vs憎悪
「はぁ。 ぜぇはぁ疲れた」
全身で息を吐きながら巴は倒れそうになるが根性で踏ん張った。
「……すごい。 倒してしまうとは」
そんな巴が凄かったのかクロナは目をぱちぱちと瞬きをした。
「さぁあの黒髪女を探しに行こうぜ!」
そう言って巴は研究所を歩いて行った。
「……ほほう脱出したものがいるらしい。 奴隷さっさと廃棄品を処分してこい」
「……」
「なんだね? その目は? 君達異国の者は異能至上主義のここではただの異端だ。 殺されたいのか?」
「……わかりました」
そう言ってアウラは研究の部屋から出て行った。
「……クソジジイ」
アウラは誰もいない事を確認して毒を吐いた。
「何が異端だ。 私はただ生きているだけだなのに何故そんな目を向けてくる?」
ぼろぼろの髪を引きちぎりながらアウラはイライラを爆発させて、無意識に右目から涙を流す。
「くそっ。 会いたいよお父さん、ドミエラ姉様。 ミエル」
そう言いながらアウラは三百号を殺すべく廊下を歩いた。
「……なぁせっかくだからお話しながら歩こうぜ!」
「……呑気なんですか?」
巴の提案にクロナが冷たい視線を向けるが巴は無視してペラペラと軽口を喋る。
「あっそうだ! 俺をお兄ちゃんって言ってくれよ! お前背がちっちゃし! 俺の方が背が大きいし!」
「はっ? 何言っているんですか? あなたの頭に脳みそちゃんと詰まっているんですか?」
「……なんかすまんせん」
するとその時だ。
カツカツと音が響く。
「おっ! おい黒髪女?」
「危ない!」
するとクロナに吹き飛ばされて巴は地面を転がった。
「クロナ!」
「目の前の敵に集中して下さい!」
「おう!」
巴はクロナの助言を聞き入れて黒髪の少女と向き合う。
「よう! 久しぶりだな! 元気だったか!」
「……お前は抹殺対象だ」
「おいおいお前! 俺との仲じゃねぇか!」
「……うるさい!」
すると少女は刀を抜いて巴の首を狙った。
だが巴はそれをブリッジをして回避その後足で少女の手を蹴って刀を押してやる。
「これで終わりだ!」
「ユターブ」
「はっ?」
少女が魔法を唱えると巴の全身が凍った。
「……三百号!」
「クロナお前はこんな事をしないアンドロイドだろ? 何故この男の肩を持つ? お前は敵なのか?」
「……アウラ! あなたはこのままでいいのですか!? ここを出て家族への復讐はどうするのですか!?」
「うるさい黙れ! 鉄屑風情が! 私の何が分かる!?」
そう言ってアウラが近くの壁を殴ると大きな傷が入った。
「これで三百号は死んだこれでいいだろ?」
どこまでも怒りと憎悪の染まった瞳で
アウラはそのままこの研究所の主人への部屋へ戻って行った。
「……三百号」
そんな光景をクロナは嘆いて見ている事しか出来なかった。