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APST:BM  作者: ロボゲニウム
[01]地下世界より
3/9

赤熱の壁

ゆっくり投稿第三回目

誤字脱字妙な表記等ありましたら(連載している場合)ご連絡お願いします。


俺のこの手(銃口)が真っ赤に燃える!

《残り時間二分だ》


「――了ぉぉ解ぃぃっ」


『APST』の搭乗者が何かを思いついてから、短くない時間が経過したものの、未だに彼の目論見は上手く行かないでいた。

 だが、今まで逆脚NAの立体的な立ち回りに翻弄され及び腰だった『APST』が、被弾を気にせずに攻勢に転じた事によって状況は変化しつつあった。


《損害率四十パーセント、キケン、キケン》


「分かった上での行動だから実質被害なしでっ」


 まず、逆脚NAの正確なミニガン射撃によって『APST』は半壊まで痛め付けられていた。

『APST』の搭乗者自身は理解した上での守りを捨てた攻撃であると半ばやけになりながら叫んでいるものの、小型ミサイルの存在を思い出し使用開始から数十秒後に弾薬の半分を残して破壊され、二頭身ボディ特有の大きな関節部を保護していた円形プレートは大部分が失われ、何発かプレートのとれた箇所へと当たり『APST』の動きは鈍くなっている。


「だけどっお陰でっ……動きやすくっ……! なったからな!」


  次に、逆脚NAの搭載する弾薬が尽きかけ、相手が慎重に射撃するようになり弾幕を張らなくなった。

  初撃の不意打ちを逃れ、残された逆脚NAは捨て身で攻めてきた『APST』の動きを自暴自棄になったと判断し、ミニガンを絶え間なく連射させたのだが、『APST』は突っ込みながらも左右へブースターを吹かせ、ステップを踏むかのように回避を行い、殆ど被害を出せないまま、ミニガンを連射出来る程の弾数が無くなっていたのだった。

  必要以上に回された砲身に判断を間違えたと知った逆脚NAは、狙いが付けやすくなるまで撃とうとしなくなり、それが逆に『APST』の回避成功率をあげる要因となっていた。


 被弾して動きが悪くなったが弾薬は未だあり攻めながらも何かを狙う中量二脚型『APST』。

『APST』の光弾を跳躍回避で躱し、被弾無しだが残弾は尽きかけ、撃つタイミングを読まれ回避される逆脚NA。

 双方共に悪化した状況下で長丁場になるかと思われたが、これは制限時間のある試験であり、その終わりは既に迫っていた。


《残り一分だ。 そろそろ決着をつけろ》


「ああもうそんな時間か!」


試験官の落ち着いた声と裏腹に、『APST』の搭乗者は焦りを孕んだ叫びをあげる。


「あと少しっ……!」


時間は刻一刻と減っていくが、いつまで経っても変わらない状況を打破するために、『APST』の搭乗者は死に物狂いで右腕部に構えた光学SAライフルで()()N()A()()()()()()()


「やっぱそっちロックかけた時察知できるだろ? 結構ギリギリに照準合わせてるんだけどなぁっ!」


『APST』の搭乗者はひたすらに飛び回る逆脚NAを追い駆け、ミニガンの射撃を躱し、特定の位置に来ると決まって逆脚NAの後ろに光弾を着弾させていた。

 それがどのような意味を持つのか、それは試験という場で『APST』を操る搭乗者と、赤熱した壁だけが知っている。


 


「初動の動きには驚かされたが、残念ながら失格だな」


 所々の装甲がボロボロになった二頭身の中量二脚型『APST』。

 その機体が、牽制なのか攻撃なのか、光学SAライフルを見当違いの方向に撃ち、無差別に射出される光弾に当たらまいと無傷の逆脚NAはドームの中を縦横無尽に動き回り、ミニガンを撃つタイミングを見計らう。

 二機の闘いをモニター越しに眺めていた試験官は『APST』の搭乗者をそう評価する。


「ブーストを小刻みに入れる事で、左右へ機体を揺らせながら前に詰めるか……移動制御は中々出来る。しかし敵にロックオン範囲内に捉えられていない……攻撃技術は並以下だ。しかも自動発射の誘導ロケットすら満足に扱えない様ではな……」


