よい子はマネをしないでね!? お父さんお母さんと一緒に見ましょう!?
「キャ~! ルルちゃん、ララちゃ~ん!? おひさ~~!」
バッフィーはメイド達に両手をチラチラ振りながらぴょんぴょん跳ねた。
「「お姉様ぁ~! ご注文の品、持って参りましたぁ~」」
ご注文の品って何だ?
双子のプードルのメイド達は、バッフィーに駆け寄り抱き着いた。
君達、食われるぞ!
きっと赤頭巾ちゃんを食おうとした時の狼はこんな顔だったろう、などとバッフィーの大きなお口を見て思った俺は、次の瞬間、バイエルンの複雑な表情が目に入り息を飲んだ。
その真剣な眼差しは、真っ白な長髪のアフガンハウンドの執事に向けられている。
「こんなとこまで何しに来たんや?」
「何故黙って行かれたのです。何故わたくしをお避けになるのですかっ? マイローードッ」
その瞬間、目を閉じたバイエルンはブルッと身震いした。
「べ…、別に…避けてなんか…」
白執事はバイエルンの前にひざまづき、手を取って見つめ合う。
二人だけ別世界に行ってしまった様だ。
な、何すか? いきなしのエロチシズムなこの展開。昼メロ?
貴族の主と美少年の執事…。ひょっとしてこれは、見てはいけない禁断のホニャララなんじゃないのか?
空気を読まない白執事は、バイエルンの手の甲に軽く口付けした。
バイエルンは「あんっ」とか言って頬を染め顔を背ける。
疲れるぅっ! ドッと疲れる。何やってくれてんだよ、人んちで!
てめぇら、こんなとこでおっぱじめんじゃねえぞ!! 真っ昼間だぞっ!
おい、そこっ!
芋! 芋男爵! それとモップ! 芋とモップ! お前らだよ!
マイローーだか何だか知らねぇけど、とっとと連れて帰りやがれ!
あそこでメイドに挟まれてニャンニャンじゃんけんとかやってるキモいオッサンも忘れんな! お前らが盛り上がれば盛り上がる程こっちはドン引きなんだよ!
だから俺はこの話し始める前に言ったんだ。
『我輩は犬である…』から始めたら? って。
そしたら少しは文学的で格調あるものになってたんじゃね?
まぁ、過ぎた事を今更あーだこーだ言っても仕方ないが。俺の望みはただ一つ…、我が家に再び平穏な時間を取り戻したい。
困った時の…、サンタさんっ! 願わくば我に静かな孤独を与えたもうーーーー!! いい子にしますからぁっ! いやマジで。
俺は心の中でひざまずき、胸の前で手を組み祈った。その瞬間、なんと背後からお応えの声が聞こえた。
しかしそれはサンタの存在を真っ向から否定し、俺の夢も希望も見事に打ち砕いてくれるダミた低音のハイテンションボイスだった。
「お待た〜! 貴方のサンタガール登場よぉ〜!」
頼むよ~待ってねぇよ、そんなパツンパツンのサンタガールなんて見たくねぇよ! さっきの注文の品ってそれか!?
バッフィー、ある意味凶器だぞ、それ。
俺の気も知らない奴は、身体を左右にくねらせ上目遣いに瞬きして言った。
「貴方へのプレゼントはあ・た・しだぞっ! 喜べこの野郎~。ヒューヒュー熱いよ熱いよ!」
何っじゃ、そりゃ!?
正直俺は胸が悪くて言葉が出なかった。口を開いたら吐きそうだ。なのに…。
「も、茂吉ぃん…、ほっ放置プレイねっ! あぁ~ん、ダメ! 疼いちゃう!」
な、ナヌ!?
「やめろ、バッフィー…。やめろやめろやめてくれぇっ!!」
バッフィーに勢いよく抱き着かれて倒れた俺は、床で頭を打ち脳震とうをおこした様だ。
意識がもうろうとし、されるがままに顔を舐め回される。
(く…臭い。バッフィー、お前……納豆食ったな…。サンタさん…、いっそ俺を…殺してく…れ…バタン)
俺は一体、何処へ向かっているんだろう…。