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楽しいお茶会は3人で

その二 恋絵巻 壁ドンあごクイ ときめいて

 桜の樹が薄紅色の花から萌黄色の葉へと衣替えをした頃。

 初夏の太陽の日ざしが温かく南側の簀子縁に降りそそぎます。

 うららかな昼下がりでございます。

 ヴィレッジすぷりんぐにてお茶会(ティーパーティー)が催されているようでございます。


「美味しいわ。このお飲み物」

 そうおっしゃりながらお茶わんを目さの高さまで上げられるのは明子さまでございます。

「本当ね、ハイカラなお味ね。お菓子にぴったりだわ」

 花子さまは淡い色合いの焼き菓子をお口になさってらっしゃいます。マカロンでございますわね。


「ご遠慮なくおかわりをおっしゃってくださいませ」

 お茶菓子のサーブをしているチームすぷりんぐのももがお三人にお声がけします。

 少し離れたところでうめがしゃかしゃかと茶せんでお飲み物の支度を続けています。しゅんしゅんと沸き立つ釜のお湯を黒い粉の入った漏斗に丁寧に注ぎます。ぽたぽたと落ちてくる褐色の液体を茶わんに移し、鉄瓶で温めていた乳白色の液体も茶わんに注ぎます。

 茶せんで撹拌させるときめ細かい泡が表面を覆います。

「なんて名前だったかしら?」

 ホステス役の紫子さまがうめに尋ねられます。

「゛かぷちーの゛、ですわ。紫子さま」


「このお菓子が()()゛まかろん゛ですのね」

 明子さまもマカロンをお口になさいます。

「こっちの゛ふぉんだんしょこら゛も召し上がってね」

 紫子さまがもうひとつのお菓子もお勧めになられます。

「とっても美味しいわ。さすがは甘介かんすけね」

 花子さまはパティシエをお褒めになります。甘味司パティシエとして仕えている甘介に作らせたようでございます。


「光くんったら()()()()()()()()()()の贈り物をなさるでしょ? どんなもの差し上げているのか気になるじゃない?」

 紫子さまが手の上でマカロンをころんころんともてあそばれます。

「それはそうですわよね。紫子さま」

 フォンダンショコラをお口になさった明子さまが紫子さまに賛同なされます。

「おほほ。おふたりとも好奇心旺盛なのね」

 花子さまはにこやかに微笑まれます。


「それでうめやももに協力してもらって調べてみたのよ」

「わたしもほたてに聞きましたの」

 SKJの彼女たちの夫やカレは源ちゃんズメンバーですからそうした殿の恋のあれこれはすべて把握していることでしょう。

「まあ、おふたりとも探偵になれるわね」

 花子さまはいつもこうして周りの人をお褒めになられます。


「この前の三者面談は楽しかったわね」

「光さんの態度リアクションが可笑しくて」

「光る君は焦ったでしょうねえ」

 花子さまも笑っていらっしゃいます。

「恋にはサプライズが必要だって」

「ね――」

「まあ」

 光る君らしいわね、と花子さまが微笑まれます。


 ところ変わってこちらは宮中でございます。光る君はお仕事中でございます。

「ふぇっっっくしょんっっ!」

 さきほどからくしゃみが止まらないようでございますね。

「風邪でもひいたかな?」

 光る君は首をかしげられます。


 こちらヴィレッジすぷりんぐ。

「最近はきちんと()()()()()を伝えてくれるようになったわ」

「わたしにも知らせてくれますわ」

「光る君なりに誠実なのよ。悪気だけはないわ」

 またも優しく光る君をフォローなさる花子さま。名人の領域でございます。


「ふぇっっっくしょんっっ!」

 宮中では光る君のくしゃみが続いているようでございます。

大臣おとど、大丈夫でございますか?」職場の部下が心配しているようでございます。だいじょぶ、だいじょぶと光る君はお答えになられます。 

「花ちゃんとこに帰ろうかな。何か身体があったまるようなもの用意してもらお」

 さっそくさらさらとお手紙を()()書かれる光る君でございます。

 

