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鑑定の結果、適職の欄に「魔王」がありましたが興味ないので美味しい料理を出す宿屋のオヤジを目指します  作者: 厘


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49 ケルベロス  ケルガ、ベロン、スーグ


 

 「ケルガ、ベロン、スーグ?」

ケルベロスに声をかける。うなり声をあげて威嚇していた。手を伸ばせば、ケルベロスに触れることができる距離。


 ブルブルと小刻みに震えていた。これは強制的な魔法と、何かを無理やり飲まされて動かされているのか。

 「強制的に命令を聞かなければならない魔法は、解除できそうだ」

中等程度の魔法だけど、これは危険だから禁止されているはず。学校でこの手の人や生き物を操る魔法は、レベルによって分類し禁止されているものが多い。禁を破れば重い刑になると知ってるはず。


 僕は手のひらに魔力を集めて解除魔法を詠唱した。

「解除……!」

 ピキ――ン! 鎖が外れたような甲高い音がして、強制魔法が解除された。ミレーヌとサウスさんが取り押さえている男のかけた魔法は解除した。


 あとは飲まされた()()()特定しなければならない。

 「ミレーヌ、サウスさん! その人からケルベロスに無理やり飲ませたものは何か、聞いて!」

 僕は大声で二人に伝えた。「了解です!」と返事が聞こえてきた。しかし酷いことをする。ケルベロスは苦しいのか、グルル……と苦しそうに唸っていた。


 数十秒後、ミレーヌが走ってこちらへ来た。ケルベロスを刺激しないように僕はそっとケルベロスから離れた。ミレーヌは遠回りをしてきて僕に近寄って伝えてくれた。

 「白い花の忘却成分だけ抜いたものと興奮作用のある植物を混ぜたものを飲ませた、と聞き出せました」

 ミレーヌは険しい顔をしていた。白い花……はたくさんあるけれど、忘却成分のある花は以前辺境の村ダンジョンの地下に繁殖していて、駆除した覚えがある。


 「忘却か……。あの植物とあれなら……。あれも……加えれば」

僕は頭に中でケルベロスを元に戻す薬草を考えていた。つい口に出してしまうのは仕方がない。

 「ミレーヌ。これから言う薬草を、採ってきて欲しいのだけどいいかな?」 

「もちろんです!」

 僕は急いでミレーヌに採ってきて欲しい薬草を伝えた。


 こうしている間にもケルベロスは、フラフラな様子で一歩一歩、町に近づいていっていた。

「ケルベロス。だめだよ……」

攻撃魔法で動きをとめるのは避けたい。でも、とめなければ騎士や上級クラスの冒険者がやってきてケルベロスを倒すだろう。時間がない……! 焦る気持ちでミレーヌを待っていた。


 町の自警団の人たちは怯えていた。多分もう騎士の人に連絡したと思う。到着する前にケルベロスを正気にさせなければ!

 「マオ様、ありました! 採ってきましたわ!」

「ありがとう!」

ミレーヌは走り回って採ってきてくれたようで、ハアハアと息を切らしていた。


 「さっそく解毒の薬草を作る!」

ミレーヌから何種類かの薬草を受け取った。まずは洗浄魔法をかけて綺麗にする。

 「洗浄(クリーン)!」

 次に風魔法を使って切り刻む。今回は早急に作らないといけないので、空中へ浮かせて作っていく。

「すごいですわ……!」

 ミレーヌが驚いてるようだけど返事する余裕がない。


 切り刻んで今度はすりつぶしていく。ついでに圧縮魔法もかけて、下へ落ちないようにしておく。魔法で精製水を作り、少量混ぜて練っていく。

 「できた!」

 親指と人差し指で丸を作ったくらいの大きさの、団子状の薬丸(やくがん)だ。


 僕は再びケルベロスの前まで行って、話しかけた。

「ケルガ、ベロン、スーグ!」

 ケルベロス達は僕へ向かって吠えてきた。やはり僕がわからないようだった。悲しい気持ちと、ケルベロスをこんなにした男に怒りを感じた。

 僕の視界にケルベロスの大きな口が見えていた。

 「もとに戻って!」

急いで作って手に持っていた薬丸を、それぞれ三匹のケルベロスの口の中へ投げ入れた!


 「ギャオオオオオオ……ン!」


薬丸(それ)はすぐに口の中で溶けるようにした、()()()の薬草で作ったもの。あまりの苦さに、忘れていたものを思い出すという。

 「ケルベロス! ケルガ、ベロン、スーグ!」

僕が名前を呼ぶと暴れながらこちらを向いた。


 そして大きな爪足を僕へ振り上げた。

「魔王様!」

 ミレーヌが、……を呼んだ。


 体に激痛が走って、それから浮遊感があったので吹き飛ばされたと思う。全身が叩きつけられた。その後は――。


「グァァァア! ぐうう……! ガハッ! ガハッ……」

ケルベロスは下を向いて呼吸を整えているのが見えた。僕は横たわって、薄目で様子が見れた。しばらくケルベロスは、むせていたがようやく落ち着いたみたいだ。横でミレーヌが僕に駆け寄ってきて何かを叫んでいた。


 上を向いたケルベロスと僕は目が合って、やっと正気になったケルベロスを見ることが出来た。

 「良かった……」

 ミレーヌを見ると、なぜか、僕に何かを言って泣いていた。なんで泣いているの……?


 ケルベロスは静かに、僕へ近寄ってきた。しょんぼりしたようで元気がない。

 「ガウ……」

 ぺろりと頬を大きな舌で舐められた。


 良かった。ケルベロスは僕達を思い出したようだ。――でも全身が痛くて動けないし、なんだか眠くなってくる。

 「ケルガ、ベロン、スーグ……。寝床でケルベロス母さんが待っているよ。早く帰ってあげて……?」

 重い腕を頑張ってケルベロスの顔を撫でた。――その後は視界が暗くなって記憶が途切れた。


 その瞬間、魔力の逆流するほどの力を感じた。


 


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