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私は姉より劣っていると言われてますが…

作者: 徒然草

 あっさりと終わる、都合のいいざまぁなお話です! もしよろしければ読んでいただけると嬉しいです。

 私のお姉さま、シンシア・ガーデニアはとても美しい伯爵令嬢だ。学園では常に首位を取るほど頭が良い。礼儀作法も完璧で、誰に対しても優しい性格の持ち主だ。非の打ちどころなんて何処にもない伯爵令嬢であり、私にとっても自慢の姉である。


 そしてこの私、リーリア・ガーデニアは秀でた容姿ではなくお姉さまの成績には及ばない。姉よりも劣る妹として私の事は認識されている。


「よお、リーリア嬢。相変わらずシンシア様には到底及ばない見た目と成績だな。シンシア様は一位だったんだろ? もっと頑張れよな。」


「シンシア様はとっても素敵なお方ですわよね。リーリア様ももう少し努力をなさって、シンシア様に近づけるように努力なさった方が良いと私は何度も言っておりますよね?」


「…ふふっ、まあ努力したところでシンシア嬢には勝てないと思いますけれどね。可哀そうに…。」


 リーリアが学園に通うようになってから、毎日のように嫌味を言ってくるようになった同級生、ポール・アンソニー、シャイラ・パージル、アマリリス・シアンの3人は、席に座るリーリアを囲むように見下ろしながら嫌味を言う。クラスメイト達は遠くからリーリア達を見ていたり、他の事に気を取られて見ていなかったりと様々である。他の人から嫌味やいじめのような対応をされてはいないものの、リーリアには友人と呼べる存在は居なかった。本人の問題というよりも、この3人が原因であった。


 (シンシア)よりも劣る(リーリア)、それは自他ともに認める事実であり反論なんて出来ない。だからリーリアは何も言い返せずに馬鹿にされるだけの存在なのだと、この3人は思っているのだろう。


「…私からも言いたいことがあります、まずはアンソニー殿に…」


 しかし、今日のリーリアはいつもと違った。席を立つとポール・アンソニー伯爵令息に視線を合わせた。

 

「は? …な、なんだよ。」


「確かに、私がお姉さまより優れているところなんてありません。アンソニー殿だけでなく、他の方もそう思っているでしょうね……ですがアンソニー殿、貴方よりも私の方が成績は良いですよね?」


「……え?」


 リーリアの言葉にポールだけでなく、シャイラとアマリリスも驚いて表情を固めてしまった。


「私の前回のテストの順位は7位でした。アンソニー殿の順位は一番下でしたよね? 150名中150位という生徒の数と同じ数字ですね。比べるまでもなく、私の方が上です。いやむしろ、アンソニー殿より下の者は学年には居りませんよね?」


 この学園では成績は掲示板に貼り出される為、総合得点と何位であるのかが学園に通っている者たち全員に知れ渡ってしまう。


「なっ…、お、俺の成績なんか関係ないだろう!! 俺は、貴女の姉であるシンシア様よりも、妹の貴女が劣っていると言っただけだ!!」


 顔を赤くしながら反論するポールを、リーリアは嘲笑うように笑みを浮かべた。


「ええ、分かっておりますよ。貴方は私がお姉様より劣っているという事実を言葉にしただけですよね。同じように、私もただ貴方が私より成績が劣っているという事実を言葉にしただけです。何か問題がありましたか?」


「そ、それは……。」


 リーリアの言葉に、ポールは反論できずに言葉を詰まらせてしまう。今まで何を言われても反論なんかしてこなかったリーリアへの戸惑いと、何も反論することができない状況に呆然としてしまう。そんなポールにリーリアはさらに口を開く。


「それと、私の容姿についてもお姉さまより劣っていると、平凡だと言いましたよね。えぇ、私もそう思います。アンソニー殿だけでなく、皆様も知っている事実を懲りずに何度もわざわざ私に言ってくれましたね。ですので、私からもわざわざ言わなくてもいいはずの事実をお話ししますね。アンソニー殿の容姿も私と同じく平凡以外の何物でもありませんよ。可もなく不可もなく、全くの普通ですわ。私、貴方の容姿を褒める言葉なんてお世辞でも聞いた事がありませんもの。勉強は最底辺、容姿は普通のアンソニー殿と、お姉様よりは劣っていても勉強は上位、容姿は普通の私の方が格上ですよね?」


