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はい
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消耗した弾薬と足りない装甲箇所の補完に、撃破した機体の残骸をスキャンする。
精度が低く射程も短いジャンクサブマシンガン本体に用はないが、その弾薬はハンドガンに使い回せる。当然サブマシンガンとハンドガンでは弾倉の形状は違う筈だが、そこはゲームとしての都合で、弾薬さえ確保すれば勝手にハンドガン用のマガジンも補完されるから問題ない。
もう一方の、重量級GHが装備していたライトマシンガンはそのまま頂くことにした。
ジャンク品だから集弾率は最悪。少しでも距離があると命中しなくなるものの、一度にばら撒ける弾数はガトリングガン、ヘビィマシンガンに次いで多い。運良く当たれば(最低等級相応の)火力もある。そして投棄しても懐が痛まないと、繋ぎには悪くない武器だ。
結局得られた戦利品は弾薬とライトマシンガン、そして装甲パーツ。特に装甲を、欠けていたアームとボディーを確保できたのは大きい。最低等級の装甲でもフレームさえ隠せていれば、たった数発の実弾が直撃して即爆散は避けられる。これで多少の無理が利くようになった。
「後は‥…空戦バックパックだな」
中盤から終盤までの生存率を左右する機動力。機体全体の戦闘力に直結し、短時間の単独飛行も可能にする高等級のバックパックスラスターを早めに入手したい。これがあるかないかでGHの足回りに雲泥の差が出てしまう。それこそジェット戦闘機並みの速度でかっ飛んでくる相手を、軽自動車程度の運動性で迎え撃たなければならない程度には。
上空に占位するドロップシップが存在しないのを確認し、現在地の軍事基地外縁部からより物資が充実している中心部に向けてGHを走らせる。道中は林立した倉庫や道端に停められた輸送車輌からも装備弾薬を確保し、等級の高い装甲への換装やパーツ強化アタッチメントによる補強で機体性能を向上させた。
〈JUNK-ハンドガン〉、低倍率スコープ。
〈JUNK-ライトマシンガン〉
〈NNR-スピットヘッド〉、ステルス強化アタッチメント。
〈GIW-マスタングボディ〉、使い捨て反応装甲。
〈空き〉
〈NNR-ノーマルアーム〉
〈SLO-軽量脚部『隼』〉、スラスター持続延長アタッチメント。
特に頭部と胸部、そして脚部に企業製の装甲を用意出来たのは大きい。
平均的な装甲・重量にレーダー探知範囲が他の企業より広域と、優秀なNNR社製頭部パーツ。ステルス強化のアタッチメントは文字通りにステルス状態になるのではなく、コンマ数秒程度敵機のレーダー探知を遅らせるものだ。ゲームスピードの遅い序盤だと効果を実感し辛いパーツだが、一瞬の判断で撃墜・被撃墜が起き得る終盤の高機動戦では、これの有無が勝敗に繋がることも多い。
文字通りの重装甲を体現し、標準未満の実体弾なら貫通しないGIW社製胸部装甲。本来なら重量級GHが搭載する装甲だが、中量級の特性として重装甲の積み込みが可能である。機動性と旋回性能に多少のペナルティを払いつつも全体的な防御力の強化に貢献しており、そのペナルティも脚部装甲の軽量化で相殺され、ごく平均的な水準に収まっている。
軽量、良好な可動域、紙装甲が特徴のSLO社製の脚部。紙装甲といってもそれは同等級内で比較した場合の話であり、低等級に比べれば十分な装甲値を有している。というより、この脚部パーツは5段階等級で上から一つ下の等級だから、最後まで使えるレアパーツの部類だ。都市部でもないのに手に入れられたのは、ドロップし易いアーム・レッグ装甲とはいえ、僥倖といえる。
全体で見れば開発企業、カラー、高機動・重装甲型といった傾向等の全てがバラバラで見境がない見事なキメラ装甲と、正直見栄えは宜しくない。しかし、初出撃の序盤から中盤に差し掛かるタイミングでこれだけ集められたのは、案外悪くない戦果だ。
残る空戦用スラスターを見つけ出した後なら、この基地を出立し、都市エリアでの熾烈な戦闘も熟せる……いや、まだ武装が心許ないな。最低ランクの火器だけでは並以上のパーツを装備した敵機の装甲が抜けない。特に終盤のヘビィを相手にする場合、生半可な武装では1ダメージも与えられず、詰む。
故に、次なる方針としてはこのエリアの中心部へと向かい、新たな火器・装備を確保。更なる機体の強化を目指すこになる。先の戦闘以降はプレイヤー機の降下もなく、装備収拾の障害となり得る相手は、基地内を徘徊する無人機群だろう。
無人機を操作するNPCの強さはピンキリだが、彼らが占拠する倉庫やトーチカの共通点として、装備・物資が山積みになって蓄えられている。単純に調べられるコンテナの数が増加すれば、相対的に入手率の低い高等級の火器や装甲がポップする確率も上がり、たとえハズレを引いても入手した物資を売り払えばそれなりのカネになる。強襲しても赤字になり難い、襲い得な相手だ。無人機が扱う火器で撃破難易度は大きく変化するが、それでも「肉入り」のGHを相手にする時より苦労はしない。
装弾したハンドガンとライトマシンガンを両腕に構え、オート移動を起動。機体をマップでピン付した基地の中心部へと進ませる。
GHの操縦を放って視界の隅に寄せていたエリアマップを拡大。3Dホログラムに表示された半透明の構造物の配置をβテストの記憶と照らし合わせ、無人機が徘徊するであろうルートに目星をつけ、ピンを打っておく。
自機から直近に2つ、中央部に5。先に戦ったプレイヤー2人の降下から交戦に至るまでの時間から逆算して、おそらくあの2人と無人機が戦闘する暇はなかった筈。無傷で、「新品」同様の状態で待ち構えていることだろう。
つまり、略奪し甲斐のある「物資」が歩いて自分からやってくるのだ。装備を補強し売り払う物資を捜し求めるリターナーにとって、これほどお得でおいしい獲物を狙わない手はない。