モルの街
飛び続けること数時間。夕日が落ちてくる頃、近くに街が見えてくる。
「街ですね!」
「結構大きな街だな。今日はここで休憩しようか。この大きさならホテルもあるだろうし、一休みとしよう」
「ホテル! あ、でも私お金がほとんどないのですが……」
「大丈夫。金なら余っているから問題ない。心配しなくていいぞ。俺は貯金は全部持ち歩く主義だからちょうど良かった」
「ありがとうございます!! 馬小屋で寝るのは辛いので…… ベットがあればどこでも大丈夫です」
冒険者は危険が多い代わりに報酬も高い。ダイヤモンドの依頼ともなれば1件で1年分の収入になるほどである。そしてサンは固定した拠点がないため、全ての荷物とお金は自分で保持している。それがこんな時に役立つとは。
「よし、ハク。この辺りで降りてくれ」
街の近くの草原にハクはゆっくりと降りていく。数時間ぶりの大地は少し不思議な感じがする。
「地面っていいですね、安心します」
「同感だ。人間はやはり地面に足をつけて生きる種族だな」
「あ、空の旅が嫌いというわけではないですよ! ハクさん、そんなに悲しそうな顔をしないでください! ちょっと地面の方が安心するというだけなので……」
しばらく歩くと、門が見えてきた。門で簡単な検査をして、問題なければ中に入れる、というのが一般的なルールである。
「ハク、ちょっと待っていてくれ、手続きをしてくる。ナズナは付いてきてくれ」
サンとナズナは検査の列に並ぶ。商人と思われる男や、冒険者と思われる女など、色々な人が大人しく順番を待っている。ここで目をつけられると中に入れない可能性があるので皆真面目である。
「次の方〜。ようこそモルの街へ。お二人ですね。身分を示すものはありますか?」
「俺は冒険者、こっちは俺の連れだ」
サンは冒険者の証である冒険者カードを提示する。
「ダイヤモンドランク…… サン様ですね。ご提示ありがとうございます! 承知しました。皆様にお伝えしていますが、モルから出る際にもお連れの方は必ず一緒に出るようにしてください。不法滞在の疑惑が出て、トラブルになる可能性があります」
「ああ、わかった。ちなみに魔物を1匹テイムしたんだが、首輪はどこで購入できるんだ?」
「中に入ってすぐの所に、お連れの生き物を預ける場所があります。そこで首輪を購入してください。また、魔物は必ずそこで預けるルールになっておりますのでよろしくお願いします。それではこれが通行証です」
「一度魔物を呼んできて良いか?」
「はい、その際は通行証を示していただければ大丈夫です」
「おお、綺麗な街ですね。治安も悪くなさそうです」
「そうだな、スリや強盗とかは少なそうだ。とりあえずハクを預けにいくか」
色々街を訪れると、見るからに治安が悪そうな所もあるが、ここはそうではなさそうだ。貴族がきちんと管理をしているのだろう。道も汚く薄汚れているわけではない。面倒なことは起きなさそうだ。
「いらっしゃいませ〜。どういったご用件でしょうか?」
「魔物をテイムしたので首輪が必要なのと、その魔物を預けたい」
「はい、魔物を拝見しても良いですか?」
「店の前に待たせてあるから見てくれ」
「おお、これは初めて見た魔物です。なんという名前なのでしょうか?」
「それが、俺たちもわからないんだ。王都に行って調べようと思う」
「なるほど。しかしカッコ良いですね。真っ白な体というのがまた…… あ、すいません。とりあえずこのサイズであれば首輪は問題なくご用意できます。宿泊場所も大丈夫です。ただ少しお値段が高くなり……首輪代が銀貨1枚、宿泊費用が1日銀貨1枚になります」
「ああ、わかった。それくらいなら問題ないさ」
「ありがとうございます! それではお預かりして首輪をつけさせていただきますね」
「だ、そうだ。ハク。いい子にしておくんだぞ?」
「キュ〜」
「宿泊するだけで銀貨1枚ですか…… なかなかの値段ですね。人間ならいいホテルに泊まれますね」
「まあサイズが大きいからな。しかも未知の魔物となれば近くに他の魔物を置くわけにもいかないし仕方がない」
「あ、そっか。喧嘩する可能性がありますもんね」
魔物同士に相性があることはわかっており、仲良くできる魔物とそうではない魔物がいる。捕食者と非捕食者、小さいネズミと大きな鳥のようなものは当然一緒には管理できないし、大きな鳥の中でも相性によって喧嘩する場合がある。魔物と牛や馬の相性など、気をつけるべきことは多い。そのため街では専門の業者が管理することが一般的になっている。




