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APST:BM  作者: ロボゲニウム
[01]地下世界より
2/9

試験開始

ゆっくり投稿()なので気長に行きましょう


どうも、投稿から半年経過しても機体の違和感に気付けなかったマヌケです。

胴体が小さいと手の生えたスラッピー完全体じゃないか……

《――ザ――ザザッ――試験内容は、実弾を用いた敵兵器二体の無力化だ》


「……了解」


 埃の詰まったスピーカーから伝えられる、雑音混じりの通信者からの真剣な声。

 ただ搭乗者を防護するのみに特化された一人乗りの狭い無骨な操縦席の中で硬質な座席に身体を預け、男は自らの手足となる人型兵器――第一世代の『APST』を戦闘用システムへと切り替える。

 搭乗者の乗る『APST』はボディから武器まで全てをネシキナル系パーツで構成された中量二脚型だ。

 被断面積の削減を目指し小さくなった脚部パーツが印象的な、二頭身の機体。

 各関節部に丸いプレートを貼り付けたような愛嬌のある姿でありながら、兵器特有の武骨さも持ち合わせた人型兵器は、搭乗者の命令に従い頭を上げた。


 ここは、地下世界(アンダーグラウンド)の都市『ダイブルア』にある実戦演習用施設の中。

 『大企業』の勢力とならない中立組織――ニュートラルシステムの管理下に置かれている場所。

 男の目的は、この場所で特別に行われえる『APST』操縦試験を突破することだ

 ニュートラルシステムの存在さえ知らなかった


《戦闘モード……キドウ》


《ハイサイクルジェネレーター稼働、ノーマルジェネレーターヲ排熱システムニ使用》


旧型特有の、素直な汎用無人格型AIが搭乗者の指示を受け取り、平常時用の安定型ジェネレーターから莫大な電力を生み出す戦闘用の圧縮型ジェネレーターへと切り替えるシークエンスへと移行した。


《内部へノ電力供給開始》


 今まで最低限の発電しか行われず、非常灯並の弱々しい光源のみで陰鬱としていた操縦席内部にようやく電気が回り、搭乗者は自身の手を観察できるまでに明るくなる。


 だが、そこは、薄い鉄板を貼り付けられた隙間からの景色を頼りに、狭く密閉された球形の操縦室の内部。

 暗い操縦席が急に明るくなると、非戦闘状態の灯りがない暗さに馴れた搭乗者にとって、事故の元であった。


「ッ……!」


 内部照明だけでなく、外部の光景をリアルタイムで映しだす全面モニターまでも起動し、搭乗者はフルフェイスヘルメット越しであると言うのに耐え切れない眩しさに顔を顰め、反射的に目を塞ぐ。

 操縦席に付いた明かりと外部モニターの光量が高すぎて、視界が潰されたように感じたのだろう。

 特に『APST』の内部照明よりも明るい全面モニターはその仕様上、『APST』の各所に設置されている外部カメラからの映像を単純に反映している仕組みなので、外が明るければ明るいほど明度はより高くなる。

 第一世界に搭載されている外部モニターの明度調整は基本的に不可能だ。

 それを理解している搭乗者は微妙な表情を浮かべながらも徐々に明るさに視界を慣らしつつ、各武装の起動を始める。

 

「腕部武装を起動してくれ」


《右腕、『TS-HESAR-03』……正常ニ動作。残弾300》


 右腕部に携える大型(と言っても『APST』基準ならよくあるサイズだが)光学セミオートライフルも電力供給がなされ、安全装置の解除と整備チェックの後にモニターへ残段数が表示される。


「サブウェポンの起動も頼む」


《肩部、『NO-SML-05』……正常ニ動作。残弾60》


 左肩に搭載した小型ミサイルランチャーも、光学ライフル同様に問題なく稼働した。


「……ここまで来たのか」


 搭乗者の表情はフルフェイスヘルメットを装着している為窺い知ることは出来ないが、ぎこち無い動きで連絡をとろうとしている姿から、緊張していると分かる。


「――こちらシュテル、戦闘用システムへの移行を完了した」


《―――ザザッ――了解した――今回の試験は特例であり、君の乗る『APST』に至っては通常時に行われる整備を一切してない状態であり、また試験用NAに搭載されている火器は実弾だと改めて警告しておく――つまり君に失敗は許されない。いいな?》


「……ああ、何度もしつこく言われてる」


 シュテルと名乗った『APST』の搭乗者の連絡を受けて、試験官が応答する。

 厳しくそして無慈悲な条件付けであることを再確認させられる試験官の言葉は、搭乗者の緊張をより高めるものとなった。

 蓄えてきた財産全てを対価に手に入れたチャンス、これが1度きりだと搭乗者ははっきりと告げられていた。

 故に、搭乗者はこの局面でしくじる訳にはいかない。


「……落ち着け、焦りは良くない。父さんもそう言っていた」


 その後小銭をぶちまけ、慌てて落とした小銭を拾おうとして壁に激突した父には呆れたよなぁ。


 諸々の事情で会えない父を思い浮かべ、張り詰めた心を静める。

 自身の緊張を和らげなければ失敗は確実だと考えているからだ。


(身体は熱を込め、脳は常に冷やし続けろ)


(そうイメージすれば……全く問題ない……だったっけ?)


