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5章 リバースカップリング

夢口は文化祭の最終日のあとに休職届けを出した。

そして、区切りをつけに九子の故郷に向かっていた。

そこは一度、九子の友達として二人で行ったことがあった。

あのときすでに九子と付き合っていたが、二人の関係を話す勇気はなかった。

多分九子の両親は気づいていかなったが、同じように女子校を卒業していた九子の祖母は二人の関係に気づいていた、と夢口は思っていた。


九子のお墓は小高い丘のふもとにあった。行くと九子が好きだったマーガレットをそなえる。

夢口は水差しでお墓のについた汚れを落とす。落としながら、この現実に九子はいない、そして生まれ変わることはなかった、そして自分は一人だと再認識する。

しかし、何か夢口は落ち着いていた。屋上で一生分の悲しい涙を流し、九子の元に行こうと思ったが行けなかったことで、まだ生きる必要があると感じたのだった。

お墓の裏面の汚れを落とそうと、裏に回って、夢口地面を見て違和感を感じた。

何かそこの土だけが、掘り返されたかのように色が変わっていたのだ。


「日色?」声が聞こえた。

うしろを振り向くと、そこにはあのときから会えなくり、ずっとずっと会いたかった女性がいた。

夢口は驚いて声も出せなかった。

「日色なの?」なおその女性は夢口に話しかける。

「九子?……」夢口は呟くように言った。

夢口の前にあの日いなくなってしまった九子がそのときの姿でいた。

気づけば夢口は泣いていた。そして、九子を抱きしめていた。

九子は付き合っていた同級生の夢口日色が大人になっていることもあり、状況が把握しきれていなかったが抱きしめ返した。

二人は何年も会えなかったが再び会うことができた。

九子はなんと蘇ったのだ。

「私長い夢を見ていたと思ってた。暗い暗い中で。でも日色の声が聞こえて、気づいたらここにいたんだ。」

九子は夢口に言った。夢口はただただ九子に会えることが嬉しかった。

九子からは何年も感じられなかった温かさや匂いや柔らかさを感じられた。


夢口は九子を車に乗せ、二人は夢口が宿泊予定だったホテルに向かった。

怪しむ従業員に堂々と一人予約だったのを二人に変えてもらった。

幸いダブルベッドの部屋だったので変更はすぐにすんだ。

「日色は先生になったんだ。」九子はベッドの上に座り嬉しそうに話す。

「うん、同じ学校で。」夢口は九子の横に座った。

「日色、頭良かったし人に教えるの上手だったよね。かっこいいし生徒にも人気でしょ。」九子は悪げなくいう。

夢口は九子がいなくなってから変わってしまったことは話せず苦笑いする。

「でも、私のことずっと覚えていてくれたんだ。」九子はぽつりと言った。

「当たり前だよ。忘れるわけない。ずっと待ってたんだ。」夢口は九子の肩を掴む。

二人は上で抱擁を交わす。

「今も私を好きでいてくれてる?」九子は上目遣いで夢口を見た。

夢口は九子と顔を近づける。二人は目を閉じ、口づけをする。

夢口は一度も九子を忘れたことはなかった。ずっとずっと好きだった。

その思いが九子に伝わった。二人は涙していた。ずっとずっと二人は愛し合った。

「でも私よく考えたら制服っぽい服装だし、一応未成年だし、しかも今日って本当なら学校あるはずだから、結構まずかったんじゃ。。」

九子はふと言った。ホテルの従業員が好奇の目をしていた気がするからだった。

「教師と生徒の禁断の関係ってやつね。」夢口は茶化して言った。しかし冷静に考えると確かに表沙汰になるとまずいなとも思った。

「本当は同級生なのに。」九子は寂しそうに呟く。

「同級生ではないかもしれないけど、」夢口は続ける。

「私たちはずっと恋人よ。」


次の日、二人は九子の両親の元に向かった。二人は決断していた。

九子の家は山の麓にある塀で囲われた大きな屋敷だった。

