表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鑑定の結果、適職の欄に「魔王」がありましたが興味ないので美味しい料理を出す宿屋のオヤジを目指します  作者: 厘


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/52

11 料理スキル② 【回復食】と行商人ハリマさん


 

 「ああ。お総菜屋さん、好評らしいね。美味しいし」

神父さんは女神様の像がある前まで行き、振り返って僕に言った。


 村人がお祈りするときに使う長椅子とテーブルが、女神様の像の前から順に出入り口まで左右に並んでいる。今は誰もお祈りしている人はいなかった。僕はその左右に並んだ、長椅子とテーブルの間の通路を進んだ。

 女神様の像の、後ろのステンドグラスから差し込む光が綺麗だった。


 「これね、良い魔力が混ざっているね」

神父さんは一番前のテーブルの上に置いてあった、僕のお総菜屋さんのから揚げをひょいと摘まんでモグモグと食べて言った。

 「あっ」

「差し入れでもらったんだ。すぐにわかったよ、マオ」

 ぺろりと油のついた指を舐めた。


 僕がゴクリと唾を飲み込んだ。また何か言われるのかなと、ビビっていた。

沈黙がこわい。

 「ああ、この魔力は悪いものじゃない。人間にとって元気の出る、【回復魔法効果】がある料理だね」

 あの子の言ったとおりだ。人に害のないものと分かって僕は安心した。


 「人に害がないと分かって、良かったです……」

僕は胸をなでおろした。害があれば、お総菜屋をやめなくてはならないところだった。

 「それで? 他にも心配なこともあるのでは?」

神父さんはひょいひょいと、から揚げを口の中に入れてあっという間に全部食べた。

 そうだ。あのことは村の安全にもつながることだ。言わなければ。


 「あの、実は。僕の料理に惹かれて、これから()魔族が来ちゃうかもしれなくて……」

「……それは、もうマオの料理に惹かれて来た魔族がいるっていうこと?」

神父さんから殺気を感じる。怖い!

 「いや、でも! 悪さはしてこなかったし、コッソリと人のいない時に来たので!」

 神父さんを見ると、顎を手でなでて考え込んでいた。

「ふうん。俺の結界を難なく通り、感知できなかったほどの魔族が、君の所へ来たってわけか」

 結界!? 知らぬ間に結界なんてあったのか!


 「まあ。一瞬でも強い魔力を使ったら、俺が探知できるから。それに弱い魔族は入れないはずだ」

 神父さんは僕を凝視して言った。

「じゃあ、大丈夫なんですね?」

僕は村に魔族が入ってこないと分かって、良かったと思った。

 

 「お前以外は、な」

 「ひ……!」

殺気に怯えて後ろに下がった。神父さんから()を感じた。

 「……なんてな?」

途端に神父さんは圧を消して、おどけた仕草をした。


 「怖がらせたな。今のところ、例の魔王(やつ)は出てきてないみたいだな」

コツコツと靴音を鳴らして、神父さんは教会の中を歩いて言った。

「結界は村を覆うほど囲っている。そうそう入って来られないから、安心しろ」

 僕の頭をポンと軽くたたいた。

 「ありがとう御座います」

「またなんかあったら俺に相談してくれ」

神父さんは気遣って僕に言ってくれた。


 【回復魔法効果】がある料理なんて聞いたことがない。

だいたい回復魔法の類は、聖職者か聖魔法が使える人に限られているはずだと思ってた。平民が回復魔法を使えてもせいぜい切り傷を治す程度だ。それかポーションのような色々調合した、瓶に入っている液体の物。

「とりあえず、みんなには黙っておこう」

めんどうなことになりそうだし。


 とにかく総菜屋さんは害にならないなら、このまま続けていく。あとは飽きられないように工夫をしていきたい。


 ――前世を思い出したので、そろそろ日本食か恋しくなってきたんだよな。

ラノベとかで異世界転生の物語だと、主人公が異世界に来て日本食を食べたくなって米を栽培したり、醬油を造ったりしてたけど……。この世界では作れそうかな?

うまく作る自信はないけど。



 

 「やあ! マオ君!」

「ん?」

 教会から出て、考え事をしながら村の道を歩いていたら声をかけられた。顔をあげて見てみると、月に何回か村に買い付けた食品や生活用品を売りに来る、行商人のお兄さんだった。

 「ハリマさん!」

 

 僕は珍しい物を仕入れて売りに来てくれるハリマさんを、心待ちにしていた。

「今日は何か、おすすめはありますか?」 

 「うん。新鮮なお魚が手に入ったし、綺麗な色の布も持ってきたよ」

ハリマさんは、村の真ん中にある広場でいつも品物を広げて売っている。そこにはベンチと長テーブルがあって都合良く、村のみんなが集まりやすかった。


 「おれは隣の港町のサザンから来て、船で近隣諸国の美味しい物と面白いものを買い付けているんだ。魚は日持ちしないから、このグリーンリル王国内で売りさばいてる」

 港町サザンか。

 「いつか行ってみたいな」

「けっこう大きな街で、賑わっている。一度、行ってみるといい」


 ハリマさんにサザンの街を教えてもらった。

「あ、そうだ。ハリマさん、()()って知ってますか?」

 手広く商売しているハリマさんなら、もしかして知っているかもと聞いてみた。


 「ああ知っているよ。遠い東洋から伝わってきた、お米だろ?」

さすがハリマさん! もしかして買えるかな?

 「その! お米って買えたりしますか!?」

僕は前のめりになって聞いたものだから、ハリマさんはびっくりしていた。お米が買えて食べられたらと思ったから、つい。


 「あ、ああ。前もって言ってくれれば、仕入れてあげるよ」

「ぜひ! お願いします!」

 僕はハリマさんの両手を握って握手をした。あっけにとられて僕をみつめるハリマさんに、お総菜屋さんを始めたことを話してみた。

 「なるほど……お総菜屋さんか。いいアイデアだね」

ニコニコと笑って言ってくれた。

 「僕がお米を食べてみたいんですけどね」

 ニコニコして僕はハリマさんに言った。


 なんとお醤油や味噌、その他の日本の調味料を扱っている所があって手に入るそうだ。

 「まだそんなに知られてないから高くないよ。今のうちに仕入れて、そのうちに自分で作るのもいいかもしれない」

 作り方、わかる? と言ってハリマさんは味噌、醤油の作り方まで教えてくれた。

「ありがとう御座います! このお礼はいつか……!」

 紙にメモをして僕に渡してくれた。なんていい人だろう!


 「お礼はいいよ。君はなにか、おれも儲けさせてくれるような予感がする。だからいっぱい注文してくれ」

 ハリマさんはそう言って僕の背中をポンポンと叩いた。

 「はい! たくさん注文しますね!」

 良かった。大好きなお米が食べられそうだ。それに醤油も味噌も。


 作り方も聞いたし、大豆を仕入れたら作ってみよう。楽しみだ!



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