「なっ…なにを…。」


「私の言っている事に間違いがあるのなら、言って頂けませんか? 私はただ、アンソニー殿たちと同じように、事実を話したいだけですので。」


 怒りを露にしながらも何も言わないポールの姿を確認したリーリアは、次にシャイラ・パージルを見た。


「では、次にパージル嬢。貴女の成績は確か…50位くらいでしたっけ? 私より上位の成績者のところにも、三桁の成績者のところにも、貴女の名前があった事がなかったのは間違いないのです…30位あたりまで名前を見てもなかったので確認するのをやめてしまいました。そして、噂に聞いた事もありませんから良くも悪くもなく、平均なのでしょうね。当たってますか?」


「えっ、えと…それはその…。」


 シャイラもリーリアより頭が悪い、そう言われた事でシャイラは居たたまれない気持ちになってしまう。


「アンソニー殿よりは優秀であっても、同じように成績は私より劣っておりますね。しかし、パージル嬢の容姿は可愛らしいと思いますよ。パージル嬢は知っていましたか? 貴女の容姿を褒める言葉はよく聞くのですよ。残念ながら、平凡な私では到底かないませんね。」


「えっ…、え、ええ! そうですわね!!」


 シャイラ・パージルは学年の中では3番目位に可愛らしいと言われる容姿をしている。成績では負けても、容姿は負けていない、リーリアも言葉に出して敗北を認めたのだとシャイラは喜んだ。


「でも、忘れていませんか? 貴女は男爵令嬢で、私は伯爵令嬢です。身分は私の方が上ですよね? そんな私に入学してから今まで、面と向かって堂々と馬鹿にするとは凄い度胸ですね。覚悟はできてますか?」


 喜びもつかの間、リーリアの言葉にシャイラは笑みを崩してしまった。


「陰でコソコソと私を馬鹿にするならばまだしも、直接馬鹿にしてきた格下の貴族は貴女だけです。近いうちに我が父、ガーデニア伯爵に今までの事を報告し、パージル男爵家に抗議させていただきますのでそのつもりでいてくださいね。」


「え、ま、待ってください! そ、そんなの酷いです。身分を持ち出して脅してくるなんてあんまりではないですかっ!! そ、そもそもこの学園は、身分に囚われずに平等に学生として過ごす為の場所なんですよ、だから…」


「平等というのはあくまでも成績の話です。上級貴族だから成績評価を甘くする、追試を免除するといった不正をせずに平等に評価するという事です。そもそも、身分に関係なく相手を貶し、嘲笑い、馬鹿にしていい訳がないでしょう。とはいえ現実はそんなに甘くはありませんよね。相手に非があったとしても、私と同格か格上の貴族に抗議してもあまり意味はないのでしょうね。ですからアンソニー殿にはしませんが、パージル嬢はそうではありませんので遠慮なくいかせていただきますね? シャイラ・パージル男爵令嬢。」


 シャイラの言葉を遮ったリーリアの言葉に、シャイラは顔を青褪めさせ今にも泣きだしそうな顔になる。


「…言い過ぎですわ、リーリア嬢。そんなに目くじらを立てて憤るなんて。」


 今まで黙っていたアマリリス・シアンが、まるでシャイラを庇うようにリーリアの前に立った。


「…憤りたくもなりますよ。アンソニー殿もシャイラ嬢も、私に対して悪意ある言葉をかけてきたのです。普通の事ではありませんか?」


「悪意ですって? 私はそんなもの感じませんでしたわ。この二人はリーリア嬢の為になるように助言をしていただけですわ。この私も含めて、ね。」


 リーリアの反論にも動じることなく、アマリリスは余裕のある笑みを浮かべた。


「シンシア嬢と比べられて、惨めな思いをしているであろう貴女の為に言っていただけなのよ。もしその事で何か不都合があるならば、パージル男爵家に抗議する前に私に言って欲しいわ。どうやら伝わっていなかったようだけれど、私達はただ貴女に助言をしていただけですわ。」


