AOI 第59話
ちえちゃんと遊ぶ約束をして、ほっとしている私がいる。約束をする事が、こんなに気が気ではない事があっただろうか。遊ぶ日にちをきちんと決めて、なんなら時間まできちんと。なんでかななんでかなと、考えていたら、中学1年生の部活を決めた時と似ていると思った。朝は一緒に学校へ通っているけれど、2人で同じ部活に入ろうとは話さなかった。ちえちゃんとは入りたい部活が部活動の話をはじめた時から違っていたからだ。それで、えーっとはならず、2人とも先輩優しいといいねとか部活楽しいといいなとかの話にすぐになったからだ。塾の話も、同じ経過をたどると思っていたけれど、2人で見る景色に少し雲がかかってきている感じがする。なんだろう。
会えば雲は消えていくのだろうか。そう信じて今は、寝よう。とにかく寝て、また、朝起きて、宿題やろう。
朝起きても、もやもやは続いていた。朝ごはんの時に、母に、
「4月からの塾の事なんだけれど。」
と、話はじめた。今、忙しい時に話さなくてもいい話なのに、なぜか、話はじめてしまった。母は、ご飯を食べながら、
「うんうん。」
と、私を見てくれた。私は、続けて、
「お友達ができて、一緒に続けようと、誘われた。」
と、いっきに話をした。母は、食べながら、私を見ながら、
「うんうん。」
と、声を出していた。そして、お味噌汁を一口飲んで、
「誘ってもらったの?よかったね。」
と、いつもの、母のよかったね。いつもいつも、よかったねと言う。お友達は、良いお母さんだね、うらやましいと言うが、そう思う時もあるけれど、嫌な時もある。フンと鼻息が出そうになる。続けて母は、
「昨日、塾の話を聞いた時、頑張ってるって話していたし、合う塾で良かったと思っていたよ。」
と、話した。昨日、話したなとうっすら思い出した。あんまり、思い入れの無い話だったのか。
「お母さんは、賛成だよ。」
と、言ってくれた。その言葉を聞いて、ふっと甘い卵焼きの味が口にひろがった。まだ、私、通いたいとも話していないし、4月からの最後の部活もあるし、本当は、どうしていいかわからない。忙しい朝に、私は、何を話しているんだろう。
「も、もう少し、考えてみようかな。」
と、やっと言えた。母は、
「わかった。」
と、だけ話て、コーヒーを飲んだ。食器洗いと洗濯物干しとお風呂洗いを私と弟に言って、仕事に行った。春休み満喫中の弟は、お風呂洗いは絶対してくれるので、後は私が全部やる?弟をチラッと見ると、まだ、ぼけぼけの顔をしていて、やっぱり、ジャンケン、あっでも洗濯物、干してもらうの恥ずかしいし、思春期だから、私がやるか。