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偽物と魔性の民  作者: 宅間晋作
誕生編
30/37

喧嘩の終わり新たな戦いへの前夜

「……ドミエラの容態は?」


 クロナは確認として医者である恵、直也、千穂に確認を取った。


「……無事だよていうか僕達の医療技術が必要ないぐらいだよ」


「うんそうだね」


「ふ。 どうやら私は未知の発見をしてしまったようだ」


 一方クロナは空田恵の研究所兼病院に来ていた。

 そこには巴の同級生だった直矢と千穂もおり、三人の医療技術によってドミエラは命を取り留めた。


「この楽園はどうなるんですか? もしかして北の帝国と本気で戦争を起こすんじゃ!」


 すると直矢が顔を真っ青にして頭を抱えた。


「いや心配には及ばんがもしかしたら内通者いるのかもしれんなこの楽園に」


「「「っ!?」」」


 恵の発言にクロナ、直也、千穂が固まった。


「そ、そんな! 人工島楽園は帝国の物になっているという事ですか!?」


「いや恐らく利害の一致なんだろう。 その目的は分からんがな」


 恵は顎に手を当てながらドミエラを見た。


「誰かが裏で操ろうとしているなこの楽園をそして帝国にとってもこの楽園は欲しい土地らしい。 なぁクロナ」


「なんでしょう恵?」


 恵が真剣な顔でクロナを見た。


「もしかしたらお前達帝国と喧嘩しなければならんかもしれんぞ?」


 その発言はとても冷たく、強張っていた。




「……帝国め! 許してなるものか!」


 一方巴達の方も病院へと走っていた。


「……それって帝国と喧嘩するつもりなのか? アウラ」


「ああ。 巴私は決めたぞ! 私は必ずや帝国を打倒してみせる!」


「お姉ちゃん! アタシも手伝うわ!」


 アウラの発言にミエルも首を振って頷いていた。


「落ち着けって。 まずはドミエラの怪我が先だろ?」


「そ、そうだが巴、私は自分が腑抜けていた事に気がついたんだ! 父が死んでから九年も経って力もついた! だからこそ私は帝国を打倒する!」


「だから落ち着けって」


「落ち着いていられるか! 大切な姉を傷つけた挙句この楽園に土足で踏み込んで来たんだぞ! 貴様は悔しくないのか!」


 するとアウラが激昂して巴の胸ぐらを掴んで来た。


「……俺は無知だからわかんねぇけど今はドミエラの容態の方が俺は大事だと思う。 帝国に向かうとかの話はそれからでも遅くないと思う」


「……そうか。 そうだな。 巴すまない自身の無力さとドミエラ姉様を傷つけられて我を忘れていたようだすまない」


 するとアウラは冷静になったのか目を閉じてそのまま巴を見た。


「んっ? どした?」


「な、なんでもない!」


 アウラがじっと巴の事を見つめてくるので質問をしたが何故かアウラは真っ赤になって目線を逸らした。


「はぁ鈍いのね巴」


「何が?」


 巴とアウラの態度にミエルは軽くため息を吐いてやれやれと首を振っているが理由が巴にはさっぱり分からなかった。


「まぁいいわはやく行きましょう? 二人共」


「あ、あぁ」


「おう!」


 そんなミエルの言葉に頷いて巴とアウラは全力で走った。




「あ、あに様!」


「クロナ! 」


 しばらく走るとクロナが見えたので巴はクロナに手を振った。


「クロナ、ドミエラ姉様の容態は?」


「大丈夫ですよアウラ。 楽園の医療技術によって命を取り留めて今、目を覚ました所です」


「よ、よかった!」


 クロナの報告にアウラが涙を流して喜んだ。


「案内します」


 クロナの案内で巴達はドミエラがいる病室に着いた。


「……ごめんなさいアウラ。 ……私は」


「ドミエラ姉様!」


「うわっ!?」


 全身を包帯巻きにしたドミエラに向かってアウラが胸に向かって飛んだ。

 アウラの態度にドミエラは驚いてギョッとした顔を浮かべた。


「い、痛い! 痛いわよ! アウラ私血を失っているんだからちょっとは加減して!? たとえ貧弱エルフでもシフォルの民だからそこそこ腕力あるから掴まれたら痛い! 痛いから!?」


「よかった! よかったよ! ドミエラ姉様!」


 痛がるドミエラを無視してアウラは子供のように涙を流し続けた。


「ひとまず笑顔を見れて良かったわ」


「一件落着か? これは?」


「まぁひとまずいいんじゃないですか?」


 こうしてひょんな姉妹喧嘩はハッピーエンドに終わった。









「こんにちは浅儀厳格さん」


「フォフォ何かようかな? サラ・レイク王女」


 一方巴達が姉妹喧嘩のエピローグを楽しんでいた頃サラ・レイクは浅儀家当主浅儀厳格に出会っていた。

 二人が出会っている場所は楽園の路地裏であった。


「……あなた帝国に浅儀の血を分けたクローンを輸出してたわね? 大川鉄と手を組んで。 さらに今回帝国に私とアウラの事もリークしてたんでしょ?」


 そう言いながらサラが様々なデータが書かれた紙を厳格に見せつけた。


「やれやれ女は怖い」


「……よく言うわよ。 自身の娘と孫を解体してクローンの材料にした挙句その旦那も研究資料としてスクラップにした癖に」


「はて? そうだったかな? もう九年前の事で覚えておらんわ」


「……恵さんがあなたを潰すのに三年早かったらこうはならなかったでしょうね」


「わしを捕まえようとしても無駄じゃよ。 これはわしの異能の分身の一つに過ぎん。 まぁ分身のストックがこれで最後じゃからしょうがないがの」


「あっそうアザイアに言っておいて精霊国と楽園の異能使いは負けない」


「まぁ言っておくかの?」


「……醜い」


 そう言ってサラは指から水の弾丸を心臓に向けて撃ち厳格の分身を殺した。


「……はやく帰らなくちゃいけないわ鳥根。 準備なさい」


「ああ分かったぜお嬢」


 サラに返事する鳥根の側には沢山の護衛達の死体が積み上がっていた。


「……全く浅家は完全に終わっていた家系なのね」


「まぁ厳格のジジイが異能を二つ発言させる浅儀プロジェクトなんか進めなければ精霊国も安泰だったんですかね?」


「……それでも無理よ。 帝国特使と妖霊相手には戦力が必要。 刀国とも同盟を組んでアウラ達の力も必要になるわ」


「……お嬢もしかして」


 サラの発言に鳥根が眉を寄せた。


「もしかしなくてもアウラ達と一緒に精霊国と帝国の戦争を止めるつもりよ」


「……お嬢は恨まないんですか? 巴の事をいや三百号の事を」


「……恨んでもしょうがないわ。 私の目的は精霊国に流れ込んでくる人造兵士の生産阻止だったけどあの子は自分で蹴りをつけたじゃない」


「……それでも俺はあいつを許せません」


「はぁ。 まぁいいわ鳥根。 とりあえず私は一刻もはやくガリナお姉様の元に帰らなくてはならない」


「分かっていますよお嬢その為に俺はあんたの剣になったんだ」


「頼もしいわね」


 鳥根の不敵な笑みにサラは妖艶に微笑んで返した。


「さぁここから帝国との戦争よ」


 そんな二人を満月の夜だけが見ていた。

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