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月夜の品定め 更待月の夜

その三 仁義なき 戦も裁きも 平安なり?

 前回盛り上がった源ちゃんズによる「月夜の品定め」第2夜でございます。いつの世も恋バナや異性のお話などは盛り上がるものでございますね。


 今日の夜空にはまだ月が出ておりません。遅い時間に昇ってくる月でしょうか。


「空子さまねぇ」

「例の殿の……」

「そうだな……」

 ため息交じりに苦笑する源ちゃんズでございます。たった1回きりのアバンチュールの恋でございましたわね。


「でもさ、出家なさったあとに引き取られたっていうのも殿らしいよな」

「どこをとっても殿らしい恋?」

「だな」

 今はヴィラ二条でお過ごしでございますね。源ちゃんズ、今日は缶ビールで飲み会スタートのようですわね。


 ◇


「初恋といえばこっちもだよな」

「藤子さまじゃねぇの?」

「まぁそっちもそうなんだけど、朝子さまに出会って手紙をやりとり始めたのもおんなじくらいの時期だしな」

 今夜はおでんをつついております。今回も調理担当は朝から仕込んでおいたと何事にも手を抜かないリーダー弦一郎でございます。


「こっちも結局は失恋だったな」

 あの殿でもフラれることもあるんだよな、と源ちゃんズ。


「なんか、朝子さまの気持ちわかるな」

「フッた気持ち?」

 卵はひとり一個だからな、と弦一郎が皆に卵を配給していきます。


「多くの奥様や恋人の中でナンバーワンを争うより友達としてオンリーワンでいたいんじゃないかなってさ」

「深いなおまえ、弦三郎」

 そういえば光る君とも深いお話を弦三郎はいたしましたわね。ぷしゅっとまた新しい缶ビールが開けられます。


 ◇


「未子さまはな――」

「あり得ることではあるんだよ、この時代」

 手紙のやりとりでなんとなくの性格はわかっても姫君のお顔やお姿はデートするまで見ることができないのです。


「なんてったって会ってみるまでわからねぇもんな」

「口コミで恋するからなぁ」

 ウワサ以上に素晴らしかったり、またはその逆もしかり、でございます。


「でもさ、頭中将さまと取り合ったんだぜ。スゴイよな、未子さま」

「宮中2大スターがひとりの女性をめぐって対決!」

「なかなかいないわ、そんな方」

 ライバル頭中将さまに負けたくないと焦ってフライングした光る君でございましたわね。

「そしてなんだかんだ言っても優しい殿だよな」

 源ちゃんズは自然と缶ビールを掲げます。無言で、けれども微笑み交じりで目が合ったもの同士で乾杯でございます。


 ◇


「月子さまとはなぁ」

「これぞ殿の本領発揮、だったな」

「政敵の娘、兄の婚約者、しかも兄は春宮さま、これ以上の障害ないわ」

 仕切りのあるおでん鍋の中で弦二郎がはんぺんを持ち上げ仕切りを超えさせ隣の部屋に移動させます。


「まあ盛り上がってたな」

「月子さまもな」

 同じ仕切りの中の円い大根とはんぺんを一緒にします。


「そうは言うけどあのバルコニー(ロミジュリ)シーンはそりゃもうすごかったぜ、なあ? 弦四郎」

 あのときのBGM担当は管一のサックスと弦四郎のコントラバス(ベース)でしたわね。

「うん。確かにね、すごかった」

 片想い純情弦四郎もロールキャベツを食べながら答えます。

「なにがスゴイんだよ?」

 哀愁トランペット管二は牛すじの串をかじります。

「ふたりの酔いっぷりが」

 おお光る君、どうしてあなたは光る君なの? 風の下手くそなお芝居を憎めないチャラ男管一が演じます。おどけた管一の様子に場がいっそう和みます。


「酔いまくってた」

 サワーにお湯割り、おかわりのドリンクを皆の兄貴分、マイホームパパの管三が作ります。

「キミにこのグラスを捧げるよ」

 管一が出来上がった梅干し入りのお湯割りを管二にオーバーアクションで差し出します。あっほ、と言いながら管二は缶チューハイの管一と乾杯でございます。


「だからバレちゃったんだけどな」