 アマリリスの言葉にシャイラは嬉しそうに、安心したような笑みを浮かべた。ポールも嫌味な笑みを浮かべてリーリアを見た。


 アマリリス・シアンは公爵令嬢。今までの成績は2位と3位を行ったり来たりしている。そして、容姿は迫力のある妖艶な美少女だ。リーリアの今までの成績の最高は5位であり、身分も容姿も成績も敵わなかった。その上アマリリスは第一王子の婚約者であり、未来の王妃となる存在だった。だからこそ、リーリアは今までは何を言われても、ポールとシャイラにすらも反論できなかったのだ。


「…私の為に助言をしていた、ですか。」


「そう言っているでしょう。それでリーリア嬢が不快な思いをしていたとしても、それはリーリア嬢の心の弱さが問題なだけですわ。私達に、悪意があったのだという証拠はありますの?」


「…いいえ、ありません。」


 リーリアの言葉に、3人は勝ち誇ったような笑みを浮かべた。アマリリスが居る限り、リーリアは何も出来ないとでも言うかのように。


「…そうでしたか、そういうことでしたら早速なのですが、ご相談をしてもよろしいでしょうか? シアン公爵令嬢。」 


「? ええ、勿論よ」


 リーリアの言葉に一瞬戸惑いつつも、アマリリスは頷いた。


「私はですね、どんなに努力したとしても、お姉さまのようになれるだなんて思えたことは一度もないのですよ。ですが、そんな私も一人の令嬢…いえ、一人の少女なのです。ですから、夢見てしまうのですよ…恋愛に。シアン公爵令嬢は、恋愛経験がとても豊富でいらっしゃいますよね?」


「はい? …つまり、私と王子がどのように過ごしているか知りたいという事かしら?」


「はい、そうです。ですが王子様の事だけではありませんよ。シアン公女と王子様は幼少期に婚約が決まっていた仲ですよね。婚約期間が長くても、お一人だけでは恋愛経験が豊富だなんて表現はしませんよ。」


「な、なにを…。」


 リーリアの言葉に、アマリリスは笑みを消して顔を引きつらせた。そして、リーリアは獲物を仕留めるような鋭い目つきになった。


「私が知る限りでは、7名の殿方とこの学園で二人きりでこっそりと逢い、仲良さそうにお話をして手を繋ぎ、口づけを交わしているではありませんか。さらにはあんな事まで…なんて情熱的なのでしょう! 私のような平凡な容姿であっても、何かの参考にさせていただけるかもしれません。是非、経験を事細かに教えてくださいませんか?」


 リーリアの言葉に、教室の中がしーんと静まり返った。ふと気が付けば、クラスメイト達はリーリア達に注目しており、今までの会話を聞いていた様子だった。


「な…な、なにを世迷言を口走っているのよ!! 私には王子が居るのよ、そんな事する筈がないじゃない、馬鹿じゃないの?! 非常識にも程があるわ、公衆の面前で、公女である私を陥れるような発言をして、ただで済むと思っているの?!!!」


「そんなに目くじらを立てて憤らなくても…。」


 大声で怒鳴るアマリリスの姿に、伯爵令嬢が公爵令嬢を陥れる発言をした事実にクラスメイトだけでなく、ポールとシャイラも今後どうなってしまうのかと内心慌ててしまう。そんな中で、リーリアだけは平気そうにしていた。


「ふざけるんじゃないわよ…リーリア・ガーデニア伯爵令嬢、私は貴女の事を許さないわ。今回の事はガーデニア伯爵家に抗議させていただくわ。 シンシア嬢に劣るとはいえ、最低限の常識をわきまえていると思っていたのに、証拠もなく出鱈目な事を…。」


「証拠ならありますよ。シアン令嬢、首元を見せていただけませんか?」


 アマリリスの怒りの表情は、リーリアの言葉で崩れさった。


「登校してすぐの事でした。裏庭でシアン公女と、ベラルダ侯爵令息がお二人で居るのを見ましたの。そして…はい、まぁ後はご想像にお任せしますね。あ、ベラルダ侯爵令息の首元も確認して頂ければ、証拠として十分なのではないでしょうか?」


「何ですって…。」


 リーリアの言葉に反応したのはクラスメイトのスウラ公女だ。スウラはベラルダの婚約者であり、リーリアの言葉に愕然とした後、教室を飛び出して行った。走り去るスウラを見た後、アマリリスはハッとしたように正気を取り戻して叫びながら後を追いかけた。