《――では、試験用NAを投入する。 AI搭載型なので遠慮なく戦え。君の機体の稼動限界に気おつけながらな》


  先走る気持ちを抑えたその時、『APST』の視線の先にある向かいのゲートが開き、二体の兵器が姿を現す。


 兵器の総称は『Numerical・Adjustment』略称は『NA』

 その意味は『数揃え』である。

AIを搭載し行動させたり、直接乗り込み操縦する事が出来るものの、操作性においては『APST』に劣る。

『APST』の廉価版とした名目で生産されたが、技術の進歩に伴いその性能が第一世代以降の『APST』に比肩する強力な機体も存在している。


 どちらも本来は夜間に活躍するであろう黒色の都市迷彩のペイントを塗布され、小型の戦車に通常と逆方向に関節が曲がる逆脚を拵えたような、つまり不細工な恰好だ。

 逆足タイプは跳躍力と着地後の安定性を活かした縦の動きを得意とする機体が多い、つまり激しい動きで相手を翻弄するコンセプトで生まれたNAだと『APST』の搭乗者は判断した。


 更に詳しい情報を得るため『APST』の搭乗者は二機のNAの武装を観察する。

 戦車を流用したと考えられる胴体部の中央、そこに鎮座しているのは砲塔は安定性・連射性の高いチェーンガンだ。

 正面から挑むとなると、いくら頑強な『APST』であっても装甲を蜂の巣にされる威力がある。加えて、此方よりも確実に高く飛ぶ(・・・・・・・)であろう相手が後ろに回り込んで挟み撃ちを仕掛ける可能性も想定出来た。

 ただの砲ではなく、弾詰まりや故障を起こしにくいしにくいチェーンガンを用いることで逆足の特徴を活かしているのだろう。


 一機でも相手するには困難を窮める。


それが二機という事実に、またそのような相手を『APST』どころか搭乗型兵器に()()()()()()ばかりの素人が挑んで勝たなくてはならない。

 絶望的な事実に『APST』の搭乗者は苦笑する。


「この程度突破出来ないなら、パイロットの適正はないと言うことだよな」


 せめて、()()()()()()()()彼女の手助けがあれば、とこの場所に来てから姿を隠した協力者を思い浮かべ、再開した時はあの赤目をどうやって困らせてくれるかと苛立ちが募る。


――大丈夫だ、相棒(バディ)なら問題ないよ。


 そう悪戯っぽくニヤつく赤髪赤目の少女を思い出し、不快げに頭を振り、真剣に目の前の光景へと集中して――――


《――ザッ――それでは、開始する――》


(見様見真似訓練なしの一発勝負だっ!)


 試験開始の合図がかけられた刹那、萎びた褐色の双眸に捉えた獲物を仕留めるように、男の操る『APST』は短い腕を勢い良く前に突き出し、光学SA(セミオート)ライフル『TS-HESAR-03』をNAへ向けて、狂ったように引き金を引いた。

 

「伊達に操縦する光景だけは何度も見ている(・・・・・・・)からな!」


 『APST』の搭乗者は確かに今この時まで兵器も車もバイクも操縦した事はなかった。

 だが彼は何度も何度も(死にかける寸前まで)同じ仕組みの操縦席で操縦する光景を見て、『APST』操縦の全てを明確に覚えていたのだ。


「脳みその裏にまで焼き付いてんだよ! 操縦ミスなんてする訳ないだろっ」


 『APST』の右腕部に装着されている『TS-HESAR-03』から放たれた幾つもの光弾が、二機いる逆脚NAのうち一機、その片脚関節部を貫き、脚部の破壊に成功した。


《……何だと》


「っし狙い通り!」


 『APST』の搭乗者がNAの脚部を狙ったのは相手の機動力を削ぐためだ。

 いかに『APST』が優れた兵器といえど、搭乗者が操縦しているのは第1世代かつ火力・機動力・装甲全てが現行の兵器の中でも最低ランクの試験用機体だ。

 NA相手であっても用意に無力化を許してくれるような火力を持ち合わせていない機体としての判断としては良いだろう。

 だが移動が出来ずとも攻撃手段を持つ相手を前に隙を見せる危険を『APST』の搭乗者は忘れていた。

 脚部関節が破壊され、バランスを崩しながらもチェーンガンの砲塔を回転させるNAと、味方の被害を無視して跳躍を始めたもう一機のNAの行動に、数秒遅れて『APST』の搭乗者は気付く。


