壱拾壱
「……すまんなぁ王妃。嫌な役目を負わせてしまって」
「いいえ。あの子をあんな風に育ててしまったのは母親の私の責任ですので。嘘をつく事位簡単ですわ」
そう。先程王妃が言った秘術の内容の一部偽りがあるのだ。
確かに浄化の力を移植する事は本当であるが、それと一緒に寿命と若さも一緒に取られてしまうと言う事は嘘だ。それと複数人でのと言う部分も大嘘。浄化の力だけを移植する事が出来るのだ。
ならばどうして今まで秘術を発動しなかったのか? 答えは簡単だ。
発動したと同時に、異世界から人を呼べなくなるからだ。
どう言う理論なのかは分からないが、どうやら異世界人を召喚する時の術よりも浄化の力を移植する術の方が術の発動に必要な力の消費量が大きい。それを一度使ったらもう二度と異世界人を召喚する事が出来なくなるのだ。
だからこそ一万五千年前の神子達はコレを使う事が出来なかったのだろう。何せ移植した人間は不老不死になる事はないから死んでしまったら人間側は魔物に負ける。
何故その術をスバルに使い、世話係と神子達嘘をついたか。それは……
「駄目、なんですか。スバル様の体内にある瘴気の浄化は?」
「レフィアナ殿。各国の術師の精鋭達が尽力しているが……変異してどうにもならない」
「そんな……」
そう。スバルは五カ月に渡る悪夢により体内に瘴気が溜まってしまった。それがどう言う訳がスバルの身体を変異した。
『変異のせいでスバル様の身体は老いる事が出来ず、身体や老化による死を迎える事が出来ません。文字通りの不老不死の状態です。変異した身体はもう二度と元には戻りません』
スバルの身体を調べた医師そう見解した。
「スバル殿の身体は幸い浄化の力を移植してもその力が軽減する事はありません。それに男神子様と女神子様二人の力を合わせれば膨大な量でしょう」
「そうだ。悪い言い方を言えば結果的に我々は強大な兵器を手に入れたと言う事だ」
そう。異世界召喚と言う手間を取る事がなく、それ所か瘴気が溜まる前に浄化する事が出来て魔物達の弱体化に繋がる。なんて幸運な事だろう! だがしかし……
「民は不老不死のスバル様をどう見るのでしょうかね」
他国の国王がぽつりと呟く。
「……ある者は神として崇め、ある者は老いず死なない彼女を恐れる。……どっちにしろ人間扱いは期待できませんね」
ライアンはその呟くに答える。そして自虐的に笑った。
「スバル様が不老不死の原因が瘴気による突然変異だと世界中にバレれば、彼女の事を『魔物』、いや『魔族』として見る人間もいる。そう言った奴等がスバル様に危害を加える。これ以上我々は彼女を苦しめる事は許されない!」
だから彼等は嘘をついたのだ。
民に『世話係達の寿命と若さを吸収した』と公表すれば納得するし、この世界から追放と言う罰にも納得する。
民は神子達が浄化の旅に出なかった事も、スバルが恐ろしい目にあっていた事も(詳細については何も知らされていない)知らない。
もし、彼等がこの世界に留まれば民の怒りの矛先が向かう。世界中の民達の怒りを浴びたらどんな目に遭うか想像できる。そんな目に遭う位なら異世界に追放する方がまだマシと言う親心があったのも嘘をついた理由の一つだ。
「此処にはいないが、騎士団達もあの村の件からスバル殿に忠誠を誓っている。我々はこの戦争をどんな手を使っても魔物達を滅ぼし、必ずスバル殿の不老不死解こうぞ!!」
国王の誓いは王族だけではなく、侍女や女官、文官や衛兵達も賛同した。