「ま、待ちなさいスウラ公女!! そ、そんなの嘘に決まっているわ。騙されないで、ま、待ちなさいってばぁ!!!!」 


 慌てて追いかけるアマリリスの姿に、クラスメイト達はリーリアのいう事が事実なのだと認めざるを得なかった。


 アマリリスはその美貌から男を誘惑し、男遊びをしているという噂が密かに存在していた。しかし、確固たる証拠もなく、王子の婚約者という事もあって誰も何も言わなかった。そんな中でリーリアは、アマリリスが王子の婚約者でありながら浮気をしたのだという証拠が出るのをずっと待っていた。常識があれば、浮気なんてありえない行為だ。仮に浮気するにしても、学園などという誰が来るかも分からない場所で逢引きなんてしない筈だ。しかしそんな状況に刺激でも感じたのか、それとも見られたところでアマリリスには逆らえないと油断したのか、アマリリスは証拠を残した。この日が訪れるまで言い返せなかったのは歯がゆかったが、リーリアはついにチャンスを掴んだのだった。



「シアン公女は何もかも私より格上ですが、貴族としての常識が私よりも欠けていますね。そうでしょう? …そして、それはお二人もですよ。」


 走り去るアマリリスを見ていたポールとシャイラはびくっと体を震わせると、恐る恐るリーリアに顔を向けた。


「貴方達から学べるものなんてありません。そもそも、お姉さまより劣っていたとしても何かそれで迷惑をかけた事がありましたか? 頼んでもいない助言なんて迷惑でしかありませんよ。そもそも、助言ではない事は分かっておりましたけどね。今回のシアン公女の件で、シアン公女と仲が良いお二人にどんな影響があるのか楽しみですね。」


 ポールとシャイラは顔を青ざめさせて、何も言えずに立ち尽くした。







◇・◇・◇






 翌日、アマリリス・シアンは王子との婚約を破棄され、学園を退学となった。その後の事は分からないが碌なことにはならないだろう。アマリリスと関係があった令息達も、それ相応の罰が下ったと噂で聞いた。やはりというべきか、スウラとベラルダも、ベラルダの有責で婚約破棄された。そして、スウラ公女はベラルダの浮気を暴いてくれたリーリアに感謝し、ポールとシャイラに抗議するなら力になると言ってくれた。リーリアの交友関係も増えていき、クラスで一目置かれる存在となった。また、クラスメイト達はポールとシャイラに直接何かは言わないが、二人を避けて距離を置くようになった。ポールとシャイラの両家には明日にでもリーリアへの暴言が伝わるはずだ。二人はリーリアに謝罪しようと近づいてくるが全て無視している、許すつもりなどリーリアにはないからだ。


 リーリアは今までの事を両親とシンシアに話すと、リーリアの為に怒ってくれた。シンシアはリーリアを抱きしめて、良く頑張ったねと頭を撫でた。もっと早く相談しろと両親はリーリアに言ってくれた。両親はシンシアにもリーリアにも愛情を注いでくれている。シンシアもリーリアが好きで、リーリアもシンシアが好きだ。リーリアは家族に恵まれているのだ。周りの言葉が気にならないわけではないし、辛いと感じる事も多々ある。しかし、姉に劣っていても、誰にも勝てないわけではないのだとリーリアは知っているのだ。

 久しぶりに小説を書いてみました。書きたいもの衝動で書いており、誤字脱字も多々あると思いますが読んで下さりありがとうございました!

 もしよろしければ評価して頂けると嬉しいです(^^)/



 日別ランキング1位になっていて驚きました(・o・)! 読んで下さった皆様に感謝です(*^^*)!(2025.5/30)


 気がつけば短編日別ランキング、週間ランキングで1位になれていました…(・o・)! こんなに沢山の方に読んで頂けるとは思っておりませんでした。皆様ありがとうございます!(2025.5/31)


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とってもスッキリしてサッパリして 大変面白かったデス。 仲良し家族であることを知らず 自滅してった愚か者達笑えたw
 優れた姉に嫉妬して妬んで居るんだ。と思って居たんでしょうね。でも手酷くやられたと自分たちの行動が褒められたもんじゃ無いのに何を言って居るんだと。  あと家族と仲よくて良かったと。
あっさりと終わる、都合のいいざまぁなお話大好きてす。とても面白かったです!
2025/06/03 16:14 退会済み
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