「失礼いたします。紫子さまに殿からのお手紙をお持ちしました」

 源ちゃんズの弦二郎のようでございます。SKJのももが取次に行きます。そう、ふたりは恋人同士でございましたわね。


 弦二郎は協調性が豊かでいわゆる敵を作らないタイプでございます。源ちゃんズではツッコミ担当ですが、決して和を乱すことはなくどちらかというと場を和ませているようです。容姿も爽やかスポーツ系イケメンといったところでしょうか。


「お客さまがいらしてる?」

 小声で弦二郎がももに尋ねます。

「ええ、花子さまと明子さまがいらしてるわ」

 お三人でお茶会なのよ、とももが答えます。

「マジ? ほんと? え、マジ?」

 なぜか弦二郎がうろたえます。

「どうしたの? 二郎ちゃん?」

 弦二郎が文を3通見せます。

「3通あるんだ。紫子さま宛、花子さま宛、明子さま宛」

『紫ちゃんへ』『花ちゃんへ』『明ちゃんへ』3つのお手紙でございます。

「あら、ちょうどいいじゃない。一気にお渡しできるわよ?」

「いいいっ?!」

 ももには弦二郎が何をそんなに動揺しているのかわからないようでございます。


「いい、のかな。いい、んだろうか。よくない、んだろうか。いや、これは不可抗力というか、えっと、殿への報告はどうしたもんなんだ?」

「どうしたのよ、二郎ちゃん。はい、頂戴な」


 うろたえている弦二郎からももは3通のお手紙を受け取りました。

 ももは3人のところに戻ってそれぞれのお手紙を渡します。


『紫ちゃんへ 今日は夜勤になったので宮中に泊まります』

『花ちゃんへ 今日そっちに行くね。何か温かいものが食べたいな』

『明ちゃんへ 今日は頭中将くんと飲み会です。また今度行くからね』


「「「まぁぁぁぁ」」」

 笑い声があたりに響き渡ります。


「ほんとに悪気はないのかしら?」

 紫子さまが苦笑されます。

「そうねぇ」

 花子さまも笑っていらっしゃいます。

「これが光さんなりの゛誠意゛なのかしらね?」

 明子さまは呆れ気味のご様子。


「お返事書かないといけないわね」

 紫子さまがSKJに紙と筆の用意をさせます。


『わかったわ。宮中にお夜食届けさせましょうか? 紫子より』

『わかったわ。お待ちしてるわね。花子より』

『わかったわ。いつもお知らせ ありがとう わたしのところ 来ないってことね 明子より』


「今夜はヴィレッジさまーにお邪魔しちゃう? 明子さま」

 紫子さまが明子さまにウインクなさいます。

「四者面談?」 

「またサプライズ?」

 三人が顔を見合わせます。


「「「それはちょっと可哀想かしらね――」」」



 大いに盛り上がる3人からももは()()()お手紙を受け取ります。御簾外で待っている弦二郎にクスクス笑いながら渡します。

 あああああ、とうめきながら弦二郎は光る君の元へと戻るようでございますわね。光る君、3通のお手紙をごらんになってどんな反応リアクションをなさるのでしょうね。


「あの、お邪魔してもいいですか?」

 弦二郎と入れ替わるようにまたしても御簾外から声がします。

「あらっ! そのお声は……」

 

 新しいゲストの来訪に一気に雰囲気が色めき立ったようでございます。

 楽しい茶話会はまだまだ続くようでございます。



 本日もパレス六条平安なり、でございます。



 ♬BGM

 LOVEマシーン


 ✨『パレス六条』登場人物紹介

 弦二郎 源ちゃんズメンバー、ツッコみ担当だがチームのムードメーカーでもある。紫子さまSKJのももとラブラブ。


 ✨『げんこいっ!』トピックス

 パレス六条のパティシエ甘介は神の舌の持ち主。一度食べたものなら再現可能。



☆次回予告

お茶会特別ゲスト!

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