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3章 祭りの終わり

ラストステージの会場は大盛り上がりで、勝ち残った数名の生徒たちは全力でアピールをした。

玲衣と詩季の二人は共に手を取り、二人で抱えあったり、それぞれの持ち味を生かしたパフォーマンスをした。

二人の魅力は十分に伝わる内容で、夢口はその姿を目にしてただただ涙していた。


最終組のパフォーマンスが終わり、投票の時間となった。

次々と生徒たちや先生たちが投票箱の中にミスターやミス、カップリングを投票していった。

夢口も投票した。そこにはミスターは玲衣、ミスは詩季、そしてカップリングは玲衣と詩季を書いた。


そしてミスコンの結果発表の時間になった。

候補者も観客も玲衣も詩季も夢口も司会から結果が話されるのを固唾と見守る。

司会はステージの真ん中に立つと前口上を述べた後に本発表の全体的な感想を述べた。

そして、結果が述べられた。

ミスターは玲衣に、そしてミスには詩季が決まった。

玲衣と詩季は驚きながら、ステージの前に立ち、観客に対し感謝を込めて深くおじぎした。

夢口は満足感を覚えていた。私たち二人が達成できなかったことを彼らが達成する、と思った。

そして最後にベストカップリング賞が発表された。

「今年のベストカップリング賞は……、安藤玲衣さんと塔谷陽芽の二人です!!」司会役が全体に伝える声が響き渡った。

なんと、ファーストステージで勢いよく駆け寄る玲衣とその時に安心し、嬉しそうな顔を見せた陽芽の瞬間が多くの観客の心を掴んだのだった。

「なお、塔谷さんは昨日のステージの後に足を痛め、本日は欠席されています。ですので、玲衣さんに受け取ってもらいます。」

司会はそういうと玲衣に賞状と盾を渡す。玲衣は受け取ると観客の方に向かって感謝を込めて大きく手を広げ深く頭を下げた。

玲衣の目には涙がうつっていたし、詩季も涙していた。

一人、夢口は口を広げ呆然とした。体育祭の時に一目であの子たちは私たちの生まれ変わりと思った。

そして彼女たちなら掴んでくれると確信していたのに、一体何が起こったのか。


文化祭が終わるとすぐに玲衣と詩季は陽芽に会いに病院に行った。

「おめでとう。三冠王なんだね。」

陽芽はミス、ミスター、カップリングの賞状を一目見て、玲衣と詩季が取ったものと思った。

玲衣はカップリング賞を陽芽に手渡した。

陽芽は恐る恐る賞状の内容を見た。陽芽は驚きとうれしさが入り混じった顔をして、目に涙が浮かんだ。

「びっくりしたでしよ!私たちもびっくりしたんだ。昨日のステージで与えた印象か大きかったみたい。」

玲衣は笑いながら言った。

「怪我の功名かな。」陽芽は自虐気味に言ったが、顔には笑みが浮かんでいた。

玲衣と詩季は返答に困っていると、陽芽は意を決したようだった。

「詩季、お願いなんだけど、私と玲衣だけにしてくれる?」

陽芽は詩季に言った。詩季は陽芽の想いに気づいていたので、わかった、と言い部屋を出た。

玲衣は胸が高鳴るのを感じた。

「玲衣、昨日は本当にありがとう。倒れた私の元に駆けつけてくれて。それだけで一生分くらいうれしかった。もうこの気持ちは忘れようと思うくらい。」

陽芽は玲衣をじっと見つめる。

「私、本当は最初は玲衣と一緒にミスコン出たかったんだ。二人でカップリング賞を取りたかったの。

黙ってたけど玲衣のエントリーを入れたのは私だったんだ。」

玲衣は静かに聞いていたが、陽芽がエントリーを登録していたことに驚いた。

「あの申し込み書じゃないよ。あれは誰か別の人がいれたもの。多分詩季のエントリーした人と同じ。私は玲衣のプロフィール間違わないよ」

陽芽は真剣な顔をして言った。

「玲衣ってさ、何かみんなに優しいけど、私のこと一番大事にしてくれている気がするんだ。

それも見返りを求めるとかなくて純粋に大事に。」

玲衣は陽芽に近寄り、陽芽の手を優しく包んだ。

「陽芽は特別だから」

陽芽は俯いたが、その顔はさらに赤くなっていた。

「私ってね、いつも肝心なところで失敗しちゃうんだ。玲衣と一緒に出るために細工したり、

 本当は玲衣と一緒に組みたかったのに組めなかったり。」

陽芽の目に涙が浮かんできていた。

「でもね、本当に、本当に玲衣と一緒にベストカップリング取れてよかった。」

陽芽は涙し、玲衣の腰に抱きついた。玲衣も陽芽の体をぎゅっと抱きしめる。

二人はしばらく抱きしめあった。


17時を示すチャイムがなり、二人はふっとお互いの体を離した。

「そろそろ行かなくっちゃ。詩季も多分学校にいる気がするし。」

「うん、、、気をつけてね。」陽芽は少し寂しそうにいった。

「あと、えっと、帰る前に陽芽に言わないといけないことがあるんだ。」

玲衣はそういうと少し恥ずかしそうにもじもじし始める。

