救いへの一歩
「んあ?」
巴は目を覚まして当たりを見回す。
いつも通りの牢屋だと理解して体を伸ばすストレッチを行った。
「さてとりあえず仲間集めだ」
巴は決意を胸にこの研究施設からの脱走計画を考え始める。
「まずはクロナとあの生意気少女だな」
牢屋の地面に座り込んで巴は考える。
実験動物達が強いがこれから研鑽を積んでいけば勝てない事はない。
「まぁとりあえずクロナだな」
巴は日常生活を送るついでにクロナについて観察する事した。
「おはようクロナ今日も元気だな!」
「……一体何があったんですか? 気持ち悪い」
まるでゴミを見るような目でクロナが見てくるが巴は気にしない。
とりあえずクロナの好感度を上げる事に専念する。
「なぁクロナやりたい事ないか! やりたい事! この施設を出るとかさぁ!」
巴はあえて愚かにテンションの高いバカを演じてクロナから情報を聞き出そうと奮闘した。
「なぁクロナ」
「うるさいですよ?」
「ぎゃふ!?」
気軽に声をかけては殴られ。
「なぁクロナ俺達四六時中いるから兄妹みたいなもんだよな!」
「……うわぁ」
テンション高いジョークを披露してはドン引きされ、完全に異常者認定された。
そんな態度を取り続けたある日だ。
「……本当にどうしたんですか三百号。 頭を打ってイカレたんですか?」
「なぁなぁノリが悪いぜクロナ! もっと陽気に笑おうぜ!」
「……はぁ後で上に報告しますので覚悟していて下さいね?」
「おうわかったぜ!」
そう言ってクロナは廊下を歩いて行った。
「はぁ一体急にいきなりなんで態度が変わったのでしょう」
クロナはため息を吐いて廊下を歩く。
「……ぐぅがぁ」
すると目の前で黒髪のハーフエルフが血反吐を吐いて膝をついていた。
「……アウラ・プライズマン。 今日も鍛錬ですか?」
「……お前には関係ないだろクロナ」
アウラが魔力を滾らせてクロナを睨む。
「……復讐者に何を言っても無駄ですよね。 怒りで全てが曇っているあなたには」
そう言ってクロナは目を閉じてアウラが通り過ぎるのを待つ。
「……救いはあるのでしょうか?」
何故かクロナはハーフエルフアウラを見ながら三百号の事を思い出していた。