物語の序章の敵
「おいおい。 いきなりだな?」
巴はクロナの提案に驚きながらクロナを見つめる。
「んっ? あれ?」
だがよく見てみるとクロナの体がぼろぼろだと気がついた。
「おいお前いじめられているのか?」
「っ!?」
クロナが驚いて後ずさる。
その顔が恐怖に歪み怯えが見える。
「……な、何を言っているのですか!? わ、私は!」
声を荒げる。
クロナにとっては触れてほしくない事だったようである。
すると声が聞こえる。
「おいおいダメだろ? ガラクタちゃんとそいつを誘い出してくれなきゃ」
「ひっ!」
声がするとクロナの方が跳ねて全身が震え始めた。
「よぅ三百号今朝ぶりだなぁ?」
「……なんだよ?」
「実はさぁ脱出計画なんてのは嘘でヨォ。 リンチタイムってやつさ」
そう言いながら四十一号は歪んだ笑みを浮かべる。
「へへ」
「調子に乗ってんじゃねーぞ? 無能が」
するとゾロゾロと三百人ぐらいの男達が巴を囲んだ。
「……で? 何がしたいんだ?」
「お前がうざいから叩きのめしたいそれだけだ」
「……幼稚だな」
巴は内心ため息を吐いた。
こんな四十一号の言葉よりも夢で出会い言葉をくれたオルレイの言葉の方が何倍も価値があると思った。
「んでさっさとしてくれない? 俺はここから出るんだ」
「……やっちまぇ!!」
巴は大軍を相手に立ち向かった。
とはいえ歴然の差ではある。
「オラァ!」
「よっと!」
「オラァ!」
「隙あり!」
「ぐべっ!?」
巴はこの四日間ちょいでの経験を使い目の前の集団を倒していく。
「……おい四十一号! どうすんだ? こいつ強いぞ!」
「なにまぐれに決まってんだろ! やっぱり無能力共は使えねぇ!」
そう言うと四十一号の手のひらに電流が流れた。
「……雷を出す異能か」
「ああそうだぜぇ? 無能のお前とじゃあ格が違うぜ!」
そう言って四十一号は殴りかかって来た。
「お前達三桁共は経験積んだ俺らよりも雑魚なんだよ! 一番上の一桁連中は外に出て人生を謳歌してるって話だ! そんなの不公平だよなぁ!」
「確かにな」
「そうだろ!?」
そう言いながら四十一号は己の不幸自慢を話す。
「俺はすごい! 異能を一桁連中よりも早く覚えてさらに研究者共を殺して俺に順応な研究者しかいない俺の城のにしたんだよすげーだろ?」
「ぐぁ?」
回避が間に合わず、巴は首を捕まえられた。
「ここは俺の城だ! あのハーフエルフもお前も俺のものなんだよ!」
「……他の人造人間はいるのか?」
「……あん? 俺の部下と最後に生まれたお前だけだよ」
「そうかそれを聞いて安心したよ」
「なんだって?」
「これ以上お前の加虐趣味に付き合う妹弟分に申し訳なくってさ」
「あっ?」
四十一号に首を掴まれながら巴はしゃべり続ける。
「ずっと考えていたんだよ。 俺がクローンって言われてさ俺の生きる意味あんのかって。 そしてお前の言葉で決めたよ。 俺は俺の事を知る旅に出て、そしていずれ世界でも救って超可愛いお姫様でも手に入れて結婚するわ」
「……何言ってんだお前?」
「そう言うのさ英雄譚って言うんだってよ」
巴は少女から教えて貰ったお話のあらすじを四十一号に話す。
その時だけは少女は何故か笑っていた事を思い出したからだ。
『なんでおしえてくれるの?』
『まぁ気まぐれだ』
『ねぇお話っておもしろいね!』
『……そうだな』
「はっ?」
そう言って巴は四十一号の顔を思いっきり殴った。
「ぐばぁ!?」
「お前は俺の最初のプロローグの敵でしかねぇよ。 寝てろよ序章の敵キャラ野郎」
そう言って巴は笑った。
さぁ狭い世界から飛び出そう。
空を飛びたい鳥を鳥籠はいつまでも閉じ込める事は出来ないのだから。
「さーてテメェらボコってやるよ」
「うぁぁぁぁぁぁ!?」
こうして巴は敵の数をもろともせず、敵を殲滅した。