26 辺境の村ダンジョン(洞窟) オープン!
右手の指にはめた指輪を、時々眺めながら僕はダンジョンの受付所にいた。
ダンジョンの安全確認や村の人達との打ち合わせ、辺境の村の安全を守るために来てくれた騎士さんと話し合いなど最終打ち合わせが終わり、ダンジョンが本格的にオープンした。
たくさんの冒険者のなりたての人がやってきた。まずはギルドで冒険者登録をしてからダンジョンへ、という流れ。
同じくくらいの子達や、冒険者になるのをあきらめきれずやってきた人もいた。
「こちらがダンジョンの入場券&時間予約券発売所で――す! 時間制になっていますので、希望の時間の時間予約券をお求め下さ――い!」
いくら初心者用のダンジョンとはいえ、初めてダンジョンに挑戦する冒険者もいる。
なので人数制限をして一人一人の冒険者たちが満足いくように、込み合ったりレベルの上の冒険者に横取りされないように工夫した。
「あの……。空いている時間、ありますか?」
初めてダンジョンに行くような様子の、僕と同じような男の子が入場券&時間予約券を買いに来た。
「あ、はい! ありますよ! どの時間帯にしますか?」
前世の日本の駅の、自動化されてない売り場のような建物を造った。
一時間くらいでダンジョンから出てこれるように魔物の数を調節して、一時間の制限でダンジョンから脱出できるようにした。
空いてる時間が目で確認できるように、水晶の掲示板を見やすい場所に置いた。
「え、じゃあ……。次の回でお願いします!」
男の子は空いている時間の場所を指で押した。一時間単位で分けて上から順に並べ、予約された時間帯は赤く色がつき、買えなくなっている。
「これでお願いします」
男の子は手提げ袋からお金を出して払った。
「ありがとうございます! では、こちらを手首につけてください」
手首につける薄型のリストバンドを渡した。不思議な素材のリストバンドは、布でない金属のような薄いものだった。
「安全にダンジョンに入るための必要なものだから、必ず手首に着けてくださいね。これは国に決められた事です」
「はい」
男の子は素直に返事をした。
「もしも途中でダンジョンをリタイアしたいときに使ってください」
僕は続けていった。
「進む意思が無くなったとき『地上へ』と脱出宣言を、リストバンドに向かって言うと魔法陣が展開して、一瞬で地上へ脱出できます」
「すごいですね!」と男の子は、目をキラキラさせて言った。
「なおケガをして治療を受けたいときは『教会へ』と言ってください。最悪の場合の生命反応が低くなったときは、教会へ強制転移されます」
男の子はさっそく手首にはめていた。
「このダンジョンは初心者用ですが、万が一には備えてますのでご安心してください」
僕は説明を終えてにっこりと微笑んだ。
「ありがとうございます!」
男の子はペコリと頭を下げた。途中で舌を噛みそうになったけれど、何とか説明できた。ダンジョン管理者としてある程度の安全は保障したかったので、このリストバンド良いものだ。
「時間まで、隣の休憩所で休んでくださいね。あ、時間になったら、リストバンドへ呼び出しの光の点滅とお知らせ音がなるから。遅れないでね」
「はい!」
このリストバンドは魔界の物だ。ミレーヌが提供してくれた。助かる。
隣接した休憩所は、軽食が食べられるようになっている。待ち時間の利用や、無事に脱出できた冒険者の休む場所。簡易的ものなので、早くお金を貯めて僕が経営する宿屋を建てたい。
実は受付所の中で、ダンジョンの様子が見られるようになっている。
これはサウスさんが安全のようにつけたもので僕とサウスさん、ミレーヌしか見ることが出来ない。ダンジョンの中を荒らしたり、他の冒険者の邪魔や嫌がらせをしてないか見守っている。
「おら! 兄ちゃん! 早くしろよ!」
ギルドクラスがEの二人が、ニヤニヤしながら僕に話しかけてきた。水晶掲示板にギルドで受け取った指輪が近づくと、自動的にギルドクラスがこちら側へわかるようになっている。
ちょっと冒険に慣れたくらいのレベルの人達だ。服装がだらしなくて、いかにもゴロツキという感じだった。
