夜明け
「………残念だな。」
黒髪の青年が独り言ちた。
”星燕”の狩人、ロビンだ。
彼の前には、息絶えた髪長の獣が倒れている。
「ロビン!!」
アッシュが嬉しそうにロビンに駆け寄った。
大型犬が飼い主に飛びかかるようにロビンにジャンプする。
「う、ああ!
ビックリするじゃないか、アッシュ。」
ロビンは、そう言ってアッシュを受け止めて地面に立たせる。
「…可哀そうだったね、ルイス…。」
アッシュは、髪長の獣を見ながらそう言った。
ロビンは、眉間に力を入れて目を細くする。
「…俺たち、いつまでこんなこと続けるのかな…。」
アッシュがロビンに訊ねる。
ロビンは、アッシュの肩を抱き寄せた。
しばらく考えてロビンは、答える。
「獣狩りに終わりはないんだ。
………仕方ないんだよ。」
「少し休みたいな。」
「ああ…。」
「おーい。
夜も明けたし、もう帰らないか?」
そう声をかけて来たのは、銀髪に紫色の目をした少年だ。
だいたい12~13歳ぐらいだろうか。
ピカピカの絹帽に半ズボンから真っ白な脚が見えている。
ついついロビンは、彼の生足に目が行った。
「済まないがジル、騎士団本部に休みを貰ってくれないか。
ちょっと当分、仕事を離れたいんだが…。」
「良いぜ!
今回の狩りは、アッシュに手伝ってもらったからな。
どんな頼みでも言ってくれよ!」
ジルは、そう言いながら両手を腰についた。
「ルーフレッドは、何かないか!?」
ジルは、帰ろうとするルーフレッドにも声をかける。
ルーフレッドは、遠くから振り返って答えた。
「せっかく作った借りだからね。
時間をかけて考えさせてもらうよ。」
「利子は着かねえぞ!」
ジルは、笑いながらそう答える。
ルーフレッドも笑いながら歩いて行った。
「じゃあ、長期休暇を楽しみに待ってろよ!
出来る限り仕事が来ないように掛け合うから!!」
とジルは、それだけ言って姿を消す。
騎士団本部に掛け合うか。
何万人もいる狩人が、その存在を知りながら接触方法を知らない騎士団本部。
それに伝手があるというジルは、いったい何者なのか。
指令は、騎士団本部から来る。
だが逆に狩人が連絡する方法はない。
いつも伝令が手紙を持ってくるだけだ。
でも、どうでもいいことか。
騎士団の四大支部には、それぞれの思惑がある。
獣狩りと関係ない何か陰謀があることは、ロビンも知っている。
そこに関わりない末端の狩人は、使い捨ての駒だ。
「ねえ、ロビン。」
ヘムヨックから帰る途中でアッシュがロビンに訊いた。
「うん?」
「何があっても死なないで。
そのためなら俺なんか死んでも良いんだから。」
アッシュがそう言うとロビンは、オレンジ色の後頭部を見ながら答える。
「俺が死ぬところなんかお前には見せない。
だからお前は、俺の前で死ね。」
「ふふっ。」