『APST』のパイロットになる為に試験を受けたいと、個人で企業の依頼金に匹敵する金を用意した彼、シュテルという者は操縦技術が歪であった。

 射撃精度の低さは余りにも酷いものだが、機体の移動制御に関しては並の『APST』乗りと比べ物にならない腕前だ。

 幾ら『APST』乗りといえど、敵に接近しながらロックオンされ撃たれた偏差射撃を回避できる者は滅多にいない。

 いたとしても、それは死地であっても奇跡的な幸運が続き命を落とさずに済んだ一流のパイロット達が持ち得る技術であると試験官は知っていた。


「ふむ、あれ程近距離ですら外すとは酷いものだ。 あれではまだ一般兵の方が役に経つだろう」


 だから、その歴戦のパイロットと同じ移動制御の技術を持ちながら狙い撃つという簡単な攻撃すら苦戦している『APST』の搭乗者――シュテルに試験官は違和感を感じながらも、戦闘下手な彼を失格と宣告するまでの、短くも退屈な時間を如何に過ごそうかとモニターに目を向け……


「……む? なんだこれは?」


 試験官は自身が見ている光景を把握出来ずモニターから目を離すことが出来なかった。

 残り時間:00:17と左上に表示されたモニター。

 そこには壁に突き刺さった一本の鉄棒(ミニガン)を足蹴にして逆脚NAより高く飛び上がり光弾を放ち続ける二頭身の人型兵器が映っている。


 試験に使われている施設の壁は、実弾の物理的破壊や光学銃の高熱からの被害を最小限に抑える事を前提に造られている。

 これは主に外側から表層・中層・深層の三層で構造されており、重金属を用いた合金で覆われ外部からの攻撃を防ぐ表層、強化膜による耐熱・耐衝撃性を極限まで高めた中層、柔軟性の高い合金によって内部からの被害を軽減する事に特化した深層となっている。

 この構造を持つ壁に、ミニガンのような物体が突き刺さる事は一度もなかった。

 もし何らかの過程の中で、偶然施設内部の壁に激突したとしても深層の合金で衝撃を吸収された上に、重金属の合金より硬いとされる中層の強化膜の貫通に成功しなくてはならず、結果壁の一部に強化膜が見える穴が出来るだけだろう。


 では何故、ミニガンが『APST』に踏み台にされても問題なく耐えきるまでに突き刺さったのか。

 それは『APST』の武装に理由があった。

 

『APST』が装備しているTS-HESAR-03、つまり光学ライフルと呼ばれる武装は、『APST』の圧縮型ジェネレーターで生成されたエネルギーを、指向性を持たせた熱エネルギーに転用し、可視光線として放ち、着弾箇所を高熱で焼くメカニズムだ。


 着弾時に内蔵した炸薬が起こす化学変化が攻撃力を上げる弾や、直接運動エネルギーをぶち当てるような弾とは違い、純粋にジェネレーターから供給されたエネルギーを高熱として発射するために弾薬は使わない。

 代わりに熱が籠りやすくなり使い捨ての冷却機関が必要になるので、冷却機関の寿命が装弾数としてカウントされる。


 冷却機関が使い捨てなのは、光学銃の発射時に発射される弾の熱エネルギーの一部が冷却機関によって減少し、使用を重ねる毎に段々とそのエネルギー減少率が増加していくからで、現在の技術でも改善されていないことが原因である。


 以上のように、光学銃は実弾銃より物理的衝撃に耐えやすい構造を持つが、ジェネレーターの生成エネルギー量と発射時のエネルギー減少率によって威力が変動する弱点がある事が知られている。


 TS-HESAR-03は『APST』黎明期に開発された光学SAライフルだ。

 光学銃としてはエネルギー減少率も高く、一発で逆脚NAの装甲を貫通する事すら出来ない程に低威力だが、冷却機関の摩耗が極小に抑えられ装弾数は非常に多く、現代の光学銃に比肩する頑丈さがある。


『APST』の搭乗者は、この武装を利用して壁にミニガンを突き刺した。


「この壁金属製だから熱で柔くなるだろっ!」


 中量二脚型『APST』と逆脚型NAの戦闘している施設、その壁の深層は金属である。


(今ので五発目だぞ!? まだ必要なのか!)

