人類絶滅宣言
一字下げ方法分からなくて半年放置した時間を返して(ガチ泣き)
もうじきロボット出せそうでうずうずしてます。
残念だけど、この小説に可愛い少女は出てきません。
ユースティティアも実年齢換算でっ(首の折れる音)
《気を取り直して、この依頼について話そう》
「………」
ユースティティアの話す人工太陽の重要性に、腹を括り、静かに次の言葉を促すシュテル。
《さっき言った通り、今や人類の生存に欠かせない人工太陽だけど、その人工太陽を破壊しようとしている過激な集団を相棒は知っているかな?》
「それは、反社会的勢力の『解放者』って集団だろ。ニュースの話題といえばそいつらか、地層の移動予報くらいしかないだろ」
《ああ、そうさ。『解放者』が人工太陽を支える柱か、機動車部分を壊そうとするから、僕と相棒でそれを防ぐのが仕事だね》
旧型人工太陽を支える支柱、それを失ったらどうなるのか、爆発的なエネルギーの奔流に飲み込まれたらひとたまりもないなとシュテルは思った。
民衆に過激な思想を与える可能性の考慮からか、情報規制の強い現代では、人々が社会の動きを知ることは滅多に出来なくなった。
だが、その限られた情報を報じる手段として近年になりニュースが復活し、一般人の貴重な情報を得る機会が生まれている。
反面、ニュースを報じる機関は全て『大企業』直々の管理の元で運営されているため、結局得られる情報と言うのは敵対企業へのささやかなプロパガンダや、酷く捻じ曲げられた形で伝えられる事件しかないのだが。
そのような思惑塗れのニュースの中で、近年異彩を放つ内容がある。
『テゾブロス』と『ネシキナル』、両社双方の『大企業』が口を揃えてニュース越しに批判している、大規模な反社会的勢力。
それが、反社会的勢力『解放者』である。
何時からあるのか、その活動目的すら不明な『解放者』は、シュテルの知る限りで、五・六十件の重武装テロを起こし、百五十件のストライキや抗議デモなどの反社会活動に関与しているとされ、毎週『解放者』絡みで逮捕者が発生している。
そのような物騒な過激派集団であると認識していた。
悪い意味で有名な、それもある程度武力を保有している集団が今回の相手になるのだ。
「ニュースでも度々重要施設の破壊を試みたって聞くよな……依頼でも注意警告していたってつまり……」
《間違いなく、今回の依頼に出張ってくるよ。それもどちらにもね。》
「でも、旧型人工太陽と新型人工太陽の両方を堕とすのか? 幾ら武装した犯罪集団でも、普段から守られている所に加えて俺や俺以外の優秀な『APST』乗りが出動するじゃないか」
シュテルが楽観視するのも無理はない。
何せ、幾度となく『解放者』は人工太陽を襲撃し、そのどれもが未遂に終わり、NA部隊による鎮圧がなされているとニュースで報道されているのである。
NA部隊に押さえ付けられる程度の戦力しかない集団が、『APST』の導入によって一際厳重になった防衛網を突破して、人工太陽を堕とす光景を想像できないのだ。
《そうかい。相棒は僕に散々な目に遭わされて、まだ警戒心が低いんだねぇ》
携帯端末の画面で、溜息を吐く仕草を見せるユースティティアに、シュテルは嫌な予感を感じる。
「まさかと思うが……『電子生命体』、お前の憂慮の原因って……」
《うん、今回だけに限るけど。『解放者』はかなり手強い相手になるね》
赤い瞳を細め、口角を吊り上げて、ユースティティアは断言した。
くすんだ灰色の瞳を驚きで広げるシュテルは、彼女が認めた事で、厄介の内容をあらかた察した。
「それは、また、どうしてなんだ?」
《依頼内容にあった『解放者』に関連する事件を覚えてないのかい?》
「武器・弾薬等の生産工場の襲撃だったな」
《あれ、第三世代以降の『APST』も所属不明の集団、つまり『解放者』に奪取されているんだよね。しかも丁寧なもので、組み立て完成した機体を二十機まるまるだよ》
「とんでもない内容隠したな『ニュートラルシステム』!?」
察していた以上の大問題に、頭を抱えるシュテル。
依頼では有耶無耶にされていた部分が、明らかに新人パイロットに任せるべきではない秘密だった衝撃は大きい。
地下に住処を移してから、無人兵器や特殊スーツ等の開発著しい兵器分野で、未だに主力である『APST』。
シュテルが乗る様な戦車やNAを対象にした第一世代型では無く、その二つ先の性能差がある兵器を二十機も『解放者』の手に渡ったのだから、ユースティティアが余裕を見せずシュテルに正直に話したのもよく理解できる。
《最大の問題である『APST』強奪は、二大企業共に過失を晒したくないと判断して、少し強めに隠蔽したらしいよ》
「パイロットには認知させとけ……!」
《だから、この依頼のために大勢の『APST』パイロットを雇ったんでしょう。どうやら他『APST』パイロットには通常の依頼として斡旋しているみたいだけど》
