表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽物と魔性の民  作者: 宅間晋作
誕生編
10/37

シフォルの民

「……おーい本当に大丈夫か?」


 巴はアウラの目の前で手を振ってアウラの意識を確かめた。


「……う、うるさい! 静かにしろ!」


 すると何故かアウラが怒り口調になって巴に怒鳴った。


「おいおい助けてやっただろ!? 少し褒めてくれてもいいんじゃねーかな!?」


 巴は英雄のようにかっこよく登場した事が恥ずかしく思えた。


「う、うるさい! き、貴様如きに助けられる私ではないんだ!」


 何故か顔を真っ赤にしてアウラが怒鳴る。

 そのせいか耳までピンク色に染まっていた。


「……なんだよまぁいいや! とりあえずここを出るぞ!」


 そう巴が言った時だった。


「実験動物が生意気だよ? 私をコケにしよって!」


 すると大川が飛び出して来た。


「ふふ。 このドーピングの薬を使う事になるとは思いもしなかったよぐふふ。 まぁいいはやくアウラ君を手に入れて私は帝国でのし上がる!」


 そう言いながら大川の体は紫色に染まり肥大化し、ついには大男と言わんばかりの巨人となった。


「ぐぉぉぉぉぉ!!」


「……なぁこれ倒せるか?」


「何、貴様と手を組めば楽勝だろ?」


 そう言ってアウラは刀を抜刀し、左手に銃を持ってそのまま走り出した。


「おいアウラ!?」


「合わせろ!」


「無茶振りだなおい!?」


 巴はアウラの無茶振りに驚きながらも走り出した。


「ぐぅぶぉ!!」


「弾け飛べ!」


 そう言ってアウラが銃を大川の頭に放つが効果はなくただ弾丸が床に転がるだけだった。


「ならこれならどうだ! ビキバガ!」


 するとアウラはゼロ距離で銃を大川の体に密着させてそのまま電流を流す。


「がぐるぶぁ!!」


「ぐっ!?」


 それに怒った大川がアウラを殴り飛ばしたがアウラは咄嗟に銃を捨てて刀でガードした。


「アウラ!?」


「……大丈夫だ。とっとくたばれゲスが!」


 怒号を吐きながらアウラは片膝をつい血反吐を吐いていた。


「うおぉぉぉ!!」


「がぶぁ!」


「ぐっ!?」


 巴も加勢して大川を殴ったが意味がなくそのまま殴り飛ばされてしまった。


「やぁ! はぁ!」


 アウラが刀を振り回して大川の肌に傷をつけようとしたが火花が飛び散るだけで全くと言っていいほどダメージがなかった。


「うが!」


「うっ!」


「アウラ!」


 すると大川がアウラの首を締め上げ始めた。


「やめろぉぉぉぉぉぉ!」


 アウラの魔法、剣術でダメならば異能しかないと巴は思った。

 だが今の巴に異能は発言していない。

 だからこそ巴はここで発言しなければならないと覚悟を決めた。


「お前を倒せる俺になってやる!」


 そう言って巴が走り出した時だ。

 右手に激痛が走った。


「うが!?」


 いきなり痛みが走ったので巴は右手を押さえた。

 だがこれは体の痛みではないと直感で分かった。

 痛みを無視して巴はそのまま走る。

 世界がだんだんと薄れていく、音も聞こえなくなって時間がゆっくりに感じた。


「くらいやがれ!」


 そう言って大川を殴った時だ。

 ピシリと音を立てて巴の殴った所に刃物で斬りつけたかのような跡が出来てそのまま切断された。


「ぐお?」


 大川は自身に起きた事に何も気づかないままそのまま絶命した。


「……これ俺がやったのか?」


 目の前で起きている現実が分からず巴は混乱した。


「ゲホ、ゲホ。 ありがとう三百号」


 そう言ってアウラは立ち上がった。


「よかった無事だったんだな? アウ……ラ?」


「うぐぅ」


 巴がアウラを見た時だった。

 緑の瞳が赤く染まっていた。


「えっ? アウラ?」


「あーぐ」


 するとアウラは巴の肩に歯を突き立てて血を吸い始めた。


「がぁぁぁぁぁあ!?」


 痛い。

 痛みが走った。

 だが同時になんとも言えない快楽が巴の脳を支配して吐息が漏れる。


「くぅ。 あっ!?」


「……もっともっと! 愛しき者の血を! ぐるぅがぁ!!」


 そう言ってアウラは巴を乱暴に押し倒してさらに歯を食い込ませてきた。