 

 苦労して狙った場所に着弾したのを見て、『APST』の搭乗者はディスプレイ越しの景色に心の中で苦しい悲鳴をあげる。

 逆脚NAの後ろの()()()()()()()()()()()()()()()()()は、依然として熱が必要であると『APST』の搭乗者に理解させられ、疲弊が隠しきれない。


 ただ、一点のみに集中して、TS-HESAR-03を撃ち、同じ場所へと高温の弾を着弾させ、深層の金属壁を赤熱に染め、溶解一歩手前まで変化させようとしているのだ。


 非効率的だが、それしか勝ちの目は狙えないのだろうと、APSTの操縦士は思っていた。


「ちょっと待てそこに飛ばれると面倒なんだよなぁっ!?」


 自身の背後へと跳躍しようとする逆脚NAの動きに叫びながら、逆脚NAの回避方向を、赤みを帯びつつある壁の方へと誘導させるため、横へと移動し、光学SAライフルを撃ち突進する『APST』の搭乗者。


 積極的攻勢に出たのは『APST』の搭乗者がNA側に気付かせないためのフェイクであり、NAと試験官に自棄になり突撃する『APST』と誤認させることにより見事に気付かせないでいた。


「っっっよし来た六・七発目連続ヒットォ!」


 そして逆脚NAを必死に誘導した先で金属壁に連続着弾をさせ、耐え続けていた金属壁に限界が訪れる。

 同じ場所に高熱のエネルギーを着弾させ続けた結果、深層の金属壁のその部分のみではあったが、溶けかけてどろりと赤く輝き始めた。


「不意打ちして悪かったが更に迷惑かけるぞ!」


 赤熱化した壁目掛け、『APST』の搭乗者が目を付けた「それ」、つまりミニガン(逆脚NAの残骸)を『APST』が基本的に備えているマニュピレーターアームで保持し、突き刺した。

  深層の金属壁は本来の役割を失い、無抵抗でミニガンを通過させた。

 更に深層を突破した後の防壁となる中層の強化膜を()()貫通し、ミニガンは深々と壁に抉りこんだのである。


「さっきから虫みたいに飛び回りやがって! 反撃の時間だ!」


 突き刺したミニガンは『APST』の短い片脚で踏みしめるには砲身が細過ぎた、しかし『APST』は屈伸運動のような動作からジャンプした後、難無くミニガンを片脚で蹴りだし、もう一度飛び上がる浮力を得いていた。


《……む? なんだこれは?》


「これで最後おおっ!」


『APST』の鈍色の右腕に装備されたTS-HESAR-03が、二段飛びを決め上から見下ろせるようになった逆脚NAに向けられ、何度も光弾を撃ち放つ。

 トップアタックを決められた逆脚NAは、回避を試みるもより上空からの連射に為す術なく沈められ、沈黙した


 もしも『APST』の搭乗者が最初の不意打ちで一機目の逆脚NAを倒せなかったら。

 もしも深層金属壁の一点に光学SAライフルの弾を当て続けられなかったら。

 もしもミニガンを突き刺した先にある中層強化膜が()()()()()()()()()()()()()()()()

『APST』の搭乗者がその『もしも』の可能性を一つでも知っていれば試さなかったであろう賭けは成功し、彼は勝利した。


《……残り時間十五秒、全撃破を確認。……合格おめでとう》


「っっし!」


 困惑の混じる声ながらはっきりと結果を告げる試験官の言葉に狭いコクピットの中で小さいガッツポーズを決めた『APST』の搭乗者シュテル。

 彼はこの日、全てを対価に挑んだ『『APST』パイロット適正試験』に合格しパイロットとして認められた。



設定関係〜武器〜


TS-HESAR-03(光学SAライフル)

文中表記ブレブレな近未来武装。

SA(セミオート)って一発づつ打ち出す銃だと認識している。

ビーム兵器の現実的な扱いってどうなるん?って思って色々見てみたけど、余計に混乱するだけだったのでシンプルに「撃つと滅茶苦茶砲身が熱くなる」「冷やすための装置が『弾薬』扱い」「ジェネレーターからエネルギーを直接持ってきて撃ち出す」と設定。

威力低い光学銃扱いだけど、それでも装甲を溶かして焼く高温があるので一般的な武装としては十分強力。


当作品の光学系武装は恐らくあまり正しくない科学知識(中学レベル)の元で生まれたので、ズレている感が否めない。


参考:ACシリーズ 機動武闘伝Gガンダム『ゴッドフィンガー』 ガンダムオンライン


NO-SML-05(小型ミサイルランチャー)

武装被害者の会、代表就任。

数十文字で退場させて本当ゴメンよ……

起動時、火器管制システムによって対象を自動ロックオン、即発射し追尾するタイプのミサイル(予定だった)。

これ主人公(APST乗ってた彼)が狙われたら避ける以前の問題じゃねえと泣く泣くAC仕様へ、結果ちょっと弱体化して見事に爆散った。

小型といえど鉄筋コンクリート仕立てのビル程度なら全壊出来る破壊力はある。


参考:タイタンフォール2 ACシリーズ


ミリタリ詳しくないので許してくだしぁ

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