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壱拾弐

 全ての話し合いが終わり、ライアン達は用意されていた部屋に戻っていた。ライアンはベランダに出て星空を眺めていた。


「……何を考えていますか?」

 ライアンの隣にレフィアナが立つ。ライアンは視線でレフィアナを確認すると直ぐに星空に戻した。

「……これからの事を考えていた」

「……ええ。これからは苦難の日々。魔族を含めた魔物を全て倒す事。スバル様の変異した身体をどうやって戻す事。どれも不可能に近い事です。最悪子子孫孫にまで迷惑を掛けてしまうでしょう。……それでも私達はやり遂げなくてはいけません」

「ああ。それがあんなにも元の世界に戻りたがっていたスバル様のせめてもの償いだ。……全て終わらせたら元の世界に戻そう」


 幸いな事に召喚する術は二度と使う事は出来ないが、返還する術は召喚された時の日時に合わせて返還出来る様になっていた。スバルが望めば帰す事が可能だ。


「ただ、此方の可能性が高いけどこの世界に残って一生を終える可能性が高いが」

「それを選んだとしても彼女の願いを叶えてあげましょう。ひっそりと静かに余生を、逆に贅沢三昧な日々を送りたいと願うなら極力叶えてあげましょう。最後の願いはスバル様が腐らない程度にね」

 レフィアナの言葉にライアンは眉を顰める。


「……何故あの方々は、あんなにも腐っていたのか」

『あの方々』は誰達なのかレフィアナは言わなくても知っていた。

「……神子様達については此方側に来る前、どんな生活を送っていたのかは知らない。だが、世話係となった王女・王子達には共通点があった」

「……共通点?」

 レフィアナも夫と同じ様に眉間に皺を寄せた。ライアンは頷く。

「うん。王女達は魔物討伐の()()()()()()()()()()()()()。二千年前の件以降、大きな事件がなかったし長年平和な状態が保たれていた。彼女達は『自分達は大丈夫だろう』と言う油断が出てしまった」

「……それって世話係になってはいけないタイプじゃあない。親は気付かなかったの?」

「多分気付けなかったと思う。俺もそれが分かったのは大分後だったし、神子達の説得している最中の世話係達の会話で何となく、ね。しかも王女達は普段の態度は品行方正だったし、だからこそ『世話係』と言う名誉ある仕事を任せられたのだから」

 だからこそ彼女達の両親の落胆は酷かった。


「そうね……私もあの方々の生活態度を耳にした時は、世話係に成れなかった他の王子達が嫉妬して中傷の噂を流したんじゃないかと思ったわ。

 その噂が本当だったと知った時は神子様達が何かしら悪い術を使って、王女達を洗脳したんじゃないかと心配したわ」

「うん。だけど二人にはそんな力はなかった。第一、歴代の神子様の世界、『チキュウ』には我々が持っている『魔術』が存在しない代わりに、『カガク』と言う力が存在している。魔術が使えないからこそ、我々にはない『浄化の力』が持っているのだろう」

 ブルッと夜風に当たり過ぎたのかレフィアナは少し身体を振るわせた。そんな妻の姿を見たライアンは自分が羽織っていた羽織をレフィアナに着せ、部屋に一緒に入った。





「ですが分かりませんわ。どうしてあの方々はあそこまで堕落したのかしら? 歴代の神子様や世話係達の中には多少性格に難がある方はいましたけど、皆無事任務を全うしていたわ」

 使用人に頼んで温かいお茶を淹れて貰い、身体を温めたレフィアナは改めて夫に疑問を投げ付ける。

 ライアンは難しい表情を作り、暫く沈黙したが妻の問いに自分なりの答えで返した。


「……相性が良過ぎたかも」

「良過ぎた?」

「俺達はこの世界に来る前の神子様達がどの様に暮らしていたか分からない。ただ、スバル様に対する態度とか我々王族と使用人に対する態度を見ると、恐らくあまりに神子と名乗るには相応しくない生活をしていたのかもしれない」


 ライアンの言う通り、あの二人は教師等の大人達の前では良い子ちゃんぶっていたが、自分より何処か劣っている所がある人間にはとても蔑んでいた。

 しかもクラスの一体感を保つためにスバルの様な弱い生徒をクラス総出で虐める様に仕向けた。少しでも反する事をすればその人間が次のターゲットに成る様な雰囲気を作って。クラスメイトの中にはスバルの虐めを止めたいと思っている生徒はいたが、逆に自分が虐めのターゲットになってしまうのではないかと言う恐怖、教師に相談しても取り合ってくれない絶望によって結局参加している状態だった。


