初めから徐々に
メモ帳に話を書くのが苦手だから、長々と書くかもしれない。未来の僕、頑張って読んで。この物語を絶対に忘れないで。
暑く苦しく暗く早い夜だった。
僕と話したい幽霊たちが今だけはありがたい親友のように感じたんだ。今だけは、今だけはそうだった。
花歌を聴いて目から涙がこぼれたのは、何故かいつも感じない息苦しさだった。
誰かのせいじゃない。
君のせいじゃなかった。
なのに僕は君に押し付けてしまったから。だから君は消えてしまった。近くに存在しているのに、届かない夜の花火になった。
僕の名前は確か、憂樹だった。消えた母親に付けられた名前だったから、嫌いで頭の棚から消していた。憂鬱な樹のように清々しく美しく風に揺さぶられてという意味だっておばさんから聴いた。それは僕にみんなに流されるような人形のような感情のない人間になって欲しいと言いたいのかと思っていた。
でも今では、いや今までも分かっていたかもしれないけど、ただ美しく人を否定しない優しい人間になって欲しいって伝えたくてこの名前を僕に遺したのかもしれないって思えた。
でもそうなると分からない。ずっと分からない。なんで母さんは僕を置いていったのか。
どうやって生きればよかったの?僕が生まれなければお父さんと喧嘩して出ていかなかった?
飛んで火に入る夏の虫、花火に焼かれる鳥みたいに僕は自分で自分を苦しめて行った。泥に侵されて感情が無くなっていったような気がした。
「そう」なったのは大体中学生頃だった。
母によく似た人が僕のおはなしに入ってきた。
みんなが転校生の彼に話の輪を括りつけていた。僕だけはその輪から外れていた。誰とも話したくなかった、僕は話が苦手で皆を困らせるのが得意だったから。
だが、話さない事が不吉の輪を生むことになったらしい。彼は僕に挨拶をしてきた。優しい顔で太陽のように明るくてとても綺麗だった。僕以上に僕の名前が良く似合う人だった。
※実際の人物とは関係の無いストーリーです。