特に犯罪歴はないけれど、『素行に難あり』の人達だ。もめ事を何回か起こしているらしい。
「早くしろっ!」
だんだんEクラスの二人がイライラしてきて、僕に怒鳴ってきた。
「辺境の村ダンジョン関係者や村人に無礼なことをする者は、罰せられますよ」
冷静に、毅然としてEクラスの人達に言った。
「なんだと!」
一人が僕に殴りかかろうとした。とっさにひょいと避けたけど、それが癇に障ったみたいだった。
「生意気な! やっちまえ……「そこまでだ!」」
休憩していた他の冒険者たちが騒ぎを聞いて顔を出してきた。再び殴りかかろうとしたときに、ギルマスのジュウガさんが来てくれた。水晶掲示板は、なにかもめ事があったときに呼び出しボタンがついている。とっさに押していた。
「ひえっ! ギルマスだ!」
ギルマスのジュウガさんの姿を見た途端、Eクラスの二人は態度を変えた。ジュウガさんの圧はこちらにも感じた。
「お前ら二人、Fクラスに降格だ」
厳しい処分だった。でもダンジョンはオープンしたばかりなので、ここで甘い顔をすれば今後良くない輩が押し寄せることになってしまう。いわば見せしめだった。
舐めた態度をするものに、決して屈しないというスタンスをこのダンジョンにきた冒険者へ見せつけた。
「いいぞ! ギルマスも厳しい判断したけど、受付のお兄さんも毅然とした態度でよかったぞ!」
「だな!」
時間待ちしていた冒険者や、村の人達から褒められた。
「良かったぞ! その調子でやってほしい、マオ」
ジュウガさんからも褒められた。あれでよかったんだと僕は安心した。
「すみませんでした……」
二人は項垂れてギルマスに連れていかれた。後姿を見送っていると、ミレーヌとサウスさんが僕の側に来た。
「マオ様に何かありましたら、ケガだけじゃすまない所でしたけど。よく対処されましたわ。わたくしたちの出番はありませんでした」
ミレーヌとサウスさんはうんうんと頷いた。あの二人、ギルマスに連れて行ってもらってよかったな……。僕は身震いした。
先ほど入場券&時間予約券を購入した男の子が、時間になったので「行ってきます!」と言ってダンジョンに入っていった。
「頑張って!」と僕は男の子を応援した。
「サウスさん、ミレーヌ。ダンジョン最終予約時間が終わったら、僕もダンジョンの中へ行って戦っていいかな?」
僕も強くなると決めた。
「もちろん、いいですわよ」
ミレーヌは追加のリストバンドを箱の中に置きながら言ってくれた。
「強さを調節できますから、言ってください」
サウスさんが僕に飲み物を差し入れてくれた。
ダンジョンの挑戦者が全員終えて帰った後に、自分自身をダンジョンで鍛えることにした。
初日。全時間の予約が埋まり、辺境の村ダンジョンは好評だった。
まだまだ施設が充実してないので、今後冒険者の要望を聞きつつ村の人と一緒にやっていきたいと思う。
僕がサウスさんとミレーヌに今後のことを話していたら、時間待ちの冒険者さんが話しかけてきた。
「あのう……」
「え、あ。はい、なんでしょう?」
話しかけてきたのは、強そうな戦士の装備をした人だった。
「時間になっても前の人が、戻ってきてないみたいなんですが……」
「えっ!?」
僕達は慌てて安全にための監視カメラを見た。なかなか探せなかったけど、地下三階奥に人影を見つけた。
「報告ありがとう御座います! これから確認してきますので、次、入ってください」
僕はミレーヌに受付をまかせて、ダンジョンに急いだ。
「ケガとかしてないといいけど……」
とても心配だ。
僕はレイピアを構えて、襲ってきた魔物達を倒して進んだ。一度ダンジョンをクリアしているので迷わず進めた。
サウスさんは虫を払うように倒していた。
問題なく地下三階へたどり着いたとき、壁の隙間から最弱スライムが顔を見せてきた。
「プルプル!」
初めてダンジョンに入った時から久しぶりに会えた。
ぴょん! とプルプルは僕の肩に飛び乗ってきた。可愛い……。
プルプルプルプル……。
急に最弱スライムのプルプルが激しく震え出した。
「えっ? なに?」
「……マオ様、お気をつけてください」
何か嫌な予感がした。




