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5分掛けて基地施設の探索・物資調達を済ませ、可能な限り兵装の更新を行った後、基地外縁部へと移動して機体の最終チェックを行う。当然のように拾得した装備品に被りが出たものの、どうにか最低限のアセンは組めた。
〈NNR-セミオートショットガン『ストライカーズ』〉
〈PS-ENライフル『レーゲン』〉
〈SLO-肩部小型迫撃砲『二八』〉
〈NNR-スピットヘッド〉頭部バルカン。ステルス強化。
〈SZ-イーグルボディ〉反応装甲(光学)。
〈PS-可動式ウィングスラスター〉
〈PS-オルドアーム〉ENブレード。
〈SLO-軽量脚部『隼』〉増設スラスター。スラスター持続強化。
武装はSR等級のショットガン。R等級のエネルギーライフルにエネルギーブレード。等級補正が無い副兵装の小型迫撃砲、そして頭部機関砲。
ドローンから獲得したショットガンは近・中距離での取り回しが良く高火力と、今回の廃都挑戦で最後まで使っていける主兵装だ。〈ルインズプラネット〉に於けるSSR等級武器とはSR等級の単純な上位互換ではなく、何らかのパラメータが突出したその代わりにピーキーな仕様が盛り込まれた癖のある兵装としての意味合いが強い。常に得意なスタイルで戦えるとは限らないため、SR兵装の方が対応力に幅があり扱い易いと個人的には思う。それと、意外にも最序盤で手に入れた弾薬を使う機会が回ってくるとは夢にも思わなかった。
二挺目の主兵装はエネルギーライフル。熱線を照射して灼き切るタイプと光弾を炸裂させるタイプの二種類が存在する光学兵器で、『レーゲン』は前者だ。EN系兵装には連続照射制限はあるが弾薬の概念はないので、継戦能力の点でも特に扱い易い。ただR等級は主力として用いるには火力が心許ないので、都市に到着した後により等級が高い同系統の兵装と切り替えたい。
肩部小型迫撃砲は榴弾による範囲攻撃を行う、副兵装に分類される兵装だ。火力自体は主兵装と遜色ないこの火器がサブとして扱われている理由だが、単純に武器としてのバリエーションが少なく、βテスト中は滑腔砲・迫撃砲含めて5種類と主兵装とするにはボリューム不足だと判断されたためらしい。
GHは懸架するスペースさえあれば主兵装・副兵装問わず何挺でも火器を搭載できるが、同時に運用するとなると頭文字に「肩部」のような部位を示す名称が付いた装備箇所専用の兵装を積まなくてはならない。大半の主兵装には付いていないから、副兵装にも十分な使い途が用意されている。
頭部アタッチメント〈頭部バルカン〉と〈EN剣〉に関しては、その名前の通りの兵装としか言いようがない。JUNK品のライトマシンガンより性能が良い機関砲二門と、白兵戦における常道にして最も汎用性に優れたENブレード、要はビームサーベルを携帯している。
非実体剣最大の強みは機体のどの箇所に叩き込んでも確実に部位破壊を起こせる火力でありながら、携行も簡便で入手も容易と、複数持ちが有り得るお手軽に強い近接兵器だ。
今装備しているのはR等級故、あらゆる敵を一撃でとはいかないが。
──あり合わせのパーツで組み合わせた装甲特性・機体性能の評価としては……中程度の装甲値に高めの機動力といったところか。ENライフル、ウィングスラスター、アームパーツの製造元であるPS社に関しては、βテストだと未実装の企業だったため今回初めて運用することになる。
PS社製パーツの特徴は装甲の重量が軽い代わりに装甲値は低め、光学銃は他の企業製より銃身が短めで取り回しが良く、精度が若干粗めなのが目につくか。ステータスの詳細はマザーベースに帰還した後の確認になるが、火器は兎も角装甲の特性はSLO社製とコンセプトが近いかもしれない。
この機体構成で荒野を踏破し、大河に隣接した都市へと向かう。
廃墟の惑星〈ノーディア〉の地表の大部分を占める砂漠と荒野は文字通り不毛の地で、資源や兵装を十分に獲得することは望めない。基本的に長居するエリアではないが、敵対的な無人機は湧くし、同じく都市に向けて移動中のプレイヤーとかち合う可能性は決して低くない。
勿論そいつらを撃破すれば弾薬その他諸々は手に入るだろう。ただこちらも相応に消耗するし、得られる装備が欲しい物であるとは限らない。更には基地や都市なら保障される制圧エリアの安全も、何故か無人機が地中から無尽蔵に湧き出す砂漠と荒野においてはその限りでない。
総じてリスクだけが付き纏う危険なフィールドなので一気に駆け抜けたいが、……まあきっと一、二戦はするなと覚悟だけ決めておく。
「……よし」
ピピピと軽い音のアラームが鳴ってドローンポッドがタグ付けした資源・兵装の回収を終えた通知が届く。獲得した物資とその金額が記載されたウィンドウを流し見て、その下部にある項目を押せば、後方で地響きと共に基地全体を覆い隠す白煙を噴き上げたドローンポッドが打ち上がる。
無事宇宙へと上がって姿が小さくなっていくドローンポッドを尻目に一対のレバーを地上と並行に揃え、片足でペダルを踏みウィングスラスターの推力を一気に最大まで引き上げる。
先程までとは比べ物にならないGが肉体に掛かり、何となく腰や肩で感じていた地面と接した感覚を喪失する。代わりに得たのは、地に足が付かない時に生じる不安定な平衡感覚と、──GHを歩かせ、走らせるだけでは得られない圧倒的な加速力。身体に掛かる負荷も跳ね上がるが、それさえも気分を高揚させる一助でしかない。
迫る白煙を置き去りに、視界を遮るものが何もない荒野のその先に見えるビル群を目指す。──この惑星に降り立って15分、まもなく中盤戦だ。