玖
発見された時のスバルはあまりにも、あまりにも無残な姿だった。
助けられなかった五ヶ月間、女性だったスバルが残酷な魔族達にナニをされたのか嫌でも想像できた。発見者の剣聖は彼女の身体を抱きしめて泣きながら謝った。それでもスバルは……
「あの子は、救出されたあの子が初めて行った言葉、は、『村にいた人達は無事?』……でした。自分がどんな恐ろしい目にあっていたのに、それなのにっ」
一緒に着いって行ったレフィアナとライアンの姿を見たスバルはそう言ったのだった。ライアンは泣きそうになるのをぐっと我慢して全員無事だと言うと。
『良かった……』
小さい小さい安堵のため息を吐くとそのまま気絶した。
スバルは最後までライアン達に憎しみの言葉を吐く事はなかった。言ってくれればライアン達もどれ程救われらのだろう。いや、責められない事がライアン達の罰であろう。何も関係のないスバルを巻き込み、神子達の怠惰を許し続けた事の。
スバルの惨たらしい姿を見た最高幹部達はある判断を下す。
「神子殿。そして世話係達よ」
大国の国王は氷の様に冷たい声で言う。
「実はな。浄化の力を他の人間に移植できる秘術があるのだ」
「えっ!?」
「そんなのがあるのですか!!」
世話係達は何も知らなかった様だ。それもそうだ。この術を知っているのは国の後を継ぐ者とその伴侶だけでそれ以外の者は例え王族だろうと誰にも話す事は絶対にない。