運命の出会い
「予言は正しかった……」
「何?」
サンは、目の前で泣き崩れる女を前に困惑していた。ここは王国の端、魔物が多く生息する地域、近くに村や街はない。そしてまともな人間であれば一人で歩くような場所ではない。そんな場所で女が森の中から突然現れ、泣き崩れているとなるとどう対応していいかわからない。
「どうしたんだ……?」
「「黒い髪の光を放つ男が白き魔物を従えさせる」、貴方が放つ光が遠くから見えました……」
「?? 確かに光は放ったと思うが、なんの話だ?」
サンは光の使い手である。確かにハクと戦う際に光を使ったが…… それがどうしたというのだろうか?
「すいません…… 少しお時間をいただいて良いでしょうか?きちんと説明しますので……」
「あ、ああ。しばらく周囲を見張っているから、とりあえず落ち着いてくれ。水は持っているか?」
「ええ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
顔をよく見ると、大人と子供の中間くらいの若い女性だ。質素な農民風の服を着ており、剣は持っていない。どうやってここまで来たのか? 仲間になったばかりのハクを見てみるが、
「キュ〜ん?」
ハクも事態は良くわかっていないようだ。
「わかっていると思うが、食うなよ? まだ話を聞いていないからな」
「キューん」
まだハクのことを理解しきれているわけではないが、人の言うことを聞く知能はありそうだ。指示にはちゃんと返事をしてくれる優秀な魔物である。
「うーん、どうしたものか」
サンは自分が変わっている自覚はあるが、見ず知らずの他人で、周囲に誰もいないからといって、無闇に殺す趣味はない。とにかく女が落ち着くのを待って話を聞くしかなさそうだ。魔物が現れないか、周囲を見渡す。
しばらく待っていたが怪しい気配は感じない。これまでの戦いから、サンにとって苦労する魔物はいなさそうだが、女を守りながらとなると万が一の可能性があるため気は抜けない。ただ、ハクがいるからか周囲に生物がいる気配もない。強力な魔物の近くには魔物はいないという冒険者ギルドに学んだ知識を思い出す。
「本能的に自分より強い魔物は避ける傾向にある、か。ハクは強そうだからな……」
「東の森に白い、とんでもない強力な魔物がいるらしい。空を飛んで攻撃してくるそうだ」
そんな噂を聞き、サンが興味本位で訪れたこの地で、噂の主と思われる魔物と対峙したのが半日前。地面が抉れ、燃え盛る中での激戦になったが、魔物は自らの負けを悟り降参した。ひっくり返ってお腹を見せたのである。
「降参ということか?」
「キュ〜」
同意しているようだ。確かに、冒険者の中で魔物を「テイム」させているものはいる。色々な手段はあるが、その一つとして自らの力が下だと魔物が感じた時に、仲間になるということがあることは知っていた。しかし、滅多にテイムさせている冒険者はいないのでいざ自分がその場面になると困ってしまう。
「首輪がいるんだっけな……」
テイムさせた魔物には目印として首輪をつけないといけないルールがあるはずだが、都合よく首輪を持っているわけもない。
「まあ、なんとかするか。こんな魔物見たことないから面白いしな。そうだ、名前を付けよう。そうだな…… 白いからハクでどうだ?」
「キュ〜ん」
ハクと名付けたその魔物は、体長は5mほど、尻尾と首が長く、羽が生えている。そして全身が真っ白の鱗で覆われているのが特徴だ。なんという魔物なのだろうか? 今までの冒険者生活で目にしたことはない、不思議な見た目をしている。だが、美しいと一目見て思わせるオーラがある。
「とりあえず王都に連れて帰って見て図書館とかで調べてみるかな」
そんなことを考えている時に突然森から女が飛び出してきたわけである。
「すいません、もう大丈夫です」
「良かった。で、どうしたんだ?」
「はい、説明させてください。ただお願いがあります。とりあえず私の話を最後まで聞いていただけますか? 変な話をすると思うのですが…… 説明させてください」
「わかった。約束しよう」
「ありがとうございます。では…… まず、私は「予言」に従ってこの場所を訪れました」
「予言? 占いか?」
「占いではないです。ベルジャミンとは違います」
ベルジャミンは王国で最も有名な詐欺師である。偽の占いの力で王族に取り入り、王国を支配したのが数百年前。後に詐欺師として処刑され、占い師はこの国から追放された。そのことからこの国で占いとは詐欺の象徴でもある。
「そうか、じゃあ何なんだ?」




