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高レベル冒険者の宿

「さてと、まずは宿探しだな」

「そうですね。馬小屋以外ならどこでも大丈夫です!」

「馬小屋はなあ…… 臭いからなあ……」

「匂いが3日取れませんでした……」

 馬小屋は銅貨1枚のような極めて安い価格で宿泊できるため、お金がない人にとってはありがたい存在である。だが、いかんせん臭い。駆け出し冒険者にとっては「馬小屋からの脱出」が一つの目標になる。


 サンは、ちょうど前を通りかかった人に話しかける。

「なあ、この辺りで1番良い宿を教えてくれないか? 今日初めてモルに来たんだ」

「旅人か? 1番良い宿なら、水風亭だな。この大通りをまっすぐ行くと看板が見えるから看板通りに行けばいい」

「ありがとう。助かる」


「1番ってことは高級な宿ですよね? そんな所で良いんですか?」

「ああ、大丈夫だ。それに冒険者は舐められたら終わりの職業だ。金持ちであることを示すのが一番手っ取り早い方法だよ」

「誰に舐められないようにするのですか?」

「宿の人や、ハクを預かってくれた店の人だな。ああいう街の入り口にいる人は、色々な店と繋がっていたり、冒険者ギルドと繋がっていたりして顔が広い。良い客だと思われたら色々便宜を図ってくれるが、そうでなければ面倒なトラブルが降ってきたりする。これでも色々学んできたんだよ」

「なるほど…… 冒険者は大変ですね」

「コツさえ掴めば簡単だけどな。良くも悪くも力が全ての世界だ。効率よく、効果的に振る舞うのが良い。ただ、物理的に殴ったりするのはよくないぞ?」

「そうなんですか?」

「個人的な考えだがな。すぐに手が出る粗暴な人間だと思われると、疎まれて良い情報が入ってこなかったりすることがある。スマートで実力がある風に振る舞うことが得することが多い」

「理解しました。勉強になります!」


 大通りを歩いていくと、話の通り「水風亭」と書かれた看板が出てきたので看板に従い進んでいく。脇道にそれ少し歩くと、大きな門の前にたどり着いた。門番が2人いる厳戒態勢だ。門に「水風亭」と書いてある。門番がいる宿は、警備がしっかりしているため間違いなく高級ホテルだ。話の通りだったな、サンはそう考えながら門番に話しかける。

「ここが水風亭か?」

「ええ、そうです。ご宿泊のお客様ですか?」

「ああ、宿を借りたいと思っていてな」

「かしこまりました。進んでいただくと受付があるのでそちらで手続きをしてください」

 水風亭は石で作られた古風な作りだが、石を見る限り新しく建てられた宿のようだ。そして受付近くには見るからに高そうな置物が並んでおり、壁には大きな絵が飾ってある。絨毯もふかふかで見るからに高級だ。。


「今日、宿泊したいのだが。1泊で、2部屋頼む。良い部屋がいいな」

「2部屋ですね。承知しました。それでは最上階のお部屋が空いていますが、いかがでしょう? 1部屋1泊金貨1枚、前払いになりますがよろしいでしょうか?」

「ああ、わかった」

 サンは財布から金貨を出す。財布と言っても、いわゆるマジックボックスとなっており、枚数に制限はなく自由に取り出せる財布である。この中に全財産が入っているわけだ。そこから3枚の金貨を取り出し、受付に渡す。


「1枚はおまけだ。自由に使ってくれ」

「え、あ、ありがとうございます。精一杯対応させていただきます!」

「とりあえず、部屋まで案内してくれるか?」

「承知しました! 今担当の者を呼びますので!」


「わーすごい部屋!」

 案内された部屋はとても広く、寝室だけでベッドが3つもある。さらに浴室に食事をする場所、トイレと全てが白い石で覆われた豪華な部屋だ。

「こんな綺麗な部屋初めて見ました!しかもこの部屋を2つ借りたんですか? 1部屋で良い気がしますが……」

「まあ、そうだが、部屋に誰かいると落ち着かなくてな。いつも1人で泊まるようにしているんだ」

「それは冒険者だからですか?」

「それもあるが…… まあ他にも色々あってな。暗殺者なんてのと戦ったこともある。部屋に戻ったら黒ずくめの男に攻撃されるのは中々刺激的な体験だったよ」

「それは怖い…… 暗殺なんてあるんですね」

「貴族とトラブルになった時の話だな。貴族はプライドもあるから面倒なんだよ」

 王が絶対のこの国において、王族と血縁関係があったり、戦で戦果を上げたような家は「貴族」と呼ばれ、国政の重要な役職に就いたり、街を管理している。このモルの街も領主は貴族であるはずだ。1000年にも渡り固定化されてきた考え方は、既に階級として世の中に染み付いている。

「貴族は良くも悪くも偉い人ですからね。最終的にトラブルは解決したんですか?」

「ああ、まあな。冒険者らしく解決したよ」


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