15 ダンジョン(洞窟)② 捜索! 地下一階
「ゴミムシダマシっていう昆虫なの!?」
僕達の前に現れた、大きな昆虫の名前を素早く言ったジーンに驚いた。
「こんなに大きくはないけどな! くっ!」
ゴミムシダマシという大きな昆虫は、ジーンに体当たりしてきた。剣で受け止めたジーンはすごい。
「穀物や飼料とかに混入している害虫だよ! こんなにバカでかいのは見たことない!」
僕は穀物に混入している虫を思い出した。あれか!
「うわ!」
一回り小さいのが僕の方に飛び跳ねてきたので、ブスリ! とレイピアで真っ二つにした。
「えっ? そのレイピア、お前のおやじさんの特製か?」
ジーンは僕のレイピアを怪訝そうに見て言った。
「そうだけど?」
なんだろう? ジーンはあきれたようにフッと笑った。
「お前のおやじさん、やっぱ良い腕している。そのレイピア、切れ味が鋭い」
「特製、なので」
僕は父の武器防具職人の腕が良いと言われて、鼻が高かった。
「一階の大キノコの群れはなぎ倒していけば楽に進めたけど、地下一階は慎重に行かないとやられる。気をつけろ、マオ」
ジーンは警戒しながら前に進んだ。
「うわっ!」
ガサガサ! 僕達が岩のあいだを進んで行くと、横から大ゴミムシダマシが襲ってきた。
「大丈夫か!? マオ!」
ザッ! ブシュッ! 油断した僕の腕をぐいと引っ張り、ジーンは大ゴミムシダマシを大剣で刺して仕留めた。昆虫はひっくり返ってピクピクしながら動かなくなった。
「うん。ありがとう」
ジーンは強いな。助かった。僕は冷や汗をかいた。
地下二階の真ん中あたりに進むと、岩が大きくなってきて見通しが悪くなってきた。急に襲ってくる場合があるから注意ポイントだな。
とりあえず、地下一階をざっと見ておきたい。
天井にぶら下がっているコウモリは寝ているようで襲っては来ない。昼間だからかな? そういえばここの明かりは、どうなっているのだろう?
「ねえ、ジーン。この洞窟の明かりって、どうなってると思う?」
「あ、そういえば」
一応、ランプや火を起こす道具を持ってきたけど使わなくても大丈夫な感じだ。
「あれ?」
ふと、僕の横にあった岩肌を見てみると僕の影が映っていて、そこの場所が光っているのが見えた。
影のせいで暗くなっているので気が付いた。
「どうした?」
僕がじっと見ていると、前にいたジーンが近づいてきた。
「この苔、光っている」
手をかざすと指の間から光が漏れて見えた。ヒカリゴケ……?
「え、でもヒカリゴケっていう苔はあるけど、反射で光っているだけのものだったはず」
僕は首をかしげていると、ジーンは壁に向かって歩いていった。そして指で苔を摘まむと「確かに光っている」と言った。
「新種かな?」
そんなに詳しくないけれど、今まで見た苔や本で調べたものには苔そのもの自身が発光するのはなかった。
「そうかもな。どちらにしろ便利だ」
ジーンはニヤッと笑って言った。
「そうだね」
地下一階、奥まで行くと行き止まりだった。下に降りる階段は見当たらなかった。
「おかしいな。下に降りる所がないぞ」
地下一階の奥の行き止まりは、半円形のゴツゴツした岩肌が見上げるほど高く天井まで続いていた。
足元は今までと違い、枯れて朽ちた木々が多々転がっていていた。
ジーンは、行き止まりの岩壁を叩いたり触ったりして調べていた。
僕は足元の地面の柔らかさが気になって、足先でグニグニと踏みしめていた。
ゆらり……。
「あれ? 地面が揺れた……?」
足先で地面を踏むのをやめた。気のせいかな?
どうやら朽ちた木々が、湿ったおが屑状の層になっているみたいだ。進んできた地下一階は岩が多かったけれど、この階の奥は違っていた。
もともとこの階は、木々が生い茂っていて徐々に枯れていったのだろうか。興味深いな。
僕はまた、柔らかい地面を何回か踏んでみた。程よい弾力があって、沈むことはなさそうだ。
ゆらゆら……! ガクンッ!
「……ジーン! 下から、何かくる!」
足裏から地中でなにか動く振動を感じた。足先から五メートル先の所から、モコモコと地面が盛り上がった!
ボコッッツ! 大きな魔物が、地面から出てきた!
「あれは、ミルワーム!? 大きい!!」
普通の数万倍? 大きいミルワームがボコボコと数匹、地面の下から這い出てきた!
「マオ! 囲まれているぞ!」
岩肌を調べていたジーンが、急いで僕の方へ走ってきているのが見えた。レイピアを構えて後ずさりする。襲ってくるか?
ギィユ――ィィィ……!
こんな鳴き声なんてしないっ! と思いながら、襲い掛かってきた大きなミルワームに向かってレイピアを振り落した。
ギュイ――! 先の部分が斜め真っ二つに切れて、ドサッと頭の地面に落ちた。遅れてあとから下の部分も地面に倒れた。立ち上がった高さ(長さ)三メートル、太さは十五センチぐらいだろうか?
「いいぞ! マオ」
ズシャッ……! ジーンが大ミルワームの後ろ側から戦ってくれた。
ここはミルワームの住処、だった。
次から次へと、地面から這い出てきて襲い掛かってきた。僕とジーンはただひたすら剣を振っていた。
そんなに長い時間ではなかったはず。だけど数十匹のミルワームの残骸が転がっていた。
「はぁはぁ……。あとの大ミルワームは地面の下へ逃げて行ったみたいだな……」
ジーンは息を切らして僕に言った。
「う、うん。そうみたいだね……」
僕も息を切らしてジーンに返事をした。
ミルワームに応戦しながら階の真ん中あたりまで後退していき、戦った。それが良かったのか大ミルワーム達を倒せた。
「あっ! あそこ!」
僕は岩陰にぽっかりと開いた、大きな穴を指さした。ジーンは汗を布で拭きながら僕の指をさした方向を向いた。
「下の階に降りられるんじゃない?」
呼吸をふう……と整えながら僕は見つけた穴に近づいていった。