「うぁっ!? 喜んでいる暇は無いのかよ!」


 『APST』の操縦者は即座にフットペダルを踏み込み、ブースターを点火させた直後、『APST』目掛けて脚部破損したNAのチェーンガンから45m弾の雨がばら撒かれた。

 脚部破損した逆脚NAを中心にした時計回りの急旋回で回避を試みる『APST』だが、片脚を失いバランスのとれない筈のNAから予想を上回る的確な実弾射撃を受けて、回避し終えるまでに数発被弾している。

 

「射撃精度が高いな!? これは早く無力化しないと装甲を食い潰される!」


 試験としても兵器、高精度の照準補正を仕込んであるとは想定していたが、狙いがかなり正確で少なくない被害を受けたことで少々動揺する『APST』の搭乗者だったが、脚部破損したNAの真後ろに回り込んだことでチェーンガンの射撃が止んだことに気付く。


「こっちは余裕が無かったんだ、不意打ちだったが許せよっ」


 動きを奪われた逆脚NAへ、右腕に構えた光学SAライフルが撃ち過ぎで熱を溜め込みオーバーヒートを起こすまで撃って撃って撃つ。

 最初に当たった一発目は胴体部の装甲を溶解させ、一発目から僅かに時間を置いて同じ場所に着弾した二発目によってNA内部が露出し、その後照準がズレて三発目以降は違う箇所に着弾したが、『APST』の搭乗者は同じ場所に当たるまで打ち続け、最後に放たれた光弾が内部を貫通し、そこを基点に膨張し機体は爆発。一機の逆脚NAが沈黙した。


 

《やるな。NA-GH-01の撃破を確認》


「あと一機倒してやろうじゃないかぁ!」

 

次の相手は撃破したNAと同じ姿の、まだ被弾していない逆脚NA。

 最後の一機となった逆脚NAは飛蝗のような形状の脚で弧を描くような跳躍を繰り返している。

 常に『APST』の背後へ回り込もうとしながら、時折チェーンガンをばら撒き、接近しようとする『APST』を翻弄していた。

 『APST』の搭乗者は三次元的機動を見事にこなすNAに照準を合わせられず、気が付けば背後を取られチェーンガンによる連射をされる脅威に追い詰められてきていく。


「このままだとジリ貧だぞ……せめて上に足場があれば……」


 今回の試験を実施する為に『APST』の搭乗者が全額を負担していた。ただ、試験を実施するには僅かに金額が不足していたため、『APST』の搭乗者はその経費を削減するためにやむ無く妥協するしか無かったことが多い。

 試験の実施されている半径300mのドームに本来高所に設置される足場が撤去されていたのもそのためである。

 『APST』等による破損と修繕費や破損部の回収費を考慮して足場が不要と判断したのは悪手だったと『APST』の搭乗者は悟ったが、すぐに次の方法を考え始めた。


(試験用の中量二脚型『APST』がブースターを使って飛べる高さはドームの高さの半分、150mが限界だと操縦して感じた。

100m程の高さに足場があれば、逆脚NAの跳躍する高さと同等までに飛べるが、ない以上軽業師の如く駆け回るあの兵器相手に照準を合わせるのは、今の俺には奇跡でも無いと当てられない。

だからこそ、始めに三次元機動が可能な脚を潰すことで、相手のアドバンテージを奪いたかったんだが……一機だけしか当たらなかったんだよなぁ)


「なにか方法は無いのか! ………ん?」


 相手に翻弄されつつ、チェーンガンの猛攻を避けた先で、『それ』が転がっているのに気付き、荒唐無稽な考えが『APST』の搭乗者の頭をよぎる。

 すぐにチェーンガンの銃口が『APST』へと方向を向き、『APST』の搭乗者は慌てて回避行動をとり『それ』を通り過ぎる。

 だが彼は、浮かんできたアイデアに自分で呆れながらも、すぐさま実行に移った。


「……できる、か?」

次は早めに投稿できるかなー


APST:BM〜世代編〜

第1世代

APSTの基本的な機体。

従来のAI搭載型駆動兵器を搭乗型に変え、AIの干渉を起こさない操作を付加したことで、戦略的ハッキングでの暴走を発生させない無い、新しい発想を生み出した『人型搭乗兵器』その雛形。


参考:人型ロボット系統全般


設定のガバは詰めにくいので御容赦を


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