スープに映った花
花ならば僕はキンギョソウが好きです。
意味が無いことばかり話しかけてくる彼の名前は華香 優輝だ。
僕と同じ名前で優しそうな名前だった。僕とは大違いで正反対で名前の通り輝いていて、彼の母親はセンスが良いなと思った。未来を見据えた名前をつけて貰えて羨ましい。僕はいつも憂鬱で気持ち悪くて、木のような何の役にも立たない人間になったから、ある意味僕も見据えてつけて貰えた名前だったのかもしれない。名前をつけた本人がいないから真相は分からないけれど。
彼は口当たりだけの言葉は言わなかった。相手を思いやり的確に特徴を捉えて答えを見出すAIのような人で、ただ相手に相槌を打つ人工知能かと思ったら感情を上手く言葉に埋め込む最新のAIだった。
人間の様を真似するような彼とは話すのが嫌だった。いや、単純に彼が嫌いだったのかもしれないな。
「ねね、俺ゆうきって言うんだ!優しいに輝くって書いて優輝!君もゆうきだよね〜 同じ名前同士仲良くしない?」
あぁ本当に困る人間で、話すのが嫌だ。
「僕は憂鬱の憂に木の難しい方で憂樹。あそこに名札がついてるから、みんなの名前覚えたいんだったらあそこを見るといいよ。」
と言って僕は教室の扉の上に貼ってある名札が連なった壁を指さした。
何故か彼には優しく話してしまった。名前がおなじ誼み?いや、彼と僕に誼みなんか無い。ただここに来たばかりで知らない事が多いここの場所で孤独を感じないよう自然と慈悲を与えてしまっただけだろう。
「ありがとう!憂樹くんって優しいんだね。俺より俺の名前似合いそうだ笑」
彼はそう言って何故か空を回った笑顔をしていた。
そこで何故か、何故か彼に興味が湧いた。
彼は僕と同じ気持ちだったから?空を回った中身が空っぽな笑顔が気に障ったから? 僕にも正直今の気持ちが分からない。
向こうも何故か僕といて安心するようで、よく一緒に移動したり机をつけて給食を食べるようになった。
いつもモノクロだった孤独な世界が色付いて美しい世界に映った気がした。
(給食の時間)
「なな、憂樹って呼んでいい?……ん〜やっぱ憂にしたいなぁ。」
僕にあだ名をつけようとするまでに優輝との紐は太く色鮮やかになっていた。
ちゃんとした友達なんて出来るのが久しぶりで、あだ名に照れくささを感じて気付かずお得意の無視を発症していた。
「……ねぇ、俺の事優ちゃんって呼んでや!前住んでたとこで仲良い人とかにそう呼ばれててさ。憂っていっつも優輝さんって呼んでくるけどな〜んか心の底でつっかえるって言うか……とにかく優ちゃんがいいなぁ〜」
いつの間にか話は進んであだ名が確定され、僕の彼の呼び方までも確定してしまったみたいだ。でも、何故か悪い気はしなくて、彼の提案はすんなりと受け入れた。
「優ちゃん。早く食べた方がいいよ。じゃないと昼休み短くなるし、今日の宿題教えられないからね。」
そう言うと、優ちゃんはそそくさと給食を食べて勉強ノートを出していた。
何故か犬みたいで可愛くて僕の心の中には花が咲いた。
※この物語は実在の人物とは関係ありません。