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告白①

 少女の霊のことを幽霊さんに尋ねるのは、それが二度目だった。


 以前のように、話題を逸らすためではない。

 何しろ、あの悪霊のせいで危うく友人を轢きかけたのだ。


 僕がその件について話し終わると、幽霊さんはただでさえ青白い顔を真っ青に染めて、ごめんなさい、と震える声で言った。


「そんな。幽霊さんが謝る必要はないじゃないですか」


 全く意図しないままに、幽霊さんに謝らせてしまった。

 これでは僕のほうが申し訳ない気持ちになってしまう。


「いいえ。わたしがちゃんとあの子を見張ってれば、こんなことにはならなかったんです」


 こんなことに。

 まるでハルヒコが死んでしまったかのような言い草だ。


 だけど、そんな縁起の悪い言い方をしないでください、と言えるような雰囲気ではない。


「友達は無事だったんですし、そんな顔をしないでくださいよ。それに、幽霊さんがあの悪霊を見張る義務なんてないじゃないですか」


 勇んで言ってみたはいいものの、彼女たちの事情を何も知らない僕が、義務などという言葉を使ってよかったものかと考えてしまう。


「だいたい、幽霊さんとあの少女の霊って、いったいどういう関係なんですか」


 自分のことのように悪びれる姿を見ていると、やはりそのことが気になってくる。

 以前には幽霊仲間だというようなことを言っていたけれど、そんな曖昧な答えで納得するつもりはない。


 呆れてしまうのは、こんな状況でも、幽霊さんと少女がもしも親子だったら、と考えて不安になる自分がいるということだ。


「わたし、あの子の保護者みたいなものなんです」


「えっと、それは」


「あ、親子だとか、そういうのじゃ、ないですよ」


 安堵する自分に、やはり呆れる。


「そりゃあそうですよね。あんな子供がいるようには見えませんもん」


 あんな、の意味するのが少女の年齢のことなのか、それとも悪霊という性質のことなのか。

 それは言葉の主である僕にとっても曖昧だ。

 幽霊さんがいったいどういう意味にとらえたのかは判らないけれど、なんにせよ僕は今日初めて、彼女のやわらかな笑顔を見ることに成功した。

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