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村の司祭




”鉄仮面”モロー、”狂犬”アングル、”大砲”ベンデマン。

三人は、糞虫スカラベの狩人である。


ヘムヨックにこの三人が立ち寄ったのは、気紛れだった。


「ふあっ…あっ……くう…あんっ。

 はあ……あっ……んっ、あうっ。」


「ごめんっ。

 気持ち良過ぎて…止められないよっ。」


泊った安宿の隣部屋で若い男女の声が漏れてくる。

堪らずモローは、イラついた。


「うるせえ客だったぜ。

 一晩中、騒ぎやがって…。」


「ガキじゃあるめえし。

 それぐらいでカッカするな。」


アングルが呆れたように答える。

彼は今、仕掛け武器のノコギリ刃を磨いているところだ。


ベンデマンが口を開く。


「まあ、良いじゃねえかアングル。

 俺も獣に逃げられてばかりでイライラしてたところなんだ。

 三人で景気よく、殺しに出かけようぜ。」


「おう、やるか!」


「馬鹿、隣の客を殺すんじゃねえよ。」


「そんなこと分かってるって。」


そう言ってモローは、壁を蹴った。


「で、どっか獣が出そうなところはねえか。」


モローは、二人の顔を見る。

アングルが目を細めて答えた。


「俺の爺様が異端審問官でな。

 …ヘムヨックとかいう閉鎖的な邪教の山村がある。

 獣はいないかも知れねえが住民は、殺し放題よ。」


そろって三人は、残忍な笑みを浮かべた。


「いいねえ。

 山奥まで行って獣がいませんじゃあ、つまらねえや。

 いなけりゃ異端どもをブチ殺そう!」


そう言ってモローは、目を輝かせる。


糞虫の巣とは、狩人の騎士団の支部の一つである。

だが大半が犯罪者であり、罪の償いとして獣狩りを科せられた。


そんな連中のことである。

真摯に獣を追うというより殺人を黙認される立場に嬉々としていたものだ。




その三人は、どうなったか?


「…仕掛け武器か…。」


アジャジョは、アングルが持っていた仕掛け武器の破片を拾った。

探せば三人の死体もどこかに埋まっているだろう。


ヘムヨック村の外れ。

アジャジョは、死体を探し始めた。


目的は、死体の損傷から獣の特徴を判断することだ。

仮に焼却していても骨から痕跡を求めることができる。


「……そこで何をしておられる?」


アジャジョは、近づいた男を問答無用で発砲する。

撃たれたのは、老人だ。


男の装束は、おそらくこの村の司祭だろう。

村人が話していた例の村の指導者だ。


ウルス教の聖職者の装いではない。

なるほど分かり易い。


撃たれた司祭が変身する。


「■■■■■■■■■■■■■■■■■■ォォォ!!!」


人間に擬態できる獣か。

アジャジョは、素早く身を翻した。


コナの狩人は、騎士団オーダーと異なる術を伝える。

それは、彼らの王国に秘伝され、独自のスタイルを作った。


まず狩人の踏み出し(ステップ)をコナの狩人は使わない。

なんと獣を相手に盾を使う。


アジャジョも獣の攻撃を盾を使って防いだ。

この獣の怪力に対抗できるのがコナの戦化粧ウォー・ペイントである。


それは、ただの迷信ではなく太古の秘儀である。

これを宿礼院ホスピタルは、超古代文明の残滓だと考えていた。


「■■■■■■■……。」


獣も驚いていた。

アジャジョの生傷が回復していく。


この傷の治癒もコナの戦化粧の効果である。


大航海時代にコナの戦士が銃を持つ征服者コンキスタドールを打ち負かしたのも戦化粧の力だ。

彼らは、西洋の進出に抗い、王国の自立を堅守した。


「ふん!」


アジャジョは、獣を狩ると顔についた血を拭う。


なんとも造作もない。

奇妙な邪教の村という情報に騙された。

なんてことはない普通の獣だった。


そう、アジャジョが勝ち誇っている時だった。

黒い影が彼の背後から現れたのだ。




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