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偽物と魔性の民  作者: 宅間晋作
誕生編
18/37

もう一人のトモエ

「なんかよく分からないがデジャヴがすごい気がする」


「……気のせいだろう?」


 何故か巴はそう言う風に感じてしまったがその疑念を首を振って取り払う。


「よし俺もやってみるよアウラ」


「ああ、頑張れ」


『燃えよ!』


 巴がそう唱えても何も起きなかった。


「何でだ?」


「……まずは自分の魔力を感じる所からだな」


「お前とキスした時は感じたんだぞ?」


「なあっ!? へ、変な事を言うな!」


「ぶべっ!?」


 巴が魔力を感じた瞬間を話すと何故かアウラは赤面して巴にピンタした。


「にゃ、にゃにを言ってリュんだお前!」


 呂律も回らずにアウラは手をブンブンと振っている。

 よほど巴の発言が恥ずかしい物だったらしい。



「なんかごめん」


「ふぅ。 べ、別にき、貴様は悪くない! む、むしろ私が取り乱してしまったな? と、とりあえず目を閉じて己の魔力を感じてみろ」


「わ、分かった」


 そう言って巴は目を閉じた。


「ん?」


 すると空から雪が降ってくる感覚がした。


「あれ? ここどこだ?」


 目を開けるとそこは灰色の雪が降る世界にいた。


「おーいアウラ! アウラ!」


「だ、誰もいないのか?」


 巴は怖くなったがとりあえず歩く事にした。


「そう言えばこの灰色の粉なんなんだ? 食べてみよう」


 そう言って巴は灰の粉を拾って舐めてみる。


「……何の味もしねぇ?」


 灰の粉は巴の舌ですぐさま溶けてしまい、味もしなかった。


『汝何を目指す?』


「ん?」


 すると声が聞こえた。


「誰だお前?」


 声の主に巴は問いかける。


『我は神でもなければ超常の存在でもない。 ただお前の中にある心だ』


「……心?」


『そうだ。 お前は異能使い。 ならば心は具現しているだろう? そしてさらに何故力を求める?』


「……ていうか俺異能持ってんの?」


『自覚なしか。 まぁいい我はお前だ。 少しずつ己と向き合え』


「……す、姿を見せてくれよ!」


『何故だ?』


「な、なんか怖くてやだ!」


 巴はひたすら聞こえる声にやや恐怖を感じた。


『……何度も言うが我はお前でしかないだから姿なぞない』


「えーとつ、つまり?」


『これはお前を写す鏡としてならば……出来るか』


 声はそう言うともう一人の巴が現れた。


「お、俺だ!?」


『……言っただろうお前でしかないと』


「えっ、マジ? マジで俺なの? こんな、いかつい感じの声俺なの!?」


『……はぁ付け加えるならなりたい。 もしくはなれるかもしれないお前だ』


 通称心の巴はそう語りかけてくる。

 確かに目の前にいる巴はどこか三十年代ぐらいの背丈と声をしていると思う。

 だが何故そう思うかは巴には分からなかった。


『お前は怖がっているのだ。 自身が人造人間である事で寿命が少ない事。 アウラを悲しませるかもしれないという無意識の怖さと弱さ。 それが魔力を阻害している』


「……俺と向き合うってのはこう言う事なのか?」


『……こんな見た目となって一緒に人生を歩んで生きたいのだろう? 我よ。 自身が強くなれる次元なぞ限界があるし、自身よりもいい男がいればアウラはそちらへと向かうと思っている』


「……否定できないな」


『そうだろう。 答えが欲しいか?』


「……いやいらねぇ。 俺は俺だしなんかお前と話せて良かったよ」


『……はぁ素直だな。 我はお前の弱さと理想の姿をした存在なんだぞ今は』


「理想?」


『こうやって貴様の好きな人に変身する事も出来る。 すごいでしょ? 褒めて下さいあに様!』


「なっ!?」


 すると目の前の巴の心はアウラとオルレイ、そしてクロナに変身した。


「……えっ? 何これお前男じゃない?」


『……頭が硬いですねあに様』


 心の巴はクロナの声と姿をしながら話す。


「まぁいいや! と、とりあえずお、俺はどうすれば唱独術を覚えれるんだよ!」


『……だから最初に言っているではありませんかあに様? あに様は何をしたいのです?』


「……何を?」


 巴は考える。

 強くなりたい。

 今の生活を守れるぐらいに、今目の前にいる人達を守れる強さが欲しい。


「俺は強くなりたい。 今の自分よりも遥か先へ」


『まぁ及第点と言った所ですね。 さぁあに様こちらへ』


 すると扉が現れた。


「……何これ」


『魂の扉です』


「えっ? 何これ?」


『さっさと入ってください!』


「えっ? うぉぉぉぉ!?」


 巴はクロナの姿をした心の巴に背中を蹴られて扉の中へ入った。



「……あれ? ここは?」


「ほら巴。 今日は巴の好きなカレーだよ?」


「……誰?」


「まぁ誰って酷い。 巴のお母さん葵だよ」


「そうだぞ! 巴! お前は俺達の息子なんだからな!」


「……えっ?」


 父親と母親がいる事に驚いた。

 巴は人造人間なのに。


「よく来たね。 僕のクローン」


「……お前は?」


「僕は浅儀トモエ。 君のコピー元さ」


 そう言って茶髪に黒い瞳をした少年は巴に向けて笑みを浮かべた。


 

 



 


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