夢口が玄関を開けるとそこには九子の母親が出てきた。

「夢口さん、さきほどはお電話ありがとうございます。九子の話ということですが、どうされたんですか?」

「あの落ち着いて話を聞いて頂きたいんですが、九子さんが、、最近家で変わったことが起こったりしませんでしたか?」

「いえ、特には。ですが、そういえば母が。九子の祖母が何か夢を見たと言ってました。」

そういうと母親は玄関に夢口以外の人が立っていることに気がついた。

「信じてもらえないと思います。ですが、九子さんが、あらわ、蘇りました。」

そういうと九子は静かに母親の前に出た。


九子の母親は驚き、言葉が出ないようだった。

「お母さん、」九子が声をかけた。

「九子?いったいどういうこと…?」

夢口はお墓まいりであったという話をしたが、当然母親は納得できないようだった。

何より夢口も九子もよくわかっていなかったからだ。

ガラリと扉が開く音がした。九子の祖母は話を聞いていて、中に入ってきたのだ。

「百合神さまの救済だ。」祖母が言った。祖母は夢の話をした。

夢に百合神さまが出てきたこと。そして、ある迷いしものを救うために九子が再びこの地に降りるということ。

今年の神楽で、三人の巫女が演舞し、百合神さまにとって最高級のお供え物となったこと。

そして、そのお供えは迷いしものの強い思いで発生したこと。その迷いしものを救い出すために、その物に褒美が遣わされること。その褒美とは九子であること。

「そして、私たちはその二人をやさしく見守ること。」祖母は静かに話した。夢口、九子は静かに聴き、母は戸惑っていた。


「でも九子はこの後いったいどうしたら、」母は戸惑うように言う。

「そのことなんですが」夢口は母親と祖母に向かあった。

「私に九子さんをください。」夢口は大きく言った。母親は驚いたが祖母はすでにわかっていたようだった。九子は胸が熱くなった。

「私が彼女を幸せにします。」夢口は頭を地面につけた。

九子の母親はさらに混乱したようだったが、祖母は静かにその佇まいに感銘を受けていた。


「行ってらっしゃい」家族に送り出され、夢口と九子は夢口の住むマンションに戻った。

二人は一緒に住むことになったのである。

九子は家族の助けもあり、戸籍の復活をして、さらには夢口九子として登録された。

今は養子としてだったが、二人は夢だった結婚のような形になったのだ。

二人は確かにミスコンの優勝を通して、思いを家族に伝えることができたのだった。

高校から何年もたったあとだったが、確かにそれは叶った。


夢口は休職空けの学校にも関わらず、ワクワクしていた。落ち着いているように見せていたが心は浮き足立っていた。

「ところで、今日は転校生を紹介します。」夢口は教室の入り口を見て、最も大切な人を手招きする。

「九子さん、入ってきてもらえますか。」

九子が部屋に入ってきた。詩季は心底驚いたし、玲衣も陽芽も驚いていた。

他のクラスメイトは新しいクラスメートが可憐な子で喜んでいた。

そして、夢口だけは本当に満足そうに九子を紹介した。その顔には笑みが溢れんばかりで、周りは夢口先生は休み中に変わったと思った。


「……。九子姉さん、なんで……。」詩季はクラスルームが終わると九子の側に向かった。

「もしかして、しぃちゃん?」九子も大きくなって確信は持てなかったが、かつてのかわいい従姉妹と面影が似た女の子にあったことで驚いた。

二人は久しぶりの再会にお互いを抱きしめた。


九子はまた学校に通うことになったのである。

九子は夢口が担任をする玲衣、陽芽、詩季と同じクラスに入ったのだ。

またこの子と一緒に学園生活を送れる。夢口は心底幸せだった。


このあとも四人と一人は幸せにくらしましたとさ。

おわり

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