第2話 女神の過誤
僕は、牢で横になると、殴られてすぎて疲れていたのか、すぐに意識を失った。
ケツの穴には棍棒が刺さったままだった。
ぐっ、ケツが痛い。
そうすると、夢を見た。
そこには、女性がいた。
女性は、この世のものとは思えない美しい造形で、まるで最高級の人形のようでもあった。
素肌に透き通るような純白の羽衣。
この女性は、転生または召喚ものの小説で、力のないヘタレに救済を与える女神様ではないか。
男としては、男性の厳つい神より女神の方が落ち着くと思っていた。
そうすると、女性が僕に話しかけた。
「私は、この世界で、【叡智】、【闘争】、【奇跡】を司る神。あなたには、召喚の時点で、勇者としての能力を与えることになっていたの。しかし、それは神々の過誤で与えられなかった」
そんな。僕は、不良品扱いされてしまった。それは神のせいだったのか。
僕は憤りを覚えた。
「ふざけるなっ、あんたら神の怠慢のせいで僕は貞操を奪われたっ!」
「たしかに、あなたはこの世界で酷い扱いを受けました。このまま、あなたに力を与えらなければ、あなたは生贄となって3日後には死ぬの。しかし、あなたには、嫌な思いをさせてしまったから、今からでも、勇者としての適性を与えることができるわ」
僕は、不運なのだ、能力も低い。
生きていても仕方がない。
しかし、召喚されたなら、僕だって獣人やエルフの女の子でハーレムを形成したい。
僕はそう思って叫んだ。
「僕に、力をくれっ!遅れたんだから遅延損害分もくれ!慰謝料でもいい!」
「本来、あなたに与えられる力は勇者としての能力値、勇者の適正」
女神は淡々と答えた。
「それだけの補正じゃ、ヘタレの僕はこの世界で生きていける自信がない。だって、この世界の王族は僕が不良品だと分かると、即座に加虐を加えるような残酷な連中なんだ」
僕は、この世界で生きるのに恐怖を感じていた。
元の世界でもさすがにケツの穴に棍棒を突っ込まれるまでの暴行を受けたことはない。
しかし、この世界での暴行は序の口でも、ケツの穴に棍棒を突っ込まれるのだ。
自分の受けた被害を想起し、僕は身震いした。
「ならばあなたに、【能力】に加えて、【神の眼】の祝福を与えましょう。これは、対象の詳細な情報を取得できる神の眼です」
女神は優しくそう言った。
「【神の眼】?ありがとう、それなら僕も生きられる気がするよ」
僕は、【神の眼】という祝福を追加で貰えるということでとても喜んだ。
「祝福の使い方は、自然にわかるわ。それでは、元の場所に還すわね」
そうすると僕の視界は再び極光に包まれた。
僕は、牢の中で目を覚ました。
僕のケツの穴には棍棒が突き刺さったままだった。
僕をケツの筋肉である括約筋に力を込めた。
そうすると、ケツに刺さった棍棒がまるで弾丸のような勢いで射出された。
射出された棍棒は牢の石壁に突き刺さった。
さっきまでのケツの痛みも嘘のように消えている。
そして、適当にわめいて看守をおびき寄せた。
「出せっ、僕をここから出してくれっ」
「うるせえな、寝られねえじゃねえか。殴られ足りないようだなぁ」
看守が不用心に近づいてくると、僕は自分でも信じられない速さで動いて、看守の首を掴んだ。
そして、力任せに引っ張ると、看守の首の骨が外れてしまった。
僕は、大騒ぎにするのもまずいと思って、看守から牢の鍵を奪うと、牢の扉を開け、看守を牢の中に引き入れた。
そして、看守の装備を奪うと、それを装着した。
看守には、自分の服を着せて転がしておいた。
僕は、看守に成りすますと城から脱出しようと思った。
しかし、今の僕には力がある。
僕を不良品呼ばわりして、ケツの穴に棍棒を突っ込んだ兵士どもに仕返しをしようかとも考えた。
いや、まだ、僕はこの世界のことをよく知らない。
万が一、あの場にいた兵士の他に隠し兵器のような強力な兵士がいたら、次は、棍棒をケツの穴に突っ込まれるだけでは済まないかもしれない。
僕は、再度捕まり、棍棒をケツの穴に同時に2本突っ込まれることを恐れたのだ。