過敏な心にダイヤの心臓
(読みやすくなるよう、キャラクター達の会話を少し工夫致しました。)
どくどくと優ちゃんの心臓の音が聞こえる。
優ちゃんに触れる度に僕は頭が真っ白になって行った。
優ちゃんは頬を赤らめながらも僕の手を止めずに受け続けてくれる。
瞼を撫でると少し顔を手に押し付ける姿が特に僕は好きだった。
狂おしいほどに君が好きだ。
翌日2人で登校をした。
優ちゃんを見る度に昨日の事が頭に思い浮かんで少し恥ずかしくて距離を取ってしまった。だが優ちゃんも同じ気持ちだったらしく、その距離が今は安心できるらしい。
校門前の道路で佐ヶ野夜縁に凝視された。やはりあいつとは距離を取っておこう。
「おい弟切。」
佐ヶ野くんから出たその名は僕の苗字だった。
クラスでは馴染めず殆ど友人もできなかったから苗字も呼ばれるのは久しぶりだった。
「な、なんですか……?」
そう返事をすると佐ヶ野くんは何故か驚いた表情になっていた。
「お前ってそんなんだったっけ……?」
佐ヶ野くんは昔から僕を知っているように話し始めた。
「弟切ってもっと自分勝手で人付き合いが上手かった印象なんだけど、お前誰なん?人格でも増えたか?」
失礼な言葉をつらつらと並べ始めた佐ヶ野くんに怒りが湧いたのか優ちゃんは無言で僕を引っ張って教室まで連れてった。
でも何故か僕は佐ヶ野くんを前から知っているように感じた。中学よりももう少し前に。
「あの人って誰?仲良いの?良くなかったらめちゃくちゃ失礼なんだけど。」
優ちゃんは僕の代わりに怒ってくれて、また嫉妬しているようにも見えた。心の内で少しだけ佐ヶ野くんに感謝をした。
「前にちょっと話したぐらいだったと思う。でももっと前にも会ったことあるような気がするんだよね。佐ヶ野くんも僕を知ってるような口ぶりだったし。」
「そっか……あの人佐ヶ野って言うんだ。っていうか佐ヶ野ってあんまり学校来てない人だったよね??初めて見たけど不思議な人だね。」
ちょっとキレてたけど、僕には優しく話しかけてくれた。
その後佐ヶ野くんに話しかけられた気がしたが、チャイムがなったので席に着くことを優先した。
〜昼休み〜
昼休みは優ちゃんが先生に呼ばれていたのでひとりで屋上に景色を見に来た。
周りの学校では危ないからと閉鎖されていることが多かったがうちの学校では高めのフェンスが付いていて自由に出入りができた。僕の他にも来ている人が多く人気のスポットとなっている。
その時、佐ヶ野くんが勢い良くドアを開け僕のところに小走りで寄ってきた。よく見ると汗だらけのようで息切れもしていたので走り回ったみたいだ。
「弟切……本当になんも覚えてないんだな?俺のことも、あの時の事も……」
なんのことを言っているのか全く分からなかった。けれど、佐ヶ野くんのことは全く覚えていなかったので直ぐに返事をした。
「はい……っていうか、僕たちって前にあったことありましたっけ…?2年か1年の時同じクラスだったのは覚えてるんですけど、それ以外あんまり関わってない気がして……」
そう返事をすると佐ヶ野くんは深いため息をつき、僕の隣に座った。
そうすると真面目そうな顔で佐ヶ野くんは話し始めた。
「俺は弟切と仲良い気でいたんだけどな。お前、小学1年とか2年の頃の記憶曖昧だろ。俺を覚えてないならそこら辺も覚えてないはずだ。」
「え、仲良かったんですか?? まぁ、5年の頃なんかしらの事故にあって記憶喪失になったって父から聞いたので、殆ど覚えてないですね。すみません。記憶が本当になくて覚えてなくて……あ、でも背中に事故の時の傷があるんですよ。」
佐ヶ野くんはいつもの顔では思いつかないような優しい顔で僕を見つめていた。
「俺は今からお前に残酷な現実を伝える。お前の母親は出て行ったんじゃない。お前のその傷も事故じゃない。」
その言葉を聞いて、僕は身体が制御出来なくなった。目がとてつもなく重たくて、身体が動かなくて声も思いどうりに出せない。
ぼーっとする頭を必死に動かそうとしても無理だ。
一瞬だけ見えたやよの顔は必死だった。
なんで?
どうしてそんなに泣きそうなの?