 勿論ライアンはその事は知らないが、スバルに対しての態度、王族に対しては良い顔をしているに対し、使用人の前には悪徳領主の様な振る舞いをする姿を、陰で見たり他の使用人の訴えで王族達に知られる様になる。国王達は娘達が酷い目に合っていないかと心配したが、美男美女の集まりである世話係達に神子達は大変気に入り彼女達の前では良い顔をしていた。


「歴代の神子様や世話係の中には確かにレフィアナが言っていた通りに性格が悪い者もいた。しかしそう言う人間は一人、もしくは二人、三人位の少数だから多数の真っ当な感性の者が窘めたりして問題を小さくしたり、最悪世話係を辞めさせて排除すれば良い。神子なら言葉巧みに煽てて浄化の旅に向かわせる。しかし今回は……」

「性格に難がある人間しかいなかった」

「しかも窘める所か、自分の耳触りの良い事しか言わない者しかいない。周りの耳が痛い者よりもずっとその者の言葉しか聞かない。そうしてズルズルと堕落していって……」

「「……はぁ」」

 数えるのも億劫な程の溜息を二人同時に吐いた。













「……スバル様はどうしている?」

「今は一人になりたいと言って自分の部屋にいますわ」

「そうか。……あの方には申し訳ない事をしてしまった。全て我々の不手際なのにこの様な運命を……」

「……後悔してもどうにもなりません。私達が出来る事は彼女を守る事。私達の養女・・となったスバル様……スバルを我が子の様に愛し、守りましょう」

 各国の王族との会談の結果、スバルは彼女の世話をしていたライアンとレフィアナの養子となり二人が身元保証人になった。小国にはあまり責任が重すぎるのではないかと言う意見は確かにあったが、誰よりも先に世話を買って出た二人の方がスバルも安心できるだろう、と言う事で決まった。



「明日から大変だろうが一緒に立ち向かってくれるか?」

「何を当たり前の事を。神の前で誓いあったじゃありませんか。『どんな困難が立ち塞がってもお互い乗り越えていこう』と」

 二人は互いの手を繋がり改めてお互いの思いを強く確かめ合った。



















――深夜



 自分の胸の中で寝ているレフィアナの寝顔に思わず口元を緩めるライアン。ふと、スバルを救出する際の事を思い出す。


『ふざけるな!! ソレは俺達の、俺のもんだ!!!!』


 そう叫びながら魔術によって封じられた身体を解こうと暴れ、ライアン達を今にも殺したい程憎しみと殺意を帯びた眼で睨んでいた。


 可笑しいと思っていた。

 魔族にとって人間なんて虫ケラ同然、しかもスバルは力がないとは言え自分達にとっては憎い『異世界人』だ。何故五ヶ月もの間があったのに殺さなかったのか?

『嬲りに嬲ってから殺すのではないか』と答えれば確かに納得する。だけどそれにしては救出された時のスバルの身体があまりにも綺麗・・・・・・・だったのだ。


 確かに痣や平手打ちにされたのか赤く腫れ上がった所があった。

 ただ、平手打ちにされた場所は尻だけで、身体全体に散らばる痣も、殴られたモノにしてはあまりにも小さい痣だった。

 ライアンはソレを知っていた。ライアン自身閨の時にレフィアナに付けるし、レフィアナもライアンの身体にキスをする度に付けていた。

 スバルの身体を治療した女性医師によると、スバルの身体には薄っすらであるが縄で縛られた後、噛み後が無数に付けられていた。

 

 ライアンはある可能性を考えるが、直ぐに思い直す。

 あの魔族が? 元は知性もない獣以下の存在だった魔物が進化しただけのイキモノが人と同じような執着を持つ訳がない。しかもその相手が自分達の怨敵である異世界人であるスバル。

 

そうだ自分の考え過ぎだ。そう結論付けてライアンはレフィアナを抱きしめて眠りについた。





 だがもしライアンの考えが真実だとしたら……人と魔物の戦争は激化するのは間違いない。


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