表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/43

またもや密会? すきゃんだる?

その二 恋絵巻 壁ドンあごクイ ときめいて

「はぁぁぁぁ」

 らしからぬため息など漏らしていらっしゃるのは光る君でございます。

「あら、お疲れね?」

 こちらは月子さまでございます。


 そうでございます。例のロンバケ、リゾラバの明石行きの原因となった゛ロミジュリスキャンダル゛のお相手ジュリエット月子さまでございます。禁断の関係だったにもかかわらず月だ星だとおふたりでたっぷり盛り上がり゛キケンな恋゛を満喫なさいました。だからこそのスキャンダルであり、バッシングを受けて、光る君は謹慎なさったわけでございます。まあ、謹慎とは名ばかりで恋の伝道師はただでは転びませんでしたけれどね。

 かたやドラマティカル月子さまは光る君のお兄さまである春宮さまのお妃さまでございましたが、オットでいらっしゃる春宮さまは帝に即位なされました。今や帝の寵姫でございます。お住いはもちろん後宮、またの名を『キャッスルキングダム』と申します。


 京の街中でも都大路から一本入った袋小路。ひっそりとたたずむ隠れ家バーがございます。ウナギの寝床と言われる間口が狭く奥行きのある敷地を進んでいくと小ぢんまりとしたバーカウンターのある部屋がございます。照明はキャンドルのみで近くをうすぼんやりと照らす程度でございます。カウンターの正面にはグラスや洋の東西を問わないお酒のボトルが並べられております。

 お店の名前を……『BAR朧月夜』と申します。


 すわまた例の密会か! と思われましたかしら?

 

 どうしても月子さまに逢いたい光る君が、見張りという名の従者つきでパブリックスペースでの面会という条件でここ『BAR朧月夜』での()()()()()()()()()を実現させたのでございます。


 カウンターに光る君と月子さまが並んでお座りになっていらっしゃいます。あの頃よりも渋みが増した光る君とあの頃よりも艶やかにおなりの月子さま。ちょい悪オヤジと美魔女のカップル、でございます。

 月子さまもまぁそれならば、と光る君のお誘いをOKいたしましたら、月子さまのSPから夫君である帝の侍従、はてはご実家ウダイジン家の従者までもが随行しての()()となり、今も光る君と月子さまの後方を十名程度が取り囲んでおります。


「まぁね……。新居もなかなかヘビーでさ」

 からからからん、とウイスキーのグラスを光る君は鳴らされます。

「あなたならスリリングだって楽しみそうだわ」

 月子さまはグラスをなぞられます。カシスソーダのようでございますね。


 たとえ後方にギャラリー(見張り)がいようとも光る君は自宅パレス以外で息抜きがしたかったのでございます。月子さまとも禁断の関係うんぬんでなく、ただ飲み友達としてお会いになりたかったようでございます。

 月子さまにしても見張りがいることである意味正々堂々と光る君に会えるわけですからそれはそれで楽しんでいらっしゃるのかもしれません。

 なんせ、似た者同士のおふたりでございますからね。


「月ちゃんは強いね。惚れ直すよ」

 うぉっほぉん! とわざとらしい咳払いが聞こえます。少しでも色めいた会話になろうものならチャチャが入ります。


「女性側の気持ちになってみなさいよ。結局みんなあなたを好きだからじゃない」

「そう?」

 光る君は頬を緩められます。

「あなたには()()()()幸せにする責任があるわ」

 光る君の口角が上がります。

「そうだね。その()()()()月ちゃんは入ってる?」


 うぉっほぉん!

 うぉっほぉん!


 後方見張り部隊からの咳払いを気にすることもなく光る君は月子さまに手を伸ばされます。月子さまのお手をとろうとなさっているのでしょうか。美しい触手の目指す先は、え? 手じゃなく?  もしやのあご……?


 ぴ――――――

 

 ホイッスルが鳴り、月子さまのSPがふたりのあいだに割り込んできます。あっという間に月子さまと光る君の間に人垣ができます。SPはインカムを使いながら誰かと通信しているようでございますね。

 従者のひとりが月子さまにメモを渡されます。


「あら、オットから? じゃあ帰るわ」

 どうやら夫君が月子さまをお訪ねになるとメモには書いてあるようでございます。SPや従者たちがキャッスルキングダムへのご帰宅に備えるため持ち場へと散ってゆきます。


「あっさりしたもんだね、キミも」

 若干気落ちしたご様子の光る君でございます。


「ドライな関係でちょうどいいんじゃない?」

 手元のドライフルーツを光る君に差し出されます。放り投げたのですが、お口でのキャッチには失敗。

 月子さまは投げキッスをなさって立ち去られます。

 ぞろぞろぞろと従者たちも帰っていきます。


「まったね」

 颯爽と帰って行く後ろ姿

 オトコマエ、でございます


 BAR朧月夜も思いのほか平安なり、でございましたわね。


「さて……」

 空になったグラスの氷がからんと音をたて崩れます。


()()()帰ろっかな……」

 珍しくため息交じりの光る君でございます。


「管一」

 光る君が今までBGMを奏でていた管一をお呼びになります。

「もう少し飲んでくから、つきあってくんない?」

 バーテンダーにカクテルをふたつオーダーなさいます。ブランデーサワーだそうです。

「もちろんっすよ。よろこんで」

 管一はサックスを片付けて光る君の横に座ります。管一と言えば源ちゃんズのチャラ男、ノリノリのぱりぴーでございます。少し明るめの髪色の元気系イケメンといったところでしょうか。


「女の子ってさ、可愛いけど、ツヨイよね」

「そうっすね……」

 しみじみそうおっしゃると光る君はグラスに口をつけられます。

 うんうんうん、と隣の管一が忠実に同意しております。


「どの子もさ、みんな好きなんだよ。みんな一番なんだよ」

「そうっすよね……」

 光る君はバーテンダーに葉巻を所望なさいます。

 光る君に管一、ふたりの共通点はおわかりですわね?


「それじゃダメなんかな」

「そうっ……すねぇぇ」

 管一が光る君の葉巻に火をつけます。

 ふたりとも女の子が大好き。これでございます。


 葉巻の煙をくゆらせながら、グラスの氷が琥珀色の液体に溶けていくほどに夜は深まり、チャラ男二大巨頭の身のない会談も深まってゆきます。


 本日も皆さまいたって平安なり、でございます。




♬BGM

TAKE FIVE    管一アルトサックスソロ


✨『パレス六条』登場人物紹介

月子さま ドラマティックジュリエット 恋がビタミンの光る君の同類

管一   源ちゃんズメンバーいちのチャラ男、いわゆるぱりぴー


✨『げんこいっ!』トピックス

BAR朧月夜は会員制。一見いちげんさんお断り。


カシスソーダのカクテル言葉は『貴女は魅力的』

ブランデーサワーのカクテル言葉は『甘美な思い出』




☆次回予告

ヴィラ二条は不思議の国

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