家族愛
「ぜぇ、はぁぜぇ。 と、遠すぎんだろ!?」
巴はとりあえずクロナの案内に従ってアウラを背負いながら歩く。
クロナだけに苦労はさせられないと途中で巴が提案してアウラを背中に背負って歩いているが色々と体力の限界だった。
ちなみに巴は人造人間なのでそんなに体を鍛えていないのが原因で体力があまりなかった。
戦闘する時の体力と何かを持ちながら歩いたり走ったりは同じ体力の消費ではないと巴知った。
「ここですあに様」
するとクロナが建物を指差した。
「……すげー立派な建物だな?」
巴が見てみるとそれは和風屋敷と言える建物であった。
「クロナ鍵あるよな」
「はい」
そう言ってクロナが家の鍵を開けた。
「……広い五人で暮らせるぐらいは広いんじゃないか?」
「いえ、八人は軽く住めそうな空間ですね」
クロナが瞬きをしながら部屋を見渡す。
「……うわぁ施設の牢屋しか知らんからこの家の凄さが俺には分からん」
「とりあえずアウラを下ろしましょう」
そう言って巴はリビングにあるソファにアウラを寝かせた。
「なぁクロナ食糧ってあるかな?」
「小腹でも減ったんですか?」
「あ、いや今日の夜ご飯ぐらいはちゃんと食べたいなぁと思って」
そう言う巴はクタクタだ。
何せ戦闘をした後に吸血されて血が足りないし、その状態でアウラを背負ってここまで来たのだ。
「あっ、無理」
「あ、あに様ぁぁぁぁぁぁ!?」
腹も減っていたのでご飯を食べてから寝よう及び気絶しようと考えていたが既に限界突破した巴の体は充電が切れたロボットのように膝から崩れ落ちて意識を失った。
「あ、あに様!?」
クロナはすぐさま三百号の首に手を当てて生きているか確認をした。
「よ、よかった生きている! 人造人間は何が原因で死ぬか分かりませんからね」
クロナは内心ほっとした。
人造人間は普通の人間よりも強度が脆い。
加えて繁殖機能はあるが人よりも子供が出来にくい。
だが三百号だけは違う。
クロナを制作した恵が作った唯一の人造人間だ。
大川は全て自分が作った人造人間だと勘違いしているが三百号だけは恵が作った人造人間なのだ。
それをクロナを作る為に大川に近づいた際に大川が所有する培養液に恵は三百号を入れたのだ。
それと同時にクロナだけが知っている事だが三百号はアウラの伴侶として生み出した存在である。
クロナを生み出した恵からの指令は二つ。
一つはアウラと三百号の管理と監視。
二つはアウラと三百号の子孫の世話。
まずはじめに大川を思考誘導させて、三百号の監視役としてアウラを付けた。
その後自身が三百号を監視して脱出の手筈を整え、彼らには仲良く暮らしてもらう。
「ここまで長かった長かったです。 ……あに様」
感動でクロナは涙を流していた。
人造人間とアンドロイドはベクトルは違えど作られた者どうし。
クロナは本当は三百号を兄と呼びたかった。
恵によって先に作られたのが三百号、後から作られたのが自分なのだからそういう感情と感性を持っていてもおかしくないとクロナは思っている。
それは制作された者達にしか分からない家族愛や兄弟愛の形なのである。
「ずっとあに様と暮らしたかった!」
そう言ってクロナは三百号を抱きしめる。
「うぅぅぅぅ」
そう言ってクロナは涙を流した。
実はクロナには三百号以外の制作された兄や姉はいない。
それは空田恵が制作したのが純粋に三百号とクロナしかいないからだ。
話を聞いた事によると恵は高い技術理論を持ちながらも自由でいたいという思いが強すぎて全くと言っていいほどその才能を使わなかった。
だがそれがいざ発揮すればこのように大川の浅儀プロジェクトを軽く上回る成果を上げているのだ。
「あに様。 これからは一緒ですからね」
そう言ってクロナは生まれて初めて心のそこからの笑みを見せた。