「でもさ、なんであんなに罪悪感なかったんだ?」

「酔ってたからだろ?」

 こちらも程よく酔いがまわってきておりますわね。何回目かの乾杯でございます。

 あのときマスコミ対応など源ちゃんズは大変でございました。


 ◇


「いやもう、とにかく優しいよな」

「殿や夕さまが甘えるのもムリはないよな」

 花子さまですわね。

「あの温かさっていうかさ、優しさは無敵だろ」

 源ちゃんズ一同満場一致で頷いております。


「癒しだよなぁ」

「憧れだよなぁ」

 優しいのがイチバンだよなぁ、としみじみ呟いているのはヨメに弱い管二ですわね。


「やっぱさぁ、理想の女性かもな」

「激しく同感」

 またもや全員でグラスを掲げて乾杯、でございます。

 

 ◇


「まあキレイな方だよな」

「こういっちゃ失礼だけど、よく明石なんか(イナカ)にあんな女性ヒトいらしたよな」

 明子さまのことですわね。明石の海辺での出会いでございました。


「イナカであんなキレーなヒト見つけた殿もスゴイけどな」

「美人さんセンサーでもついてんじゃねぇの、殿に」

 場がどっと盛り上がります。おでん鍋の中からタコを取り出します。


「あと恋スイッチもな」

 またもや笑い声に包まれます。


「でもあの殿がやりこめられるんだからな」

「あの歌のやつな」

 明子さまの妙技、和歌攻めですわね。


 ◇


「でもやっぱあの方でしょ」

 管一が最後の方の話題を振ります。

「おお、ニューフェイス!」

 弦二郎もすぐにその話題に乗ります。最近パレスにいらした方でいらっしゃいます。

「劇的だよなぁ」

「確かに運命を感じるよな」

 なぜか全員でまた乾杯でございます。

 

「お顔見た?」

 気になるのはそこですわね。

「いやまだ。でも後ろ姿は見た」

 弦二郎が自慢げに話します。

「「マジっ?」」

 全員が前のめりになります。

「どうだった? どうよ!」

 管二も気になっているのですね。

「髪めっさまっ黒。ツヤッツヤ」

 まるで自分のカノジョかヨメのような威張りっぷりの弦二郎です。この時代は豊かで黒くて長い髪は美人の第一条件でございます。


「マジかよ〜!」

「いいなぁぁ」

 一同大盛り上がりでございます。


「あのさぁ、大丈夫かなぁ」

 弦三郎がつぶやきます。

「なにがよ?」

 管二が尋ねます。

「いやさぁ……」

 弦三郎には心配ごとがあるようです。


「言うな、それ以上言うなよ」

 弦一郎が弦三郎の心配ごとを察したようです。わかった上で口止めをします。

「なにをよ?」

 管二にはなんのことかわかりません。


「もし、万が一、千が一、百が一にもそんなことになったら全力で阻止だな」

 管三もその()()()()を把握しておりますわね。

「だからなんなんだよっ」

 管二がいらついてまいりました。久しぶりのキレキャラ管二ですわね。

「確率随分低くね?」

 管一は管三にツッコミをいれます。


「あり得ないかあり得るかと言えば、そこはやっぱりあるんじゃないかとかさ……」

 はっきりと口にするのは気が引けるのか、弦二郎の言い方が遠回しすぎます。

「わかるような気がする」

 弦四郎もわかりましたわね。

 

「だからっ! なにがっ!!」

 感の鈍い管二ですわね。


 月の出の遅い更待月ふけまちづきがようやく東の空に昇ってまいりました。


 本日のところはパレス六条平安なり、なのでしょうね。

 心配ごとは心配で……終わるといいのですけれど。ね?


 ♬BGM

 ビビディ(Bibbidi)(-)バビディ(Bobbidi)(-)ブー (Boo)  (シンデレラより)

 アンダー(Under)・ザ・シー(the sea)  (リトルマーメイドより)



 ✨『げんこいっ!』トピックス

 弦一郎特製のおでんはもちろん関西風。今晩のオススメは明石のタコ。他にはクジラの舌や皮もあり。


☆次回予告

甘酸っぱい恋の余韻?

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