「陽芽にだけ想いを伝えさせて、自分の想いを伝えないのはかっこよくないよね。」

そういうと玲衣の顔が真剣味を帯び、陽芽はまた胸が高鳴るのを感じた。

「陽芽を初めてみた時から、私は陽芽に憧れてたから。

 陽芽を見ているとすごく心が温かくなって、陽芽と離しているとすこぐ楽しくて。

 陽芽は私が好きって言ってくれたけど、多分私の方がもっと陽芽のこと好きだから。」

玲衣はそういうと、陽芽を抱きしめた。陽芽は胸が踊るようだった。

「病院から退院したら、きちんともう一度言うけど、私は陽芽のことが大好きです。」

陽芽は胸が心臓から飛び出るんじゃないかと言うくらい心が高鳴った。

「それじゃ。」と玲衣は去っていった。顔には想いを伝えきり、満足したような顔をしていた。

玲衣も陽芽は離れた後、お互いに同じように幸せと自分の思いが成就するという幸せと

いろいろ話したことに恥ずかしさをちょっぴり思った。

そして、次に学校で会う時のことを何よりも楽しみに思った。


二人のいる病室から出た後に、詩季は学校に戻った。

あの人に会いに行かないと、と職員室に向かおうとした。

しかし、職員室まで行く必要はなかった。

片付けられているステージの側で夢口は呆然と立っていたからだ。

夢口は結果を見たあとから、ずっと涙していた。他の生徒先生たちは夢口の振る舞いが過剰だとは思ったが、

昨日の出来事から今日の結果で他にも感動しているのだろうと思ってくれた。

しかし、夢口は彼女たちも私たち二人が達成できないことを達成できなかったことを悲しんでいた。

彼女たちは私たちの生まれ変わりだったはずなのに。

「先生。」詩季は夢口に話しかけた。


「先生はそんなに今日の結果に感動したんですか?」

「ええ、そんなところよ。」

夢口は涙をぬぐいながらそう答えた。

詩季は夢口が本心を語ってないとわかっていた。

「先生は本当は私と玲衣にカップリング賞を取って欲しかったんじゃないですか?」

詩季が言った。夢口の顔がさっとこわばった。

「何でそう思ったの?」

「先生は三人でミスコンの話をしているときに私と玲衣を組ませたがってたから。」

「それは陽芽なら一人でできると思ったからとも言えるじゃない。」

「じゃあ昨日に私と玲衣が病院で棄権しようとしたときに、参加するように強く言ったから」

「それは悔いのの頃らないようにがんばってほしかっただけ。」

夢口は理性的に答えているうちにいつもの冷静なところが戻ってくることを感じた。

詩季は逆に夢口に言いくるめられそうになっており、まずいと感じた。

「……」

「私はあなたたちの今日のバフォーマンスとカップリング賞の受賞の結果に感動しただけ。」

「じゃあなんで、私と玲衣を見る目がいつも暖かいんですか?」

「えっ」

「先生は他の生徒を見る目は冷たいように見えるのに、私と玲衣に優しい気がします。」

夢口は言葉に詰まった。

そのとき、詩季の中で全てが繋がった。

「先生は私と玲衣に別の人たちを重なり合わせていませんか?」

夢口は混乱した。詩季の推理は当たっていた。

夢口は回答を話した方が良いという気持ちと話さないほうが良いという思いが出たからだ。

「先生は私と玲衣を、私の従姉妹の九子姉さんと先生に重ねてたんじゃないですか?」

詩季は夢口に向かって指をさしながら言い切った。


「……。ミスコンの年鑑を見たのね?」夢口は観念したように答える。

「はい。生徒会室で一度見ました。」

「いつ頃から怪しいって思ったの?」

「私と玲衣がエントリーしていないときにエントリーされていた時からです。」

「あれは陽芽がやったのかもしれないじゃない。」

「陽芽は玲衣をエントリーさせるならわかりますが、私をエントリーさせるのはおかしいです。」

「どうして?」

「それは、、、乙女の秘密です。」

「なんとなくわかってたけど、そういうことね。」

夢口は詩季が九子のように賢く、話す姿が同じように落ち着いているが熱のこもっていることを感じた。

夢口は全てを話すことを決心した。

「ちょっと付き合ってほしいところがあるんだ。」


夢口と詩季は屋上に向かった。

屋上は片付けが済んでいたので、人はいなかった。

「詩季は九子のことどう思ってたの?」

「やさしい姉のような人でした。困っているときや泣いているときはすぐにそばに寄って泣き止ませてくれました。」

「本当に優しい子だったわ。」

遠くを見るように夢口は言った。夕暮れ時で、空は美しく赤くなっていた。

「私と九子は……。付き合ってたの。」

夢口は詩季に向かっていった。その目は涙ぐんでいた。

「私は高校からの入学組でね、なかなか仲良くなれなかったときに、この屋上で一緒にご飯を食べてくれたのが九子だったんだ。」

夢口は二人のことを話した。

夢口は九子と一緒にいるうちに気になってきたこと。九子はそもそも夢口のことを一目惚れしたようだったこと。