「……うん?」
強制依頼で断れない自分と、通常の依頼として拒否可能な他パイロットの扱いに、操縦試験の裏事情が脳裏に過ぎるシュテル。
《しかも、長年『APST』パイロット稼業を続けている人には分かるように伝えられているみたいだよ?》
「要はベテランでも嫌がる仕事だよな? 俺また殺されそうになってる気がしているんだが」
事故が目的なのか、そうユースティティアに尋ねたシュテル。
すると、ユースティティアはその線は薄いと否定する。
《うーん……『ニュートラルシステム』から依頼されているけど、相棒を試すことは嘘ではないよ。残念だけど相棒は運が悪かったみたいだ》
「何だそれ……」
具体的な内容をはぐらかされたが、シュテルは地面のシミにさせる意図では無いと分かり安堵した。
《強制依頼だから、その格上の機体に立ち向かう必要はある事を理解するだけで良いよ。過度の深読みには注意しなよ?》
「まあ、わかった」
恐らく、この依頼を指定された理由をユースティティアは知っている。
だが、それを話す必要は今無いのだろうとシュテルは判断し、それ以上の詮索を止め、了承した。
《『解放者』側は、その強奪した『APST』二十機を全て投入するだろうけど、一方に集中して襲撃する可能性は低いから、二手に別れて十機づつで此方に来るだろうね》
「片方だけを早めに潰そうとしないのか?」
《あの反社会的勢力の目的上、どっちの人工太陽も破壊しようとするよ。増援を呼ばれる前に、二方面から一緒に攻撃して混乱させる筈さ》
「目的?」
《ニュースは社会不安を煽る情報を送れないから、相棒は知らないようだけど、『解放者』が声高々に掲げる目的があるんだ……そう――――》
――――地底に逃げた人々を全て根絶やしにする。物騒な目的がね。
それはとんだカルト的な過激派集団だな。
頭のネジが吹き飛んでいるような目的に、シュテルは片手で自分の茶髪を抑え、止まらない顔の引き攣りを更に強めた。
反社会的勢力『解放者』
彼らが集う隠れ家は、『大企業』との密かな交渉により提供され、その場所は黙認されている。
何故ならば、彼らが行ったテロ行為などの反社会活動は『大企業』側から、敵対企業や派閥への圧力行為として望まれて行っていた為である。
表では二大企業の唾棄すべき集団と言われているものの、裏では手を汚さないで済む物理的手段として重宝されている。
だが、その企業の首輪付きだった『解放者』の隠れ家で、様々な場所で諜報活動をしていた者や、反社会活動を表立って実行していた者まで、全『解放者』構成員が集い、人類へ牙を突き立てる時を待ち望んでいた。
「―――諸君、同志諸君」
『解放者』の構成員達を前に、齢を重ね意志を強めた声を上げ、彼らに語る男が居た。
肌の皺は数え切れず、背は以前より縮み、肩口で纏められた白髪は煤がかった、後先短い老人の姿だったが、老人のような男の瞼はしっかり開き、黒い瞳には覚悟の輝きに満ち溢れていた。
「我々は短くも長き日々を統治者気取りの資本主義者の下に潜み、意味の無い命令に従い、多くの同志を見捨てるような形で失ってきた」
拳を握り締め、怒りによる無表情を晒し、粛々と語る老人。
彼の言葉は大切な友人、恋人、家族を捨て駒にしてしまった『解放者』達への後悔と懺悔を含んでいる。
「我々は、彼らの崇高な犠牲を糧に生きる罪悪感を抱いていた。そして漸く、我々が本来の使命を果たす日が訪れたのだ」
次第に言葉の一言一言に熱が籠り、それを聴く『解放者』の構成員達にその炎が伝播していく。
針で刺せば破裂しそうな高まる緊張感を前に、老人は籠らせた熱を霧散させ、冷徹に宣言する。
「私、デミナント・ニグレは改めて宣言しよう―――」
―――必ずや巨大暗窟の朝を堕とし、地下で停滞の日々を送る人類を、絶滅させると。
『解放者』指導者、デミナント・ニグレから厳かに告げられた『人類絶滅宣言』。
雌伏の時を終えた者たちが、静かな雄叫びをあげデミナントを称える。
「ミーシャ……ワシが青空を見せてやるからな」
構成員の誰にも聞こえない様に独り言ちるデミナント。
信念を持った老人の煌めく黒目には、二十一機の巨人が映されている。
お爺ちゃんは孫娘思いの善人です。
設定関係〜組織・団体編〜
『解放者』
デミナント・ニグレが率いる反社会的勢力
『企業戦争』終結と一緒にデミナント自ら組織を発足した
敵対している二大企業を睨む振りして握手を交わす手腕により、他の反社会的勢力よりも長続きしている
二大企業が人工太陽の交換に躍起になっていた頃に双方の系列企業から製造していた第三世代『APST』を奪取し、付けられた鎖を引き千切って動き始めた
デミナント・ニグレはスパイに動きを察知されていることを気付いているが、止まらない
また、彼を指導者として尊敬する構成員達に迷いはない