。今日もどうか、我らに導きを……」

 その瞬間、脳裏に響く声。

 “――悪魔は、王の傍に立つ。”

 息が止まる。

 聖なるはずの神託が、まるで呪詛のように耳を刺した。

リディア:「……“悪魔”? どういう意味……?

王太子様の傍に……そんなものが……?」

 戸惑う彼女の背後で、枢機卿ジルベルトが静かに微笑む。

 彼の杖の先では、薄紫の幻光が揺れていた。

ジルベルト:「神の声は時に、警告となって現れるのです、聖女殿。」

リディア:「でも……その“悪魔”とは、一体――」

ジルベルト:「それを知るためにこそ、あなたは神の御心を受けるのです。」

 彼の声は穏やかだった。

 だがその瞳には、“狂信”と“支配欲”が潜んでいた。

 リディアの祈りに合わせて、幻術の紋が足元で広がる。

 ――彼女の信仰は、少しずつ塗り替えられていく。

 純白の心が、幻の神託によって“神の傀儡”へと変貌していく。

 ◆

 夜。

 王城のバルコニーで、レオンはひとり星を見上げていた。

 空は澄んでいるのに、胸の奥だけが重い。

レオン(心の声):「……セレナ。

君なら、どう言うだろう。

私は、まだ……正しいのだろうか……?」

 その問いに答える声は、もうどこにもなかった。

 ただ、遠く《ノクス》の闇で――亡霊の令嬢が微かに笑った。

 光の王子と、闇の亡霊。

 二つの運命は、再び静かに交差し始めていた――。

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