「今となっては面影ないかもだけど、これでもこの学園の王子様だったのよ。」夢口は照れ笑いしながら言った。

二人が二年生になったときに周りには秘密に付き合い始めたこと。

学園祭のミスコンに出ることを決めたこと。

カップリングで優勝して、家族含めて周りにも付き合っていることをカミングアウトしようとしたこと。

「どうして、家族にまで伝えようとしたんですか?」詩季は夢口に尋ねた。

「まだ高校生だったけど、本気で好き合っていて、将来を共にしたいと伝えたかったから。

私は直接言ってもいいって九子に行ったんだけど九子がそれだと伝わらないって。」

詩季は厳格だった九子の家族のことを思い出した。

そして、ミスコンに出るために玲衣と詩季のように日々練習をしたこと。

ここまで話して、夢口はまた空を見上げた。陽は落ちかけていて、山に隠れるところだった。

「九子と私はこの屋上でよく練習してたの。」

夢口はそういうとその場で華麗にステップを踏む。

「九子姉さんから聞いたことありました。屋上で友達と一緒にいる時が一番楽しかったって。」

夢口は足を止め、詩季を見た。その顔は苦悩に歪んでいるようだった。そして夢口はミスコンの話をした。

ミスコンに近づくにつれて、九子に疲れが見え始めたこと。

九子はミスコンまでだからと無理をして、ミスコンまで練習し続けたこと。

そして当日のこと。

「九子はミスコンの当日は顔色がすごく良かった。本当に輝いてた。」

夢口は目から涙を流しながら語る。詩季は強く心を動かされることを感じた。

「パフォーマンスも完璧だった。私たちの息はぴったりだった。」

夢口は屋上から外のグラウンドの景色を見た。詩季もつられてグラウンドを見た。

「昨日、陽芽さんが倒れたとき、私は心臓が止まるくらいびっくりした。九子もそうだったから。」

大きく息を吸い込むと夢口は話を続ける。

「九子は私たちのパフォーマンスか終わって、舞台裏に戻ろうとしたときに、急に倒れたの。

 私はすぐに駆け寄って倒れる前に支えた。九子には傷ひとつかないように支えたわ。

 でも、九子は苦しんでた。本当に。私の支える側で苦しそうにしてた。」

夢口は苦しそうに語る。

「すぐに救急車が来て、病院に行ったけど、そのときには九子はもう」

夢口はその後を続けた。

次の日夢口はラストステージには参加しなかったこと。

にも関わらず、夢口が優勝したこと。九子を支える姿、話が美しかったからだということ。

しかし、九子には票があつまらなかったということ。そしてベストカップリングは惜しくも別のミスの優勝者の組みに負けてしまったこと。

「私はその後からずっとずっとそのことが忘れられないの。今でも彼女のことを想ってる。」

夢口は詩季に向き、詩季と目を合わせる。その目は悲しんでいるようにも見え、微笑んでいるようにも泣いているようにも見えた。

「そして、私は生まれ変わりを信じているの。

あなたと玲衣さんは私たちの生まれ変わりなの」

「……」詩季はどういうことかわからず回答に困った。夢口の様子もおかしく下手に言えないとも思った。

「私はこの学校に赴任したとき、運命を感じた。ここには何かまだあるって。

そして、今年あなたたち二人が高等部に入ってきた。

一人はクールな感じで、いうなら私の生まれ変わり。そして、もう一人は九子と同じ苗字を持つ、可憐な子。

あなたたちが屋上で遊ぶ姿を見て、私はリバースを感じた。そして今年の体育祭で確信を持ったわ。」

「あなたたちは優勝すれば私と九子が達成できなかったことが達成できる。そして私は九子の元にいける。」

夢口は柵を乗り越えようとする。詩季はこのあとの起こることがわかり、夢口の元に走り寄る。

「本当に悲しいことにあなたたちは取れなかった。でもね、私はもう限界なんだ。」

夢口は柵を乗り越え、飛び降りようとした。空は暗くなり、昼間にあれほどうるさかったグラウンドも静まり返っていた。

詩季はこの距離では間に合わないと思っても必死で走った。詩季の好きな姉が愛した人をここで失うわけにはいけない。

夢口の体が宙を飛んだ、がその腕は玲衣が掴んでいた。

玲衣は詩季を探して屋上まで来ていて、二人の雰囲気がおかしいことに気づきずっと影から見ていた。


「あんたは大馬鹿だ。」玲衣は夢口に怒鳴りつける。

夢口は玲衣に力なく支えられている。詩季も駆け寄り、両の腕を二人で捕まえている。

「あなたの愛した人はそんなこと望んでいない。」玲衣はなお強く言う。

「私ももし陽芽が死んだら悲しい。でも陽芽なら死んでほしいとは絶対思わない。

 あなたも自分が死んで、九子さんに死んでほしいの?」

夢口は泣き崩れた。詩季は夢口の側で夢口の手をやさしく握っていた。

夜の空は晴れ渡っていて星々がきらきらと輝いていた。

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