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「コレは一万五千年前の神子殿が開発した秘術だった。だがこれは神子だけではなく、此方側も何人か犠牲が出るのだ。そして浄化の力を移植された者は半不老不死となってしまう。……何故なら浄化の力だけではなく寿命と若さを半分まで一緒に相手に移植してしまうからだ。何故我々側もその移植に参加しなければならないのは、抜き取られる神子様を少しでも負担を軽くする為にです。何人もいれば若さも寿命も三分の一、四分の一みたいに軽減出来るのです。
まあ、半分取られた者は神子様達が来た世界に戻せば元に戻るみたいだが」
「ちょっと待ってよ! まさか、まさかソレを私達に掛けるって言うの!?」
「まさかあの根暗に俺達の力を移植するつもりかよ!」
「そうですよ」
騒ぐ女神子と男神子に平然と答えるライアン。
「スバル様はもう此方の世界でしか生きる事が出来ません。あんなに元いた世界に帰りたがっていたスバル様が」
「父上母上!!」
ライアンと対峙した王女が両親に縋りつく。
「わ、妾達は脅されたのです! 『言う事を聞かなければ浄化の旅に行かない』と神子様に脅されて……」
「黙りなさい!!!!」
王妃は情けない娘を平手打ちする。剣聖の平手打ちは強烈だったのか王女は神子達の元へ吹き飛んでしまった。
「嘘だと言う事は此処にいる者全員が知っているのです! もし脅されたと言うならば何故親である私や陛下、お前付きだった侍女達に言わなかったのです! そもそも脅されている人間か集団乱交を提案する訳ないでしょ!! 汚らわしい!!!!!!」
そう。一度男神子と女神子、それぞれの世話係達で大乱交を開いた。そしてソレを提案したのは大国の王女だと言う事は国王直属の部下の耳にしっかりと入っていた。
「ええい! これ以上お前達の情けない言い訳を聞くつもりはありません!
お前達は今まで神子様を窘めず一緒になって遊び呆けて犠牲者を出した事! 世話係の任務を全うしなかった事! ソレ等の罪を償う為にスバル様に神子様の浄化の力を移植させる時の負担を軽減する為に移植に参加する事! そして神子様達のご帰還の時にお供して行きなさい!!」
それはこの世界から追放宣言だった。
「お、俺はこの世界に残りたいです!」
「わ、私も!!」
「……ふざけるな!!!!!!」
神子達に怒鳴りつけたのは今の今まで黙っていた他国の国王だった。
「その権利は浄化の旅を終わらせたと言う義務を終えてから初めて貰えるモノです! 貴方方は浄化をせず、それ所か各国の税金から集めた防衛費をネコババするなど言語道断!! 無駄飯食いの盗人風情にこの世界に残る理由はありません!!」
「そうです! 浄化の力も使う気のないのなら宝の持ち腐れ。家族や友人がいる世界に戻っても別に困らないでしょう! これ以上国民のお金を貴方達に使う気はありません!!」
「「「「そうだそうだ!!」」」」
他国の王族の怒号に思わず身体を縮こまらせる神子達。
「衛兵よ! 儀式が始まるまで此奴等を部屋に閉じ込めておけ! 逃げぬように外にも中にも見張っていろ!!」
「「「はっ!!」」」
衛兵達は神子達の腕を掴みあげると一瞬で神子と世話係達を広間から連れ去った。




