ヴィレッジすぷりんぐ給湯室
その二 恋絵巻 壁ドンあごクイ ときめいて
「まったりしてるわねぇ」
紫子さまのSKJチームすぷりんぐは3人で休憩中のようです。ファッション系雑誌の『きゃむきゃむ』をぱらぱらとめくりながらのお茶タイムでございますね。本日のおやつは今宮神社のあぶり餅とおぶ(緑茶)でございます。
「今年のヘアメイク、ボルドー系が流行りですって」
「じゃあ重ね(衣装の色合わせ)の色目も葡萄とかかしらね?」
「髪型はふんわりウェーブですって」
「あら、じゃあヘアアイロンでアレンジする? それともゆるふわパーマをかける?」
さすがチームビューティー、最新のファッションやヘアメイクの情報には敏感のようですわね。
「紫子さまのヘアメイクにも取り入れないとね」
「そうね」
ヘア担当にメイク担当にネイリスト、休憩中とはいえ仕事熱心でございます。
「紫子さまっておキレイよねぇ。今さらだけど」
頬杖をつきながらももがそう言います。
「モデルさん以上ですよね」
初めて見たときの驚きは忘れないわ、といちごも言います。
「もともとおキレイだけれど、さらに綺麗を極めようとなさる女子力がすごいわ」
わたしたちもしっかりサポートしてさしあげないとね、とうめも言います。
「ダンナさまがあれだけ光り輝く超絶イケメンさまですもんねぇ」
殿を初めて見たときの感動も忘れないわぁ、といちご。
「紫子さまだって引けをとらずに光り輝いてるわよ」
確かにそうでございます。
「パレスにいらして行動範囲が広がって生き生きしていらっしゃるわよね」
ますます紫子さまがキラキラされるわね、とうめ。
「それにあのお心の声も絶好調よね」
さすがは女性陣、紫子さまの超訳に気づいていたようですね。
「わたしもなんとなくわかるようになってきました!」
いちごが嬉しそうに話しますね。
「殿がお気づきでないのがいいんだか、悪いんだか」
お言葉はお言葉どおり受け取る素直な光る君でございますものね。
「でもやっぱりおふたりご一緒のお姿はため息ものの素敵さよねぇ」
「ステキねぇぇぇ。物語よりよっぽど素敵」
ホントねぇと言いながら三人でおぶをすすります。
「そういえば、話は変わりますけど、家司の桐山さんって素敵じゃないですか?」
いちごが蕎麦ぼうろの缶をかぱっと開けながら話題を変えます。
「そうね! ダンディよね」
ももが同意します。
「同じパレス六条でもあまりお見かけしないけれどね」
桐山はいわば光る君にお仕えしている者たちのトップでございますからね。広大な御殿の管理や大勢いる従者やSKJの統括が彼の仕事でございます。それぞれの奥さまのお世話をしているSKJとは仕事上の接点はあまりないのかもしれません。
「主にパレスの統括や殿にお付きだから一緒の仕事ってないわね」
うめも残念そうですわね。
「素敵なおじさまですよね。奥さまはいらっしゃるんですか?」
いちごが尋ねます。
「それがいらっしゃらないみたいよ。今まで亡き桐の帝さま一筋にお仕えしてたって」
3人の中でうめが一番長く紫子さまに仕えておりますので、そういった情報にも詳しいようです。
「宮中で主上さまにお仕えしてたんだから女官たちからモテたでしょうにね」
宮中といえば煌びやかで華やかな世界の中心でございます。
「それになびかなかったんだからますます素敵だわぁ」
「女御さま(帝のお妃)から御文をいただいたなんてウワサもあったらしいわ」
「それにもなびかず仕事一筋」
「ステキねぇぇぇ」
あのロマンスグレーの髪型もステキ、口元のおひげもステキ、どうやら声もステキらしいわ、とステキがてんこもりのようでございますね。
確かにスキのない仕事ぶりに穏やかなものごし、年齢を重ねることによってにじみ出るオトコの渋さが桐山の魅力といったところでしょうか。宮中でも隠れストーカーがいたようですが、ここパレス六条でも隠れファンが多いようでございますね。
「でも弦一郎さんも弦二郎さんもカッコいいじゃないですか」
いちごがうめのダンナさんやももの彼氏の話をします。
「弦一郎さんは正統派イケメン」
源ちゃんズの不動のリーダーですわね。
「弦二郎さんは爽やかスポーツマン系」
源ちゃんズのムードメーカーでございます。
「いちごちゃんは管一くんとどうなってるの?」
うめが尋ねます。管一は光る君の同類でございましたね。陽気な元気系イケメンです。
「どうもなにもまだまだいろいろな人と知り合いたいなって」
「若いわね」
イマドキ女子らしいいちごにうめとももが思わず苦笑します。
ぼりぼりとお菓子をかじりながら、ずずずっとお煎茶をすすりながらのどかな給湯室でございます。
「あああっ!」
雑誌をめくっていたももが突然叫びます。
「なに、急に大きな声出して」
うめはおぶを飲んでいた最中でむせてしまいました。
「『あむあむ』の次号、抱かれたいオトコランキングですって!」
見ていたページをももが指さします。
「いちごちゃん、すぐに予約しておいて」
うめが即座にいちごに依頼します。
「あんなイケメンだんなさんがいるのにいいんですか?」
「いちごちゃんがそれ言う?」
蕎麦ぼうろを差し出しながら、ももがツッコミます。
「ももさんだってステキ彼氏がいるじゃないですか」
その蕎麦ぼうろをぱくっと口にしていちごが答えます。
「リアルと雑誌の妄想は別よ、別。ね? もも?」
「何部予約します?」
当然ですよ、とももが答えます。トキメキって必要よねとうめ。
「そうねぇ。どうしようかしら。あ、紫子さまも要るかしら?」
そろそろ休憩を終えてお務めに戻る三人のようでございます。明日のイベントの準備のようですわね。手は動かしながらもまだまだ話題は続いているようでございます。
誰が一位だと思う?
やっぱり殿かしら?
でもそろそろ夕さまが逆転なさるかも。
春宮さまもいらっしゃるわよ!
ああん、春宮さまぁぁぁ
本日もパレス六条まことに平安なり、でございます。
♬BGM
ファッションモンスター きゃりーぱみゅぱみゅ
✨『げんこいっ!』トピックス
前回の抱かれたいオトコランキング
1.光る君
2.春宮さま
3.夕さま
(桐山など従者はランキング対象外)
☆次回予告
楽しいお茶会は3人で