「あ……ウラ? しっ、かりしろ!」


 口調が既にアウラの物ではなかった。

 まるで獣のように血を貪り吸う。


「……はぁ……はぁ」


「アウラ?」


 いきなり吸血行為が終わると肩でアウラが息をしている。

 すると徐々に目が赤から緑へと戻った。


「……落ち着いたか?」


「……あれ? 私は何を?」


 アウラは自分が何をしていたのか分かっていないようだった。


「あれ? 三百号なんで肩から血が?」


「おい。 お前から押し倒して吸血行為してそれはないだろ」


「……あぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 するとアウラは発狂し始めた。


「おい! アウラどうした!?」


「ち、違う! 違う! 私はシフォルの民の血に飲まれてなんかない! わ、私は! 三百号を愛してなんかない! ただの友達だ! うぐうわぁぁぁぁぁあ!! 嫌だ嫌だ! 私は魔性には落ちない! 絶対!」


「お、おい! 落ち着けって!」


 巴はいきなり錯乱したアウラの肩を叩いて落ち着かせた。


「う、うぅぅぅごめんなさい三百号私三百号の事が好き」


「はっ? いきなりなんだよ?」


「……初めてあった時からすきな好きなんだ! 本能がお前を求めているんだ! ま、また発作が!? い、嫌ダァ!ぐがぁ!!」


「えっお……い?」


 するとまたアウラが巴の肩に歯を突き立てて吸血行為を開始した。


「うっ!?」


 また襲ってくる激痛に意識が飛びかけながらも巴はなんとか意識を保った。


「ふ、ふふ愛しき者。 私の夫! ふふふはははは!!」


 アウラはそう言うといきなり巴に口付けをして来た。


「ん、んぐぅ!?」


 まずい。

 魔力を生命力を吸われているのが分かる。


「ん! んぐぅ!」


 巴はアウラの背中を叩くがアウラは一向に巴を解放してくれない。


「ぷは! ふふふ逃がさない逃がさないぞ? 私の夫! 魂の伴侶!」


 ゾッとする笑みだった。

 まるで巴を食糧としてしか見ていないかのような捕食者の目をしていた。


「お、おいアウラ?」


 すると何故か次はアウラが服を脱ぎ始める。


「ふふ、私とお前の肉と魂は表裏一体! さぁ作ろう私達の子を! 未来を栄える為の愛を!」


「やめて下さい」


「うっ!」


 するとクロナがいきなり現れてアウラの首筋に電流を流して気絶させた。


「……何あのままシようとしているんですか? 三百号」


「……いや状況全く分かっていないからね! 俺!」


 そう言って巴はクロナにツッコミを入れる。


「というかアウラのあの急な態度の変化はなんだ?」


「あれはシフォルの民の本能または発作ですね」


「ほんのう? ほっさ?」


 巴は初めて聞く単語過ぎて首を傾げた。


「はい。 アウラはエルフとシフォルの民のハーフです。 片方のシフォルの民の血は吸血鬼、サキュバス、セイレーンの血が入っています」


「それがどうした?」


「はぁ。 説明しますと吸血鬼御三家というものがありまして、サタ、ゾズマ、シフォルの民というものがあります」


「ほうほう」


「まずサタ族。 彼らは海で泳ぐ事が得意な吸血鬼の一族で彼らはラミアの血が入っています。 紫の髪に赤い瞳を宿し、鱗があり、魔眼が使えるそうです。 それと夜の終わりに鱗を剥がして全裸で寝るという習性があります」


「おう分かったぜ!」


「次にゾズマ族。 彼らはタロスの血が入った一族で金髪に青い瞳を宿し、怒るとピング色になるらしいですが全くと言っていいほど泳げないそうなんです」


「なんじゃそりゃ」


 巴はゾズマの話を聞いて間抜けだなと思った。

 そんな種族がいるのかと正直思った。


「そして最後にシフォルの民。 彼女らは」


「ん? 彼女ら?」


「はい。 シフォルの民は女の子しか生まれないんです。 そして好きな異性を見つけたらその美貌と声で男を惑わし、血と種と生命を喰らう一族なのです」


「えーとつまり」


「はい今三百号はアウラから惚れられています」


「なんで?」


 いきなりの事で巴は途方に暮れた。



 





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