32 宿屋完成! お祝いパーティと幼馴染達
「「ルルン!?」」
僕とベルが同時に叫んだ。お互いに顔を見合わせて、また久しぶりに会ったもう一人の幼馴染の顔を見た。
「マオが念願の宿屋をオープンするってジーンに聞いて、久しぶりに辺境の村に帰って顔を出そうと思ってきたの」
ね? と、ルルンの後ろに合図をした。ジーンがいた。いつの間に連れてきたのだろう。
「幼馴染四人が久しぶりにそろったね! マオのお祝いに来たよ!」
村から王都に行ったルルンは、なんだか都会にいたからなのか洗練されていた。
銀色の胸当て、女性用の鎧一式、長いマントまで身に着けて、まるで高レベルの女性騎士みたいだった。
いや。どう見ても高レベルの剣士だ。
「それにしてもマオ、ずいぶん鍛えたみたいだね! 私のパーティーに入らない? ジーンも私のパーティーに入ってもらう予定だけど」
「え」
軽くルルンに腕を掴まれた。ニコッと笑うルルンは二年前と全く違う。なんというか聖の魔力のオーラを身にまとっていた。
「無理だろう、ルルン! マオは宿屋をオープンしたばっかだし!」
ジーンがルルンの肩に手を置いて言った。ルルンはジーンの顔を見て、「そうだね!」とペロリと舌を出していった。
「それにマオはお総菜屋も、ダンジョン経営もしてるし無理よ」
ベルも近づいてきて、ルルンに言った。
「へえ……? ダンジョン経営ね……」
そのとき僕は、ゾクリと鳥肌が立った。なぜだろう。ルルンから 圧を感じた。
威圧・圧倒的な聖の魔力。
「あ、はい! これ、マオにお祝いの魔除け!」
腰に吊るしてあった布袋から、手のひら大の壁掛け魔除けを渡してきた。
「この宿屋の壁にかけておけば魔物が入って来られないから。聖女様特製の魔除けだよ!」
ルルンは、圧を解いて説明してくれた。
聖女……。ズキン! と頭が痛くなった。
「マオ?」
返事がないからルルンが、心配そうに僕を見た。
「あ……、ごめん! ありがとう! 貴重な聖女様特製の魔除けをお祝いにもらって嬉しい!」
僕は笑顔でお礼を言った。
「いいね、この宿屋。一階はお食事処で二階は宿泊所。ダンジョンで冒険して、疲れた体を美味しい食事でチャージして日帰りで帰れない冒険者は一泊して帰る」
ルルンはこのお食事処を見回して、確信したように言う。
「流行るよ、この宿屋」
ルルンは、なんだか誇らしげに微笑んでいた。
「あり、がとう」
そう言ってもらえると嬉しい。ジーンとベルは、僕とルルンの肩の腕をまわして輪を作った。
「ベルはベジタブルショップを。マオは宿屋を。ジーンは騎士になって私のパーティーに入る予定だ。そして私は……」
円陣を組んでルルンが話を続けた。
「私は勇者となり、あふれ出ている魔物を倒す!」
「!」
ルルンは強い意志を持って宣言した。食事処で楽しんでた皆がルルンの宣言を聞いて、盛大な拍手と声援を贈った。
「勇者!? すごいわ! ルルン、頑張って!」
皆の肩から腕を下ろしてベルはルルンを励ました。キラキラとそのベルの瞳は尊敬の眼差しだった。
「うん。頑張る」
「ふふっ」
ルルンとベルはお互い微笑みあって、おでこ同士をくっつけた。
「俺は王都へ行く。必ず騎士になってルルンを助ける!」
ジーンも旅立つ時が来た。
毎年この辺境の村から旅立つ者を見てきて、いずれ自分たちも! と思っていたけれど……。ルルンが勇者なんて……!
「すごいな、ルルンは。頑張って、ね」
僕は笑ってルルンに言えた。
「わっ!」
ガシッとルルンは、僕に抱きついてきた。さすが勇者、力が強い。
「マオは魔族と付き合いがあるのか? ……やめといたほうがいい」
「えっ!?」
ルルンは抱きついて僕の耳元でささやいた。
僕が呆然としていると、ルルンは素早く離れてニコッと微笑んだ。会って数分でルルンは何を感じ取ったのだろう? 僕は背中に嫌な汗が流れた。
しばらく僕達はルルンの王都の話を聞いたり、皆の話をしていた。
「マオ、料理が足りないってミレーヌさんが伝えてって言ってたよ」
飲み物を取りに行ったベルが僕に教えてくれた。いけない。追加の料理を作らなくちゃ。
「追加の料理を作ってくるから、楽しんでて!」
僕は幼馴染の三人にそう言って、その場から離れた。
「ごめんごめん! 幼馴染の子達と話し込んでた」
キッチンに戻った僕は、村の手伝ってくれてるママさん達やミレーヌに謝った。
「ああ、マオさん。大丈夫でしたけれど、お料理が足りなくなって。せっかくみんなとお話し中なのに、こちらこそ邪魔しちゃって、ごめんなさいね」
「すみません、マオ様」
逆に謝られてしまった。
「いやいや、こちらこそ任せっぱなしにしちゃって! すぐ作りますね!」
手を洗ってキッチンの中へ入った。エプロンも皆とおそろいにした。恥ずかしいけど僕の名前入りのエプロンだった。
から揚げは好評でたくさん作った。エディブルフラワーのサラダも評判で、村に来てくれた騎士さん達が「王都で流行りますよ!」と言ってくれた。
お祝いパーティなので女性が多く、長い串にお肉やウズラの卵の茹でたものチーズなど刺してお皿に乗せて出したら、一口サイズで食べやすいと喜ばれた。
僕は料理を作って『美味しい』と喜んでくれるのが嬉しい。キッチンから見える、楽しそうに会話しながら、僕の作った料理を美味しく食べてもらう姿を見て思った。




